明星学園・第47話

「もしゃもしゃ頭の佐伯先生、副担任で英語の塚本先生」
「何それって、ゆみから聞いたの?」
祥恵は、お母さんに質問した。
「ゆみちゃんは、あなたと違って学校であったことを全部ちゃんと話してくれますからね」
「そうか、これからは、ゆみを通して全部お母さんにバレるのか」
祥恵は、お母さんに言った。
「あなたが、そんなクラスのリーダー格だったなんて知らなかったわ」

明星学園・第46話

「あーあ、いい湯だった。ゆみは?」
祥恵は、お風呂から上がってお母さんに聞いた。
「もう9時過ぎてるわよ」
「そうか、もう寝たか」
祥恵は、時計を確認した。ゆみは、まだ身体がそんなに強くないので、夜は9時には寝てしまい、朝は7時過ぎに起きていた。
「あなた、ゆみと同じクラスになったの」
お母さんは、祥恵に聞いた。

明星学園・第45話

「まあ、ゆみの方がすぐ有名人にはなるだろうけど」
「ゆみちゃんも、お姉さんの遺伝子持ってそうだものね」
ジョーのお母さんが笑顔で答えた。
「そういう意味じゃなくて、中学生になっても、お母さんにごはん食べさせてもらってる甘えん坊として、すぐに中等部中の有名人よ」
祥恵は、目の前でお母さんに食べさせてもらってるゆみの姿をみて言った。
「ああ、学校ではお母さん一緒でないだろうから1人で食べられるわよね」

明星学園・第44話

「へえ、祥恵がね」
祥恵は、普段からお母さんに家ではあまり学校であったことを話さないので、ファミレスでお昼ごはんしながら、ジョーのお母さんから聞いて驚いていたのだった。
「小等部では祥恵さんは有名人、ヒーローだったわよね」
「それほどでも」
祥恵は、ジョーのお母さんに言われて少し照れていた。
「まあ、ゆみの方がすぐ有名人にはなるだろうけど」
祥恵は、目の前でお母さんに食べさせてもらってるゆみの姿をみて言った。

明星学園・第43話

「あなたって、クラスのリーダーだったの?」
お母さんは、祥恵に聞いた。
「リーダーではないけど」
「1組のクラス中から頼りにされてるものね」
ジョーのお母さんは、祥恵に言った。
「そうかな」
「1組の皆や後輩からも慕われているお姉さんよね」
「へえ、祥恵がね」
お母さんは、ジョーのお母さんから話を聞いて驚いていた。

明星学園・第42話

「もしかして、ゆみちゃんって祥ちゃんの妹さん」
「はい、そうです」
祥恵は、ジョーのお母さんに答えた。
「あら、そうなの。祥ちゃんってこんな可愛い妹さんがいたの」
「可愛いかな?まあ、可愛いのは可愛いかな」
祥恵は、ゆみの方をチラ見しながら、ジョーのお母さんに返事した。
「1組の学級委員、祥ちゃんの妹さんだったのね」
「私、学級委員はしたことないんだけど」

明星学園・第41話

「百合子ちゃんとは、明日だって会えるんでしょう」
お母さんは、祥恵も一緒に車で帰って欲しそうだった。
「わかったよ」
祥恵は、後ろのドアを開けると、ゆみにもっと奥へ移動しろと命令してから乗り込んだ。
「ジョー君のお母さん」
お母さんは、助手席のおばさんを祥恵に紹介した。
「知ってるよ。おばさん、こんにちは」
「こんにちは」
祥恵は、ジョーのお母さんに挨拶した。

明星学園・第40話

「祥恵ー!」
お母さんは、こっちにやって来る祥恵の姿を見つけて、大声で叫んだ。
「どうしたの?」
祥恵は、初めは無視しようと思ったが、あまりに大声なので渋々、母親の側に来た。
「あなたも、これから帰るの?」
「まあ、そうだけど」
「じゃ、乗りなさいよ」
「なんでよ、百合子たちと帰る予定だったんだけど」

明星学園・第39話

「お母さんは、ゆみちゃんのお母さんと一緒に帰って、途中でお昼ごはんするけど」
ジョーのお母さんは、ジョーに伝えた。
「そうなんだ」
「あんたも一緒に乗って、ゆみちゃんとお昼にしたら?」
「それも良いんだけどさ、先に小汀たちと吉祥寺でお昼する約束しているんだけど」
「あら、そうなの」
「なので、軍資金を」
ジョーのお母さんは苦笑しつつ、ジョーにお金を渡した。

明星学園・第38話

「お母さん!」
ゆみは、車にいるお母さんの姿が見えると、車までいきなり走り出した。
「終わったの?」
「うん!」
ゆみは、お母さんに頷いた。
「ジョー君、ゆみのことありがとうね」
「いえいえ」
車の助手席には、ジョー君のお母さんが座っていた。
「ゆみは、後ろに乗りなさい」

明星学園・第37話

「お母さん?」
祥恵は、ゆみに聞いた。
「お母さんが車でゆみちゃんのこと待っててくれてるんだよな」
ジョーが、ゆみに代わって祥恵に説明した。
「あんたね、帰りもお母さんに送ってもらうつもりなの」
祥恵は、中学生になっても甘えん坊のゆみに呆れていた。
「明日から大人になるよな」
ゆみは、ジョーに頷いて、一緒に教室を出て駐車場のお母さんのところに向かった。

明星学園・第36話

「私は佐伯といいます」
教壇に立った先生は、1組の生徒たちに自己紹介した。
「私が、君たち1組の担任になります。こちらが副担任の、英語の塚本先生です」
佐伯先生は、自分の横に立っている女の先生のことも紹介した。
「今日はここまで。明日からは普通に授業が始まるからな」
佐伯先生は、生徒たちにそう伝えると、副担任と教室を後にした。
「ゆみちゃん、お母さんが待っているよ」
ホームルームが終わると、ジョーがゆみの席にやって来た。

明星学園・第35話

祥恵は、小等部から普通に進級しているため、教室後方の方で小等部からずっと一緒の友達と大きな声でお喋りをしていた。
「お姉ちゃんってあんな大きな声でお話しするんだ」
ゆみは、姉が大きな声で話しているのに驚いていた。
教室の前の入り口から天然パーマがモシャモシャの先生が入ってきた。先生が入って来ると、今までお喋りしていた生徒は話をやめて、自分の席に戻った。
ジョー君の天然パーマは、上部に丸くモシャモシャだったが、先生の天然パーマは、ペタッと垂れ下がったモシャモシャだった。

明星学園・第34話

「あんたの席はこっち」
祥恵は1組の教室に入ると、窓側の1番前の方の席に向かった。大概、席はあいうえお順なので、今井のイで1番前の席になることが多かった。
「あんたはこっち」
「お姉ちゃんの後ろ?」
「祥恵のサに、ゆみのユだからでしょう」
「そうか」
ゆみは、祥恵のすぐ後ろの席に腰掛けた。まだ友達がクラスに誰もいないゆみは、席に座って周りを見渡していた。

明星学園・第33話

「ほら、教室に行くよ」
祥恵は、ゆみに言った。
「お母さんにクラス聞き忘れちゃったの」
「あんたは、私と同じ1組よ」
「ゆみちゃんも、俺らと同じ1組なの?」
「そうなのよ」
祥恵は、ジョーに答えた。
「お兄さんと同じクラスで良かった」
「そうだね、仲良くしような」
ジョーとゆみは話していた。

明星学園・第32話

「え、ジョーが連れてきてくれたの?」
祥恵は、ジョーにお礼を言った。
「祥恵に妹がいたなんて知らなかったよ」
「そう、実は妹がいたのよ」
「もしかして、飛び級で妹と同級生になってしまったとか」
「そうなのよ、お恥ずかしい」
「恥ずかしくないよ、自慢の妹じゃん」
ジョーは、祥恵に言った。
「そう、甘えん坊でぜんぜん自慢の妹じゃないけどね」

明星学園・第31話

「お姉ちゃん!」
ゆみは、廊下の向こうからやって来る祥恵の姿を発見した。
「あんた、一体どこにいたのよ?」
祥恵は、ゆみのことを怒っていた。
「式の会場のどこにもいないから心配したじゃないの」
「お母さんと一緒にいた」
「今日から中学生でしょうが、何をやっているのよ」
祥恵は、ゆみの頭を小突いた。
「ゆみちゃんって祥恵の妹なの?」

明星学園・第30話

「階段が多いね」
ジョーは、背の低いゆみが小さい足で校舎の階段を上るのをみた。
「1番手前の教室が4組、1番奥が1組」
「そうなんだ、全部で4組までなの」
ゆみは、ジョーの説明を聞いていた。
「4組の誰かに聞いてみようか」
「うん」
ジョーが4組の教室を覗き込んでいると、
「ゆみ!」

明星学園・第29話

「教室の場所わからないんでしょう、一緒に行こう」
ジョーが差し出した手をもう1回ゆみは握った。
「お母さんのところに行って、私のクラス聞いてくる」
「いいよ、教室に行って他の誰かに聞こう」
ジョーは、ゆみに言った。
「どうして親切にしてくれるの?」
「だって、俺たち同級生だろう」
「うん」
ゆみは、嬉しそうにジョーの手を握りしめた。

明星学園・第28話

「ゆみちゃんも1組なの?」
ジョーは、歩きながらゆみに質問した。
「わからない、お母さんに聞いてないもん」
「小さいけど、中学生になったんだから自分でもわかっていなきゃ」
ジョーは、ゆみに言った。
「俺とゆみちゃんは同級生だろう」
ゆみは、ジョーに言われて慌ててジョーの手を離して、1人で先頭を歩き出した。
「え、どっち?」

明星学園・第27話

「ホームルーム始まってしまうから行こう」
ジョーは、ゆみに話しかけた。
「ほら、お兄さんと一緒に行ってきなさい」
「お母さん、帰ってしまうの?」
「お母さん、車の中で待っていてあげるから」
「ぜったい待っていてね」
ゆみは、お母さんの手を離して、優しそうなお兄さんの手を掴んだ。
「よし、行こう!」
ジョーは、ゆみと歩き出した。

明星学園・第26話

「あんたさ、ゆみちゃんと一緒に教室へ連れていってあげてよ」
おばさんは、息子のジョーに言った。
「ゆみちゃん、飛び級で進級してすごいのよ」
「飛び級?」
「勉強ができるから、学年飛びこえて中学生へ進級しちゃったのよ」
「へえー」
ジョーは、お母さんの後ろに隠れて小さくなっているゆみの姿を覗きこんだ。

明星学園・第25話

「あら、お嬢さんかと思ったわ」
お母さんは、髪がフワッとした少年の顔を覗き込んで驚いた。
「おジョーさんで正しいわよね」
おばさんは、自分の息子の頭を撫でながら、お母さんに答えた。
「名前がジョーだものね、斎藤ジョー」
「ジョー君っていうのね」
お母さんは、おばさんの息子、少年に挨拶した。
「今井といいます」

明星学園・第24話

「ジョー」
隣の席だったおばさんが、職員室の中へ入っていく生徒に声をかけた。
「あ、お母さん」
職員室のコピー機でコピーを取ろうとしていた生徒が、後ろから呼びかけられて振り向いた。髪がもしゃもしゃ、フワッと天然パーマに広がった少年だった。
「あんた、何組だったっけ」
少年は、1組と母親に返事した。

明星学園・第23話

お母さんも、隣の仲良くなったおばさんと席を立ち、体育館を後にした。
「あなたは、教室に行かないと」
お母さんが新入生たちとではなく、お母さんと一緒に体育館を後にしたゆみに言った。
「お母さんは?」
「お母さんは、もう帰るわよ」
「それじゃ、私も一緒に帰る」
「だめよ、それじゃ授業をサボることになるわよ」
お母さんは、ゆみに言った。

明星学園・第22話

「ほら、式が終わってしまったわよ」
お母さんは、ゆみに言った。結局、ゆみは式の間ずっと新入生の席ではなく、お母さんの横で式の進行をずっと聞いていたのだった。
「まずは、新入生から退席してください」
体育館に流れている放送で、前の席に座っていた新入生たちが体育館を後にした。この後、新入生たちは、教室でクラスミーティングがあるから、教室で待機するようにとアナウンスされていた。
新入生の後は、父兄席の両親たちが席を立った。

明星学園・第21話

「あら、中学1年生なの?優秀なのね」
おばさんは、お母さんからゆみが飛び級で進級したという話を聞いて、ゆみのことを褒めてくれた。
「だから、あなたの席は新入生、前の席なのよ」
お母さんは、再度ゆみに告げた。
「ちょっと怖いわよね、背の大きいお兄さんお姉さんばかりだものね」
新入生たちより背の低いゆみのことを優しくフォローしてくれた。
お母さんは、ゆみの頭を撫でた。

明星学園・第20話

「お姉さんが入学式なの?」
お母さんの隣に座っていたおばさんに、ゆみは質問された。
「お姉ちゃんもだけど、あなたも入学式よね」
お母さんの横でモジモジしていたゆみの代わりに、お母さんがおばさんに答えていた。
「あら、中学生なの?」
「そうよね」
お母さんは、隣のおばさんと仲良くなって、ゆみのことや祥恵のことをお喋りしていた。

明星学園・第19話

「あなた、前の席よ」
お母さんは、父兄席の後ろの方に空いている席を見つけ、そこへ腰掛けると、ゆみに言った。ゆみは、生徒席には行かずに、お母さんの横の空いている席に腰掛けた。
「あなたは、前の席だって」
お母さんは、ゆみに言ったが、ゆみは首を横に振って、お母さんの腕をしっかり掴んだまま、横に座り続けていた。
「あらあら、しょうがない子ね」

明星学園・第18話

「ほら、着いたわよ」
やっぱり、いつもお姉ちゃんと電車で通っているのと違い、車だと歩かずに学校までいけるので、通学が早くて楽だった。お母さんの朝は忙しいので、出発が遅くなってしまって、中等部の入学式はもう既に始まっていた。
「体育館でやっているみたいよ」
お母さんは、車を停めると、ゆみの手を引いて体育館の中へ入る。最前列で校長先生たちが話し、その前方に生徒たち、その後ろ側が父兄席だった。

明星学園・第17話

「あれ、お姉ちゃんは?」
「ゆみは、お母さんと一緒に行きましょう」
「お母さんと学校に行くの?」
ゆみは嬉しそうに、お母さんの小さな赤いベンツの助手席に腰掛けていた。
「ゆみは入学式にスカートはかないでいいの?」
「うん」
ゆみは、紺色の裾などに赤チェックの柄が入った可愛いオーバーオールを着ていた。

明星学園・第16話

「あんた、ゆみがまだ部屋にいるじゃないの」
「お母さんが連れてきてよ」
祥恵は、もう中学生なんだし母親が入学式について来なくても良いと言ったのだが、お母さんは、ゆみの晴れ姿を見に行くのだと言い張ったのだった。
「行ってきまーす!」
祥恵は一人で出かけてしまった。
「仕方ないわね、ゆみはお母さんと一緒に行くか」
どこか嬉しそうに、お母さんは呟いていた。

明星学園・第15話

武蔵野に在る明星学園は、小学校、中学校そして高等学校がぜんぶ揃った小中高一貫教育の学園である。中等部、高等部でいちいち1年生へ戻らずに7年、8年と続いていき10年、11年、12年と進級、卒業となっていく。
「今日から7年生だね」
祥恵は、リボンの付いた白いブラウスに制服風のチェックのプリーツスカートを着て、学校へ出かけるため玄関先で靴を履いていた。
「行ってきまーす」

明星学園・第14話

「彼女は、小学校で習う勉強はぜんぶ理解してしまっています」
進級会議の時、ゆみの担任の先生は他の教師たちに説明した。担任ではないが、ゆみに別の教科を教えたことのある先生も、確かに彼女の勉強の進捗は早くて小学校で習うことはもう改めて勉強する必要はないかもしれないと担任の先生に同調した。
「それでは、中等部への進級で宜しいですね」
そして、ゆみは1年から2年ではなく中等部1年つまり7年生への進級が決まった。

明星学園・第13話

「ゆみ、中学生の記念にお母さんと写真撮らない?」
「写真は良いけど、それは着ないよ」
ゆみは、お母さんが手に持っている赤いチェックのプリーツスカートを指差した。ニューヨークにいた頃に、お母さんがデパートで勝手に買ってきた唯一のゆみのスカートだった。
「中学生になっても、スカートはかないの?お姉ちゃんだってスカートはいているじゃないの、もうずっと大人になってもスカートはかないつもり?」
お母さんは、祥恵のはいているグリーンのデニムスカートを指差しながら聞いた。

明星学園・第12話

「祥恵、このスカート可愛くない」
お母さんは、学生服の広告チラシを見ながら、祥恵に声をかけた。
「うちの学校は、制服は無いんだけど」
「制服無くても良いじゃない、中学生なんだから入学式の時ぐらい制服っぽいの着ても」
お母さんが祥恵に答えた。
「ゆみだって中学生なんだから、ゆみに着せれば良いんじゃないの」
「あの子は、昔からスカートは、絶対にはかないのよ」
お母さんは、残念そうに呟いた。アメリカで育ったせいか、小さい頃からどんなに言っても、ゆみはスカートをはくのを嫌っていた。

明星学園・第11話

「ゆみさん、勉強はできるので飛び級になります」
1年が過ぎて、2年生へ進級するとき、母親は担任の先生からそう伝えられた。
「飛び級?なんだよ、それは?」
実家がニューヨークの母親は、アメリカでは飛び級など珍しくもなかったが、祖父の代からずっと東松原の歯科医院の父親には、飛び級なんて制度は聞いたこともなかった。明星学園は、日本に在りながらアメリカ的な自由教育が学校のポリシーなので、飛び級制度もどんどん取り入れていた。といっても、ゆみが初の飛び級生だった。

明星学園・第10話

「ゆみさん、大丈夫ですかね?」
クラスの子たちにイジメられているゆみのことを心配した担任の先生は、母親にも相談した。母親も、ゆみのことを気遣い、別のインターナショナルスクールにでも転校させるかと父親に相談したら、近所の公立小学校に通わせた方が良いんじゃないかと言う返答だった。
「別の学校に転校する?」
母親は、ゆみに聞いてみたが、ゆみは転校を嫌がった。クラスでは仲間はずれの一人ぼっちだったかもしれないが、大好きな姉と別々の学校になるのはぜったい嫌だった。

明星学園・第9話

「ハロー、ユミ。日本語ワカリマスカ」
男の子が笑いながら、ゆみへ外国人風に話しかけてみせて、クラスの皆が笑っていた。こいつ、日本人のくせに、日本語がわからないの。なんか日本語の発音も変だしな、クラスの子たちは、ゆみの話す日本語を笑うようになっていた。
「日本人じゃないんじゃないの。ゆみでなくユミーだ!アメリカン人のユミー!」
クラスの子たち皆から笑われ、おちょくられてイジメられるようになってしまっていた。

明星学園・第8話

教室にいる他の子たちだって、ゆみと同じ今日から1年生の初めて会った子たちばかりのはずなのに、もうクラスの子同士仲良くなって、いまテレビで流行っている番組の話などいろいろお喋りをしていた。それまでずっとニューヨークで暮らしていたゆみには、いま流行っている日本のテレビ番組なんか何も知らなかった。それより何よりも、ニューヨークでは、家にいたおじいちゃんやおばあちゃんとも殆どずっと英語で会話していて、日本語はたまにしか話していなかったので、皆の会話の内容がよくわからなかった。
「もっと、向こうでも日本語で話してればよかった」

明星学園・第7話

「私もお姉ちゃんと一緒のクラスでいいわ」
「一緒のクラスでいいわじゃないの、あんたは1年、私は6年生」
祥恵は、妹に説明した。
「嫌だ!お姉ちゃんと一緒がいい!」
「わがまま言わないの!早く自分の席に着きなさい!」
ゆみは、姉に言われて教室の一番手前奥にある今井と書かれた席に腰掛けた。きっと、お母さんだったらお母さんと同じ教室で勉強させてくれたことだろう。でも、姉は、ゆみの言うことをちっとも聞いてくれそうもなかった。

明星学園・第6話

ゆみは、姉に手を引かれながら歩いていた。ゆみたちの歩いていくのと同じ方向には、他にもたくさんの生徒たちが歩いていたが、祥恵と仲が良いクラスメートたちとは一緒になることはなかった。彼女たちは皆、井の頭公園駅でなく吉祥寺駅方面から通っていたのだ。
「ここが学校よ」
祥恵は、妹の手を引き、学校の門をくぐると1年生の教室に連れて行った。
「お姉ちゃんと一緒のクラスがいいな」

明星学園・第5話

「向こうに行ってみたい」
ゆみは、井の頭公園駅で降りると、手を引かれている姉に言った。井の頭公園駅の改札口を出ると、すぐ真横に公園に入るゲートがあった。ゲートをくぐると、大きな池があり、さらに奥には動物園もあった。
「遊びに来たんじゃないんだから、学校はこっちの道よ」
祥恵は、妹の手を引き、公園には入らずに学校方面への道を歩いていく。

明星学園・第4話

「お嬢さん、ここにお座りなさい」
親切なお姉さんが、ゆみのために座席を譲ってくれた。
祥恵は、座席を譲ってくれたお姉さんにお礼を言った。永福町の駅で急行電車の待ち合わせをしたため、車内はかなり空いたが、高井戸、富士見ヶ丘から立教女学院の生徒たちがたくさん乗ってきて、また車内は激混みになった。立教女学院の生徒たちは三鷹台の駅で降りたのだが、それでも吉祥寺駅までの通勤客で車内はまだ激混みだった。
「次、降りるからね」
祥恵は、鈍くさい妹に伝えた。

明星学園・第3話

「ここから電車に乗るの?」
ゆみは、姉に手を引かれながら、質問した。
「そうよ、東松原の駅から学校の近くの井の頭公園駅まで井の頭線で通うの」
祥恵は、妹に説明した。吉祥寺行きの各駅停車がやって来て、祥恵は妹の手を引いて乗りこむ。各駅停車だというのに車内は、ちょうど通勤時間で満員だった。
「つぶれちゃうよ」
「大丈夫だから、お姉ちゃんにちゃんと捕まってなさい」
祥恵は、妹の体を自分の腕で抱きかかえながら言った。

明星学園・第2話

「ゆみ、フラフラ歩いてんじゃないのよ」
祥恵は、妹の手を掴むと一緒に歩きながら、妹に注意した。
「この子、大丈夫かな」
ゆみは、短い足で道路をフラフラ歩いているし、自分よりも大きなバッグ抱えて揺れてるし、何よりも何をするにも動作が鈍くさい。
「通学路を覚えるまでどころか、ずっと1人でなんて通学できそうもないんだけど」
祥恵は、妹の手を引きながら考えていた。

明星学園・第1話

「お姉ちゃん、ちょっと待ってよ」
ゆみは、玄関先で急いで靴を履きながら、前を行く姉に声をかけた。
「ゆみ、道がわからない間だけだからね」
祥恵は妹に返事をした。
今日は、ニューヨークから日本に帰国してきて、初めて姉と同じ武蔵野の学校に通う日だった。姉は、最初の間のまだ通学路がよくわからない間だけ妹と一緒に通って、その後はゆみとは別々に学校へ通うつもりでいたのだった。