NY恋物語・第65話

エレベーターが14階に停まると、良明は降りて、右側の廊下を進み始めた。ゆみも、慌てて降りると、良明の後を追っかけて行く。
「どこに行くの?こっちだよ」
ヒデキは、ゆみたちに声をかけると、反対の左側の廊下を進み始めた。
「あっちだってよ」
ゆみは、良明の手を握ると、ヒデキたちの方向へ歩き出した。
「ここだよ」
ヒデキは、突き当りの部屋のドアの前で立ち止まった。

NY恋物語・第64話

エレベーターは4階に停まって、野球のバットを持ったヒデキたちが乗ってきた。
「ヒデキ君」
「え、何してるの?」
「どこに行くかわからないみたい」
ゆみは、ヒデキに言った。
「14階だよ」
ヒデキは、14階のボタンを押した。
エレベーターは、14階へ向かって上がり始めた。

NY恋物語・第63話

良明とゆみがエレベーターに乗ると、エレベーターの扉が閉じた。
「どこに行くの?」
ゆみは、良明に聞いた。良明は、エレベーターのボタンを押していないため、エレベーターはずっと18階に停止していた。
「どうするの?」
ゆみは、良明に聞いた。エレベーターは停止したままだったが、急に降り始めた。誰かが下の階からエレベーターを呼んだようだった。

NY恋物語・第62話

ゆみも、必死で追いかけて行くと、18階の廊下へ出た。
「あんまり速く走らないで。私、迷子になちゃう」
ゆみは、泣きそうな顔で良明に頼んだ。良明は、廊下を進むとエレベーターの前へ移動した。
「どこに行くの?」
ゆみは、良明に聞いた。エレベーターが来ると、良明はまた乗りこんだ。
「また乗るの?」
ゆみも、エレベーターに乗った。

NY恋物語・第61話

良明が左側の廊下を進み始めた。
「そっち?」
ゆみは、良明の後を追って行く。
「ここの家なの?」
ゆみは、突き当りのドアで立ち止まっている良明に聞いた。良明は、急にUターンすると、廊下を走り始めて、階段室の中へ入った。
「え、そっち?」
ゆみは、必死で良明について行く。良明は、階段室の階段を下って行くと、18階の廊下へ出た。

NY恋物語・第60話

エレベーターの扉が閉じた。
「どうする?」
ゆみは、良明の方を見た。良明は、19階のボタンを押した。
「19階に住んでいるの?」
ゆみは、良明に聞いた。
「ね、到着したよ」
ゆみは、良明に言った。エレベーターは19階で停止していた。良明がエレベーターの扉が閉じる直前に降りた。ゆみも、慌ててエレベーターを降りた。

NY恋物語・第59話

エレベーターが4階に到着した。
「それじゃ、頑張って良明のお母さんに言うんだよ」
ヒデキは、壊れたバレッタをゆみの手の中に握らせた。
「え、ヒデキ君たちは一緒に行かないの?」
ゆみは、ヒデキに聞いた。
「俺らは、野球するから行かないよ」
「ゆみちゃんは、絶対に行かないとだめだよ」
ヒデキが、ゆみに念押しして、降りていった。
「どうしよう?」

NY恋物語・第58話

「ゆみちゃんってドア開けてもらえちゃうんだ」
「さすが、長く住んでいるだけあるな」
ヒデキと椎名が話していた。
「良明君の家に遊びに行ってみてもいい?」
ゆみは、良明と話していた。良明は首を横に振った。
「そうよね、だめよね」
ゆみは、少し残念そうに答えた。
「エレベーター来たよ」
ヒデキが、ゆみたちを呼んだ。
ゆみは、良明の手を引いて、乗り込んだ。

NY恋物語・第57話

「椎名君の家ってこっちだった?」
3人は、同じアパートメントらしいが、椎名の家は反対方向だったはずだ。
「今日はヒデキの家に1回寄ってから、ヘンリーハドソンパークで野球する予定なんだ」
椎名は、ゆみに言った。
「ハロー」
ゆみは、自分家のアパートメントのエントランスに入ると、エントランスに立っていた黒人ドアマンが、ゆみの姿を見つけて、ドアを開けてくれた。

NY恋物語・第56話

「とりあえず行こう」
ヒデキは、ゆみの壊れたバレッタを片手に歩き出した。他の3人もヒデキの後について行く。
「良明のお母さんに言いつけような」
ヒデキは、ゆみにそう命じていたが、ゆみ自身は、そんなことはしたくないと思っていた。でも、みな同じ会社に勤める保護者がいて、同じアパートメントに住んでいると聞いて、少しだけ良明君の家に遊びに行ってみたいという気持ちにはなっていた。
「一緒のアパートメントに住んでいるの?」

NY恋物語・第55話

「良明のお母さんに言いに行きな」
「私、良明君の家知らないし」
ゆみは、ヒデキに言った。
「良明の家って、ゆみちゃんと同じアパートメントだよ」
「え、そうなの?」
ゆみは、ヒデキに聞き返した。
「そうだよ。俺らみな同じアパートメントだよ」
ヒデキのお父さんも、良明のお父さんも、ゆみの兄も同じ商事会社に勤めていた。

NY恋物語・第54話

「良明が壊したよな」
ヒデキと椎名が言った。
ゆみは、ヒデキたちと同じ5年の同級生ではあるが、飛び級により本来の学年よりも3年上に進級していた。3歳年下なので2人に決めつけられてしまうと反論しづらくなってしまう。
「これは、良明のお母さんに言って、弁償してもらった方がいい」
「え、そんなことはしなくても」
「いや、ちゃんと言わないとダメだ」

NY恋物語・第53話

「良明のやつが壊したな」
ヒデキが、ゆみに言った。
「別に、良明君が壊したわけじゃ」
「いや、良明が明らかに壊した」
ヒデキが決めつけていた。
「良明が壊したよな」
「まあ、良明が壊したといえば壊したかな」
椎名が、ヒデキに言った。

NY恋物語・第52話

良明の手が、ゆみの髪に当た理、髪に付けていた猫のバレッタが階段の下へと落ちていった。
「あ、バレッタが落ちちゃった」
ヒデキが走って、階段の下へ行くと、ゆみのバレッタを拾い上げた。
「壊れちゃっているよ」
ヒデキは、バレッタをゆみに見せた。ゆみのバレッタは、半分に割れてしまっていて、髪どめの部分が本体から外れてしまっていた。
「これ、お兄ちゃんが買ってくれたばかりだったのに」

NY恋物語・第51話

「日本人だし、日本語わかるし、手を離せよ」
ヒデキは、ゆみの手を良明から離すように言った。
「別に日本人でも仲良しだし、クラスメートだから手をつないでも良いでしょう」
「誤解するから、手を離せよ」
ヒデキは、ゆみの手を良明から離させようとした。
「え、ちょっと危ないったら」
ゆみと良明の手が離れた瞬間、良明の手が、ゆみの髪に触れた。

NY恋物語・第50話

「私、中国語が話せないのよ」
「中国語?」
ヒデキは、ゆみから良明が中国人だと聞いて笑い出した。
「良明は日本人だよ」
「ヨシュワキー君って日本人なの?」
「ヨシュワキーじゃないよ、良明、岡島良明」
ヒデキは、良明の名前をゆみに伝えた。
「名前が日本人じゃないの」
ゆみは、ヒデキから聞いて驚いていた。

NY恋物語・第49話

ゆみとヨシュワキーが廊下の階段を上がっていると、後ろから少年が2人、大声でお喋りしながら階段を駆け上がって、追い越していった。
「あれ、ゆみちゃん!」
少年たちは、階段の上から振り向いて、ゆみに声をかけた。ヒデキと椎名の2人だった。
「え、なんで、ゆみちゃんは良明と手をつないでいるの?」
ゆみに一方的に好意をよせているヒデキが聞いた。
「私たちクラスメートだもの」
ゆみは、良明とつないでいる手を仲良く振りながら答えた。
「なんで?」

NY恋物語・第48話

「ミスタールビンのところに行こう」
ゆみは、ヨシュワキーの手を引いて、ミスタールビンの教室に移動した。
「今日は、ミスタールビンも風邪でお休み」
ミスタールビンのアシスタント先生が、ゆみに伝えた。
「どうする、ヨシュワキー君も帰ろうか」
ゆみは、ヨシュワキーに言った。
「行くよ!」
ゆみは、ヨシュワキーの手を引いて、階段を上がっていった。

NY恋物語・第47話

「今日の5年生の午後の授業はありません、お休みになりました」
アスター先生が、皆のテーブルを周って、クラスの皆に伝えていた。
「ミスタールビンのクラスはあると思うから、ゆみはヨシュワキーを連れて行ったら、その後は家に帰っていいわ」
アスター先生は、ゆみに言った。
「それじゃ、私たちは先に帰ろうかな」
チェッカーをしている2人に伝えた。

NY恋物語・第46話

ランチタイムだった。
相変わらず、ヨシュワキーは、お弁当を持って来ていないのか、ランチタイムでも何も食べずに、ゆみの横に腰掛けているだけだった。
「マイケル、チェッカーやろうか」
食事を食べ終わって、シャロルはマイケルとボードゲームのチェッカーをやり始めていた。ゆみは、食事の後、自分の髪につけている猫のバレッタをいじりながら2人が遊んでいるチェッカーを眺めていた。

NY恋物語・第45話

そして、それからは、ゆみの言葉がヨシュワキーに伝わらなくても、ゆみがヨシュワキーの手を引いて、手話のように指図していても、クラスの誰も笑わなくなった。
「でも、変よね」
ゆみは、ヨシュワキーがチャイニーズとわかった後も、月曜と木曜の午後は、いつもミスタールビンのところに彼を連れていっていたのであった。ミスタールビンは、日本語で英語を教える先生なんだけどな。

NY恋物語・第44話

「ああ、チャイニーズね」
シャロルは、隆の話をゆみから聞いて、納得していた。
「アスター先生、ヨシュワキーはチャイニーズなんです」
マイケルも、アスター先生にジャパニーズでなくチャイニーズであることを説明してくれた。アスター先生は、チャイニーズだったかしらと少し疑問に感じたが、彼女自身もジャパニーズとチャイニーズはよく似ていて違いがよくわからないので、マイケルに返答出来ずじまいだった。
「チャイニーズでも良いじゃない、ヨシュワキーと仲良くしてあげなさい」

NY恋物語・第43話

「そうか!中国人だったのね!」
ゆみは、隆に聞いて、なるほどと思った。
「確かに、おまえの日本語は下手だけど、日本人なら通じないってことはないよ」
「そうか、そうよね!そういうことだったのね」
ゆみは、隆の見解に納得した。
「明日、シャロルにも話してみる」
ゆみは、マイケルに自分の日本語が下手と言われたのは悔しかった。
「彼は、チャイニーズだったのよ」

NY恋物語・第42話

「ヨシュワキー君っていうの、私の隣の席になったんだけど」
ゆみは、隆に学校であったことを話していた。
「私、もっとお兄ちゃんと日本語で話して、日本語をちゃんと勉強しておけばよかった」
「ぜんぜん通じなかったのか」
隆は、ゆみの日本語がぜんぜん通じなかったことを聞いて、思わず吹き出してしまっていた。
「でも、ヨシュワキーって名前からして、日本人ではなく中国人なのかもしれないな」

NY恋物語・第41話

「お兄ちゃん、うちのクラスに日本人の新入生が来たのよ」
ゆみは、夕食の時、隆に話していた。
「おう、だから、お兄ちゃんが言っただろう」
「え、新入生って女の子じゃないよ。男の子だよ」
「そうなのか」
「ヨシュワキー君って男の子なの」
ゆみは、隆に伝えた。

NY恋物語・第40話

「ゆみちゃん!」
ミスタールビンに良明をお願いして、クラスに戻ろうと歩き出したゆみは、教室の後ろの方から呼び止められた。
「あら、こんにちは」
ゆみは、ヒデキに挨拶した。ヒデキも、ミスタールビンの英語授業を受けていた。
「どうしたの?ゆみちゃんもミスタールビンの授業受けるの?」
「受けないわよ。うちのクラスの子と来ただけ」

NY恋物語・第39話

「ゆみ、久しぶりじゃないか」
ミスタールビンは、ゆみに日本語で言った。ミスタールビンは、大学で日本語を勉強していて、日本人と同じぐらい上手に、きれいな日本語を話せる先生だった。
「うちのクラスのヨシュワキー君です」
ゆみは、ミスタールビンに紹介した。ここPS24小学校では、日本から来たばかりの日本人生徒たちを集めて、ミスタールビンが英語の授業を行なっていた。

NY恋物語・第38話

「私たち、先に行っているね」
シャロルは、ゆみに言った。ゆみたちの午後の授業は音楽だった。ゆみは、良明をミスタールビンのところに連れて行かなければならないので、シャロルは、先に音楽室に向かった。
「これからミスタールビンのところに行くの」
ゆみは、良明に説明した。
「ミスタールビンは、私よりも日本語がすごく上手だから、話しやすいと思うよ」
ゆみは、良明に伝えた。

NY恋物語・第37話

「私のサンドウィッチ、半分食べる?」
ゆみは、自分の分のサンドウィッチを半分、良明に差し出したが、良明は、結局それも全く何も食べてくれなかった。
「ゆみ!」
アスター先生が、ゆみたちの座っているテーブルにやって来た。
「午後からの授業なんだけど、午後は、ヨシュワキーはミスタールビンの授業なので、ミスタールビンのところに連れて行ってあげてちょうだい」

NY恋物語・第36話

食堂には、机と椅子が用意されていて、生徒たちは、そこへ腰掛けてお昼ごはんを食べる。お昼ごはんは、給食ではなくて、生徒たちそれぞれが持参して来たお弁当を食べていた。お弁当は、紙袋にサンドウィッチと缶ジュースを入れている子が殆どだった。
「ごはんだよ」
ゆみも、自分の紙袋を開くと、中から持って来たサンドウィッチと小さな缶ジュースを出して食べは味めた。良明は、横の席に座ったままだ。
「ごはん持って来ていないの?」

NY恋物語・第35話

ランチタイムは、学校の地下にある食堂へ行って、そこで食事になるのだった。
「食堂に行くのよ」
どうせ、ゆみが話す日本語は良明には通じないのだ。いつの間にか、ゆみは、日本語で説明するというよりも、良明の手を引っ張って、移動させるようになっていた。
「マイケルじゃないけど、ゆみのそれって通訳じゃないね」
シャロルも、ゆみの通訳を笑っていた。

NY恋物語・第34話

「次はランチタイムです、教室の前に並んでください」
アスター先生は、皆に言った。午前の授業中、ずっとゆみは自分のルーズリーフを広げて、良明にも見せて、一生懸命、先生の話している授業の内容を説明していたのだったが、ゆみの日本語が通じないのか、良明はずっと黙ったままだった。
「ランチタイムよ。前に並ぼう」
ゆみは、良明の手を引っ張って、椅子から立たせた。
「ゆみ、その通訳ならば、日本語話せないけど、俺でも出来ると思う」
マイケルが笑いながら、ゆみに言った。

NY恋物語・第33話

「ね、たぶん日本語の発音がおかしいのかもよ」
シャロルは、ゆみに言った。以前、ヒデキ君たち日本人とゆみが会話していた時に、ゆみの日本語の発音がおかしくて、ヒデキたち日本人に、ゆみの日本語が通じなかったことがあったことを思い出していた。
「そうかもしれない」
ゆみが、困ったようにシャロルの顔を見た。
「アスター先生!ゆみの日本語おかしくて全然通訳になっていません」
マイケルが手を上げて笑いながら、アスター先生に伝えた。
「ゆみも、あまり日本語得意じゃないから困ったわね」
アスター先生は、マイケルに苦笑した。

NY恋物語・第32話

「ヨシュワキー君、ここがあなたの席よ」
ゆみは、手で引っ張って椅子に座らせると、良明に言った。
「ここ、あなたの席」
ゆみが話しかけても、良明は黙ったままだった。
「ゆみ、ゆみの日本語通じていないんじゃないの」
親友のシャロルが、向かいの席からゆみに言った。
「私、ゆみ。ヨシュワキー君、こんにちは」
やはり、良明は何も言わず黙ったままだった。

NY恋物語・第31話

「えーと、なんて読むのかな?ヨシュワキー、ゆみの隣があなたの席」
アスター先生は、良明に伝えた。
「英語じゃ通じないか。ゆみ、日本語で説明してあげて」
アスター先生は、ゆみに命じた。
「こんにちは、あそこがあなたの席」
ゆみは、アスター先生に言われて、良明を自分の隣の席に案内した。
「こっちよ」

NY恋物語・第30話

「はーい。皆さん、授業を始めますよ」
アスター先生は、教室の入口に立つと、中にいる生徒たちに声をかけた。
「今日は、新しく仲間になる日本から来た新入生を紹介します」
アスター先生は、良明のことをクラスの生徒たちに紹介した。
「日本人同士、ゆみの隣の席にしましょうか」
アスター先生は、ゆみの隣の席のマイケルに言った。
「マイケルは、向かい側のシャロルの横に席を変わってちょうだい」

NY恋物語・第29話

アスター先生は、良明と一緒に教室へ移動していた。
「こんにちは、アスターといいます」
アスター先生は、良明に自己紹介したが、良明には通じなかったようだった。
「まだ日本から来たばかりで、英語じゃわからないか」
良明は、黙ったまま、アスター先生の後について歩いていた。
「うちのクラスには、日本人の女の子がいるのよ。席は、その子の隣にする予定だから、いろいろ学校のことは、彼女に聞いてね」
アスター先生は、英語では通じないとは思ったが、一応そんなことを歩きながら、良明に伝えていた。

NY恋物語・第28話

由香と末っ子の萌香は、担任の先生に中山先生も一緒に、教室へ向かうことになった。
「お母さんも、ご一緒に教室を見に行きますか?」
「お願いします」
岡島の奥さんは、中山先生と一緒に2人の教室へついて行くことになった。
「隆くんは、もうここまででいいわよ」
「いいんですか?」
「隆くんは、会社だってあるでしょう」
中山先生は、隆のことを解放してくれた。

NY恋物語・第27話

「うちのクラスに入るのは彼かな」
アスター先生は、中山先生に確認すると、良明のことを中山先生から引き継いだ。
「私も、ご一緒にクラスまで行きますか?」
「いらないわ。大丈夫よね」
アスター先生は、良明の顔を覗き込むと、良明を連れてクラスへ行ってしまった。
「こんにちは、行きましょうか」
ミラー先生は、美香にいうと、一緒に行ってしまった。

NY恋物語・第26話

「あ、隆くん」
中山先生は、この学校で学校事務の仕事している日本人だった。
「先生、今日から岡島さんのところの子が通うんですけど」
「ああ、そうだったわね。聞いているわ」
中山先生は、奥にいるミラー先生に声をかけて呼んだ。その手前にいたアスター先生にも声をかけた。
「あ、今日からの新入生よね。承りました」
アスター先生は、中山先生に返事した。

NY恋物語・第25話

隆は、学校に着くと、かつて知ったる学校なので、入口から中に入るとすぐ手前にある職員室に入って、中山先生の姿を探す。
「お、タカシ!元気ですか?」
「ハロー、ゆみがお世話になっています」
隆は、知ってる先生に出会って、挨拶をしていた。妹のゆみが通っている学校だし、ゆみは、この学校では優等生で有名なので、出会う先生、出会う先生に声をかけられ大変だった。
「あ、中山先生!」

NY恋物語・第24話

「それじゃ、行きましょうか」
隆の愛車、オールズモービルの助手席には、岡島さんの奥さんが座っていた。後部座席には、岡島さんの4人の子供たちが座っていた。
「学校って車で通うの?」
「歩いていけるから大丈夫だよ。今日だけは、俺が皆を学校まで送ったら、そのままマンハッタンの会社に出勤しなければならないから車で行くけど」
隆は、美香に伝えた。
「ゆっくりめに走るから、学校までの道を覚えておいてよ」

NY恋物語・第23話

「お兄ちゃんも、うちの学校へ一緒にくるの?」
「そうだな。10時ぐらいに行くけどな」
隆は、ゆみに答えた。
「10時?それじゃ、私は遅刻してしまうんだけど」
「ゆみは、時間になったら1人で行けばいいだろう」
「一緒に行けないの?」
「遅刻しちゃうだろう」
隆に言われて、ゆみは1人で学校へ出かけた。
「なんだ、つまらない」
「行ってらしゃい」

NY恋物語・第22話

月曜日の朝、朝食を食べ終わった後、隆はソファに座って、のんびりとテレビの朝のニュース番組を見ていた。ゆみは、朝食の後片付けをしながら、不思議に思っていた。
「片付け終わったのか」
「うん」
ゆみは、隆に答えた。
「お兄ちゃん、会社に行かないの?」
「今日は、岡島さんたちを学校へ案内してから、会社に出社するからゆっくりなんだ」
隆は、ゆみに説明した。

NY恋物語・第21話

「ゆみと同じ学校に通うんだぞ」
「そう」
「ゆみと同じクラスになるかもしれないぞ。ゆみも日本人の友達がほしいって言っていただろう」
「ならないよ、いつも日本人はロールパン先生のクラスだもの」
「わからないぞ、アスター先生のクラスかもしれないぞ」
「そうかな」
ゆみは、隆の言葉にもあまり期待していなかった。
「ゆみと一緒のクラスになるといいな」

NY恋物語・第20話

「岡島さんの家族は5年生の男の子と妹が3人いるんだ」
「そうなのね」
ゆみは、あまり興味なさそうに答えた。
「その妹のうち、1番上のお姉さんが、ゆみと同い年の3年生なんだ」
「私と同い年なの」
「そう」
隆は、ゆみに答えた。
「そして、彼女たちはPS24に通うんだぞ」

NY恋物語・第19話

「今日はさ、岡島さんのお迎えしてきたんだ」
「誰?私の知らない人」
ゆみは答えた。
「知らなくはないんだぞ。ゆみだって、小さい時には岡島さんにいっぱい抱っこしてもらって、俺がうまく食事させられない時、代わりにごはん食べさせてくれたんだぞ」
隆に言われても、ゆみは全然覚えていなかった。

NY恋物語・第18話

「ゆみの肉じゃが美味しいな」
隆は、夕食を食べながら、ゆみに話しかけた。
「良かった」
「おまえは会った事ないのに、お母さんの味と同じ味するんだよ」
隆は、妹の顔を覗きこみながら言った。
「最近、少しアメリカンっぽいけど、顔もお母さんにますます似てきた」
仕事から帰ってくると、姿だけは家に母親がいるみたいなのだ。

NY恋物語・第17話

「ただいま」
隆は、家に帰ると、待っている妹に声をかけた。
「お帰りなさい」
「お、今日は肉じゃがなのか?」
隆は、キッチンの鍋の中を覗き込みながら、妹に言った。
「うん、おばあちゃんが日本から送ってくれたじゃがいもで」
髪色も少し茶っぽく日本人離れしたアメリカンな感じの少女が、少したどたどしい発音の日本語で、隆に返事した。髪は染めているわけではない、こっちの生活が長く環境がそうしてしまっているのだった。

NY恋物語・第16話

「それでは、後はごゆっくり」
隆は、岡島さんの家族に挨拶した。
「帰ってしまうの?」
「うん、妹が家で待っているからね」
「そうか」
「ちなみに、俺も、このアパートメントの7階に住んでいるから」
隆が言った。
「何か困ったことあったら、すぐ呼んでください」

NY恋物語・第15話

「さあ、どうぞ」
隆は、岡島さんから預かっていた家の鍵でドアを開けると、岡島さんの家族を部屋に招き入れた。
「うわ、広い家!」
リビングやダイニングと順番に確認していく。
「ここが君たち女性陣の部屋かな、そっちが良明くんの部屋か」
隆が案内した。車から持ってきた荷物をそれぞれの部屋に入れた。
「お父さん、脱いだ服がそのまま、仕方ないね」

NY恋物語・第14話

「ほら、到着したよ」
隆は、車をアパートメントの駐車場に入れながら、言った。隆たちのアパートメントは、マンハッタン郊外のリバーデールという町に在った。
「ここが、私たちの新しい家?」
「そう、このアパートメントの14階の部屋が君たちの新しい家」
「そうなんですね」
「君たちのお父さんは、もうここに住んでいるよ」
「お父さん、先に住んでいたんだ」

NY恋物語・第13話

「え、それじゃ、ゆみちゃんってお父さんお母さんいないの」
「いないよ、俺だけ」
隆は、運転しながら美香に答えた。
「ごはんとかは、隆さんが作ってあげているの?」
「昔は作っていたけど、最近は、料理はゆみが作っている」
「そうなの」
「俺が会社で仕事して、ゆみが料理とかしている」
「すごい!」
美香は、隆の話を聞いて驚いていた。

NY恋物語・第12話

しかし、それまで進学する予定で、就職活動も一切していなかった、高校を卒業したばかりの隆には、そう簡単に就職先など見つかるはずもなかった。
「どうだろう、うちの総務部で働いてみないか」
そんな時に、声をかけてくれたのが父親と同じ商事会社のニューヨーク支店で働く岡島さんだった。当時、父親はニューヨーク支店の支店長を務めていた。そして、岡島さんがうまく話をつけてくれて、支店の総務部に配属してもらえたのだった。
「ありがとうございます」

NY恋物語・第11話

妹は、少し前に未熟児室から出てきたばかりの子だった。日本行きの長時間の飛行機に搭乗できるだけの体力も持ち合わせていず、帰国することはできなかった。
「アメリカは福祉がしっかりしているの」
日本の祖父母や親族は、隆に妹はアメリカの施設に預けて帰国しろと命じた。しかし、隆には、今や両親を失って、家族はまだ小さい妹1人しか残されていなかった。
「俺、進学はしない!こっちで仕事を見つけて妹を育てる」
隆は、祖父母や親族たちに自分の決意を伝えた。

NY恋物語・第10話

3月、ジャパニーズスクールに通う隆にとっては、高校卒業間近のことだった。高校を卒業したら、隆1人で帰国して、日本の大学への入学が決まっていた。
「隆は日本へ帰ってきなさい」
日本の祖父母や親族は、1人残された隆に提案していた。
「日本に帰国するなら妹も連れて行く」
隆は、祖父母や親族たちに伝えていた。

NY恋物語・第9話

退院の朝、病院のエントランスロビーに飛び込んできた大型トラックに巻き込まれて、隆たちの両親は亡くなってしまった。
「え、お父さん!お母さん!」
事故の時、たまたま妹を抱きかかえてエントランスのソファに腰掛けていた隆は、妹ともども事故には巻き込まれずに助かったのだった。
病院の職員たちが担架を抱えて、すぐに飛び出して救助してくれたのだったが、父と母は即死だった。
「うそでしょう、これからどうしたら良いんだよ」
隆は、幼い妹を抱えて呆然としていた。

NY恋物語・第8話

十年前、隆の母親は出産のため、ニュージャージー州の病院にいた。18歳、高校卒業間近の隆の歳が離れた妹が生まれようとしていたのだった。
「お母さんは大丈夫よ、大丈夫だから」
大学時代からの親友だった岡島さんが付き添ってくれていた。
少し難産ではあったが、妹のゆみは無事誕生した。しかし、未熟児で生まれた妹は、しばらく未熟児室から出ることはできなかった。それでも、ようやく未熟児室から出て、父親が迎えに来て、母子ともに退院となった。

NY恋物語・第7話

「良明は、日本では野球していたのよ」
「へえ、こちらにいる日本人の子同士でも、よく野球してますよ」
隆は、岡島の奥さんと話していた。
「本当に懐かしいわ」
岡島の奥さんは、助手席から運転している隆を見て話しかけた。
「あの当時は、本当にお世話になりました」
「ううん、元気そうで何よりだわ」
岡島の奥さんは、隆と話していた。

NY恋物語・第6話

隆は、駐車場の車に戻ると、岡島さんたちの荷物をトランクに入れた。
「良明も手伝いなさいよ」
「はい」
岡島さんの息子が、スーツケースを持ち上げてトランクに入れた。
「お、力持ちだね」
「いいえ」
「体つきも大きくて、スポーツとか得意そうだね」
隆は、良明のがっしりした肩を触りながら話しかけた。