今まで私って千葉県の公共マリーナに置いていたじゃない。
そうだったわね。
公共マリーナって千葉県だけじゃなくて横浜にもあるのよ。
うん、知っている。
横浜の方がお姉ちゃんのヨットにも近いし、貿易会社に勤務していた頃には毎日車で通勤していた場所だし良いなとは思っていたの。
そうだったんだ。
でも、横浜は人気みたいで場所の空きが無かったの。
絶対そうだろうね。
でも、横浜の公共マリーナの場所が空いたの!
そうだったんだ、空き待ちか何かしていたの?
うん。それで千葉から横浜へ移動することになったの。
いよいよ、ゆみも私のヨットの近くに引っ越して来るんだ。
うん。
横浜へお帰り!
のはずだったんだけど… 横浜の公共マリーナって八景島の少し先のところにあるんだけど。
そこまで行かずに横浜ベイサイドマリーナまでのクルーズになってしまったの。
どうして?
船橋のマリーナでたまに一緒になると、よく話していたおじさんがいるんだけど。
ええ。
そのおじさんのヨットへ遊びに来ていた友達が私のカタリナ250を気に入ってくれて、横浜に住んでいる方で横浜ベイサイドマリーナで乗りたいから50万で売ってくれないかって相談されたの。
それで売ることにしたの?
ううん、売るつもりなかったから愛想笑いで頷いていたの。
そうなんだ。
っていうか、初めは30万って言っていたんだけど私が頷いているだけだからなのか、50万で売ってよって交渉してきたの。
それで元々5万で買った船だし50万ならば良いよって返事したの?
していないよ!向こうに持って行ったら向こうのマリーナで私が乗ろうと思っているんだからって断ったんだよ。
断ったんだ。
そしたら50万出すからって、この年式の船にこの値段を上乗せしてあげるのは結構奮発して上げている方だと思うよって言われて、一応そうですねとは苦笑してあげたんだけど。
それじゃ、それで良いよねってなんか買われちゃう感じに進んでしまって。
あんた、ちゃんと断れなかったんでしょう。
そんな事ないよ!向こうで私が乗ろうと思っている事もはっきり伝えているし、向こうに行ったらお姉ちゃんのヨットとも一緒に走るんだってことも伝えたのよ。
そうですねとか苦笑してしまったのがよくなかったのかもね。
だって、おじさんとはマリーナで会う度によく話していた人だし、そのお友達だしあんまりにもはっきり言ってしまったら失礼になってしまわない?
そういう時は、はっきり売りませんって言わないとだめよ。
言えないよ。
言わなかったから売りたくないのに売ることになってしまったのでしょう。最終的に自分が損しちゃうんだから知人とか関係なくはっきり嫌な時は嫌って言うの、わかった?
はい!で、今回はどうしたら良い?
もう仕方ないわよ、うまく人付き合いできなかったゆみが悪いんだから。
じゃ、売るのはしょうがないですが、最後に船橋から横浜ベイサイドマリーナまでのヨットでのクルージングは私にさせてもらえないですかとは伝えられたよ。
まあ、良いんじゃないの。
うん。
それじゃ、船橋からベイサイドまでの回航だけはさせてもらえるように交渉できたのだから、ゆみも少しは大人になれたって事で良かったんじゃないの。
うん!
次からは、そういう話があった時には頷いているだけじゃなく気をつけるのよ。
それで、せっかく横浜の公共マリーナに船を置けることになったのに、肝心のヨットが無くなってしまったじゃない。
そうね。
でも50万では売れたし、前のヨットでの85万もあるし、お母さんの銀行口座には135万は残っているはずじゃない。
それはそうね。
135万で買えるヨットを探したの。
うん。
これを機会にもう少しお台所も、寝室もトイレも付いたキャビンの大きい中古ヨットにしようかなとも思いながら探しんだけど。
うん。
そうして見つけたのがこれだったの。

カタリナ250と同じアメリカ製のハンター265ってヨットだったんだけど。
ハンターか。
お姉ちゃん、知っているの?
これが製造されていた頃のアメリカズカップでも流行っていたウイングキールって羽根のついたキールを持っているヨットなのよね。
それは知らない。
でも、デッキのコクピットには広いビミニトップが付いていて夏の暑い時期でも日よけになるし、お台所も寝室も、トイレも扉付きで付いていて、お姉ちゃんと世界巡航したヨットほどではないけど、それなりに暮らしやすいヨットだったよ。
またキャビンの話。
メインセイルはスタックパックが付いていて、ジブセイルはジブファーラーで、マストはフラクショナルリグでセイルを上げるとよく走ってくれるヨットでもあったよ。
あとあと、エンジンもヤンマーの1GMが付いていて操船しやすかったよ。
そうね、お姉ちゃんもこのヨットは良い選択だったと思うよ。
ただ問題が一つだけあって、広島に在るヨットで横浜ベイサイドマリーナまで陸送してもらうと全部で150万掛かってしまうのよ。
それは仕方ないでしょう。
仕方なくないよ、私って135万しか持っていないんだよ。
それで諦めたの?
ううん。お母さんに話したら15万ぐらいならば、まだゆみ名義の銀行口座には貯蓄分として残っているお金があるからって、それも使って買っても良いって言ってもらえたの。
それで買えたんだ。
うん。
で、購入したヨットは横浜ベイサイドマリーナに来たの?
来たよ!
横浜ベイサイドマリーナにトラックでやって来て、マストをマリーナで立ててからクレーンで海に下ろしてもらって、そこからは八景島の少し先のところにある公共マリーナまで自分でクルージングしたの。
結果として、同じぐらいのサイズのヨットを横浜で乗れるようになったのだから良かったじゃないの。
そうね。
でも、カタリナ250みたいな味のあるヨットではなくて、ただの普通のヨットになってしまったなって思いはあるけど。
なるほどね。
きっと、あんたからカタリナを買ったその人も、普通のヨットよりもカタリナみたいな味のあるヨットを求めていたのだろうね。
ひどいよね、私から無理やり買って。
いや、あんたがちゃんとはっきり断らないからいけないの!
でもね、また味のあるヨットが出て来たらすぐにでも買い換えたいなって思って、ハンター265を250万で売るためのホームページはすぐに作成しておいたんだよ。
はあ、どういうこと?
だって、公共マリーナの人が、もし置くヨットを持っていないのだったら、次の空き待ちの人に空き場所を譲ってしまいますよって焦せらせるのだもの。
え?
だから味のある中古ヨットが無いから、これに決めたっていうのもあるの。
全くしょうがない決め方をしたものね。
まあ、250万ならばまず買いたいなんて人が現れないだろうから良いけど。
ね、お姉ちゃん知ってた?
何を?
スーパーなんかの駐車場で車を停める時ってバックで駐車する人が多いでしょう。
そうね。
でも、ヨットは前から突っ込んで停泊する人が多いじゃない。
日本ではね。ヨーロッパなんかだとバックで停める人もいるよ。
それでね、ゆみはいつもこのヨットを停める時はバックで入れて停泊していたのよ。
そうなの。なんで?
前から入れると船の一番前がよく見えないからポンツーンにぶつかるんじゃないかなと思って怖かったの、バックで入れるとポンツーンがよく見えるから入れる時に入れやすかったの。
なるほどね。
それまで、そこの公共マリーナでバックで停めている人なんて誰もいなかったんだけど、私が普通にバックで入れていたら他にも何人かバックで入れる人が増えてきたのよ。
まあ、皆その方が入れやすいって気づいたのだろうね。
