ね、まなみ!
何?
これがお父さんの新しいヨットね。
へえ、良いヨットじゃん!
だろう?
確かにこれに買い替えたからゆみちゃんも乗るようになったって納得できそう。
そうなんだよ。
お父さん、このヨットに満足してるよね。
ああ。何しろ前のヨットは35年乗り続けて来たからな。
35年?
おじいちゃんの頃から合わせてな。
それはあっちこっち傷み出してくるよね。
おまえたちがちゃんと受験に合格してくれたからだぞ。
え?
それで安心してドイツから輸入できたんだぞ。
それなら私も一浪はしたけど合格できて良かったわ。
私は?
ゆみも現役で合格してくれて嬉しかったぞ。
代ゼミでなく合格した大学に行ってくれたしね。
そうだよな。
私、お父さんの船って進水式の時に初めて乗れたよ。
そうだよね。
あの時、初めて乗ってゆみが言った「うわ、すごい!大きなベッドも付いているよ!」は今でもずっとお父さんの耳に残っているよ。
そうなの?
ああ。
本当にすごいヨットって思ったんだよ!
そうか、どんなところがすごかった?
余裕でお泊まりできる大きなベッド、お料理できる広いキッチン、広いリビングルームにシャワー付きの広々としたトイレ。
ゆみのヨットに対する感想ってキャビンの中しかないんだね。
他にどんなことがあるの?
セイルが大きいとかマストが高くて速そうとか。
ああ、そっちの性能、スペック系ね。
普通はそっちがメインじゃない。
そうね、私も中古車の状態はエンジンから確認していくわね。
そうでしょう。
でも良いのよ。
ゆみちゃんにとってはスペックよりも船内のインテリアこそが大事なのよ。
それでOKなの?
OKだと思うよ、キャンピングカーとかバスだと私も中古車の内装から気にすることあるし。
なるほどね、けっこう有りなのね。
でも、ゆみって気に入ったって割りにはあまりお父さんのヨット乗っていないよね、たぶん弘子ちゃんの方が乗っている回数多いんじゃないの。
だって大学のヨット部があったのだもの。
今は大学のヨット部無いんだし乗りに来ても良くない?
お父さんのヨットもう無いじゃない。
え、このヨットってもう無いの?
うん、無い。

