ね、祥恵。
え?
ゆみちゃんってヨットの選び方では色々苦労しているんだね。
まあ、自分がアホなだけな面もかなりあるけどね。
それは言わないであげて。
まなみも、ゆみには優しいね。
そんなには損しているわけではないのだから。
そう?
うん。私はそう思うよ、だって…
最初のヨットは0円でしょう。
お母さんの知り合いから頂いたからね。
次は90万からの5万でしょう。
うん、そうだわね。
そして50万+85万からの150万でしょう。
15万マイナスね。
ほら、15万だけで理想のヨットに近づけているのよ。
そうなんだけどさ。
その後で、あの子はまた大きなアホをやっているのよ。
そうなの?
今、ゆみは中古車オークション会場に出掛けているから、まなみにだけは話しておくね。
うん。
あの子さ、ハンター購入した時に250万の販売ページを作っていたの覚えてる?
ああ、なんかゆみちゃんが言っていたね。
ずっと忘れてたのか掲載しっ放しにしていたのよ。
そうなんだ。
ハンター購入時はさ、中古艇の価格が全体的に低かったけど、それから景気が変わって高くなってきていた時だったのよ。
まさかとは思うけど、購入者からの問い合わせが入った。
そうなのよ!
それで?
その方がハンターを購入して、ゆみと同じマリーナへ置くことに。
あら。
そして、ゆみは例のヨットと出会うことに。
例のヨット?
ほら、以前にレビュー艇でも紹介したゆみが木製マストを折ってしまったヨットのこと。
ああ。
このヨットは、ゆみにとって今までで一番思い出深いヨットだったみたいよ。
いくらだったの?
まなみのさっきの言い方で伝えると、
250万からの400万。
ああ、だろうね。
私はヨットのことはあまり知らないけど、見た目の感じも今までのヨットとはグレードもぜんぜん違って値段が高そうだものね。
まあ、そうね。
でもマイナス150万か。
実際にはメインセイルをスタックパック仕様に変更して、愛知から横浜までの陸送費も掛かっているから440万ぐらいかな。
まあ、ゆみちゃんの理想のヨットには近づいたわけだし。
まあね。キャビンの中は木部も多く豪華なインテリアで、トイレも個室で扉もついているし、温水シャワーも完備で陸電設備も付いて、ベッドもホカホカのぶ厚いクッションが付いて、最高に暮らしやすかったヨットみたいよ。
うん。
ゆみ、毎週のようにマリーナステイへ出掛けていたわ。
そうなんだ。
私が乗った感想も、セイリング性能は一見すると重そうなヨットで走らなそうだけど、ちょっとした風にもマストやセイルが反応してくれて、重たい風が吹くと順調に巡航できるヨットだったかな。
あと、エンジンも大きめのエンジンが付いているため力強く走っていた。
ああ、なるほどね。
ただ、深くて大きなロングキールが付いているため、後進性能が悪く、バックさせようと思うと、どこに向かっているのかよくわからなくなるヨット。今まで停泊するときは、バックで入港させていたゆみには初めの内は停泊させるのが大変なヨットだったって。
それじゃ、入港する時ってどうしたの?
バックができないヨットということで、私が提案したんだけど、ゆみは半ば強制的にバックではなく正面から停泊させる練習をヨットにさせられてしまった感じで、最終的にはバックでなく正面から停泊することも出来るように、このヨットにさせられたみたいよ。
じゃ、ゆみちゃんも上達できたんだ。
ゆみも、快適なマリーナステイでもう一生このヨットで良いと言っていたわ。
やっぱマイナス150万はプラス150万以上だったのよ。
そうかもしれないね。
そんなお気に入りのヨットとゆみの別れは突然やってきました。ある強風の日、マリーナから電話連絡があって、ジブファーラーがばらけていると伝えられたの。
え、なになに?
バラけてしまったファーラーは巻き直せば良いか
そうよ、せっかくマリーナの人がわざわざ連絡をくれたのだから、車で行ってバラけてしまったファーラーを巻き直して来なさいよ。
うん、そうする!
お母さん、ちょっとマリーナまで行ってくるね。
ええ、行ってらしゃい!
え、ぜんぜん違うじゃん!
ファーラーがバラけてセイルが開いてしまったわけじゃないじゃん、マストが強風で真ん中辺りから折れてしまったんじゃないの!
上半分の折れたマストは空中でブラブラしていて、そのせいでバラけているジブファーラーのセイルは巻き込むこともできませんでした。
え、これってどうしたら良いの?
もしもし、お母さん!どうしよう?
どうしたの、泣いているの?
マストが折れちゃったの!どうしよう?
あらら、どうしましょうね。
泣いてばかりいられないので、ファーラーをデッキに下ろしてデッキ上で巻き直して、デッキに巻きつけました。マストの上の方でブラブラしているマストは下の方からもロープでぐるぐる巻きにして、ある程度は揺れないように固定しました。
修理ってどうしたら良いのかしらね?
マスト1本まるまる交換しなきゃならないよ。
そうね。
そんなの高くて、ゆみの予算じゃ修理なんかできないよ。
木製の1本ものの立派なマストのヨットです。
一体どうしたらいいの?
ネットであっちこっち相談し、検討した結果、こういう木製のクラシックタイプのヨットが好きな方は多いみたいで、自分で修理して使うからと購入してくれる方も何名か現れました。
その方たちの誰かに引き取ってもらうしかないかしらね。
うん。
そんな中で、購入してくれるだけじゃなくて、ゆみが代わりに乗るための小さなヨットまで提供してくれるという方が現れました。
その方にしたら良いんじゃないかしら?
そうだね。
ずっと折れたままのマストを眺めていても仕方ないからそうしなさい。
お母さん、交渉が成立したよ。
どうなったの?
私のマストが折れたヨットを70万で買ってくれるって。
400万したヨットだけどね。
でも、マストが折れてしまっているしね。
そうね、仕方ないわね。
で、私がSeaward Foxっていう小さいヨットなんだけど、それを30万で買うことになったの。
それじゃ、その方が40万振り込んでくれるってことかしら?
うん、そうだね。
そして、ゆみの中で、このヨットはご臨終となり、お別れとなってしまいましたとさ。
ええ、ちょっとやだやだ、切ない…
切ないよね。
そのSeaward Foxっていうのが今、ゆみちゃんが持っているヨットのこと?
そう。
