へえ、ゆみちゃんもヨットを持とうとしたんだ。
計画だけだけどね。
あっという間に砕け散っていた。
でも、けっこう積極的なんじゃん。
積極的というのかな。
ゆみちゃんって消極的なだけなのかと思っていた。
横浜まで毎日働きに行っていた頃は、会社の帰りにたまにだけどマリーナのお父さんのヨットを眺めに行ったりもしていたけど…
帰りに眺めに行くこともあったんだ。
うん、同じ横浜だし車ならばすぐだもの。
横浜の貿易会社って関内の辺りだったっけ?
うん。
それならば確かに近いわね。
でも、横浜まで通わなくなってしまったらあんまり海なんて行かなくなってしまったし。
そうね。
お姉ちゃんも、お父さんも行かなくなってしまったでしょう。
え、そんなことないよ。
けっこう行っているよな。
全然行っていないよ。
確かに最近は毎週末とかは行っていないけどな。
っていうか、プリンセストレーディングも起ち上げたばかりだったし。
忙しいの?
忙しいわよ。歯医者のお仕事だってあるし。
そうなんだ。
大学の頃、一緒に乗っていた弘子ちゃんも広島へ帰ってしまったし。
うん。
お姉ちゃんは仕事が忙しそうだし。
うん。
お父さんは年取ってしまって休日はダルそうだし。
なんだよ、最後のそれは。
ゆみは、乗るヨットが無くなってしまって寂しかったのよね。
そうだったんだ。
そんな時に、ヨットを無料であげますってチラシを見つけたから興味持ってしまっただけよね。
そうかもしれない。
そうなのか。
うん。
でもさ、ちょっとだけ待ってよ。
え。
今はさ、私もプリンセストレーディングを起業したばかりでいっぱいいっぱいだけど…
へえ、そんなことがあったんだ。
あったのよ。
あの頃の祥恵は確かに忙しさでアップアップだったかもね。
確かに!今だから笑えるけどね。
でも、それからプリンセストレーディングも軌道に乗り出して、余裕も出てきて…
仕事以外のことも考えられるようになってきた。
そうね。
それでさ、あの時にゆみが言っていた言葉を思い出して…
うん。
フランスの造船所にカタマランを発注したんだ。
それが祥恵の世界巡航の始まりだ。
そうそう。
それがさ、フランスに発注したヨットの話をゆみにも話すようになった途端、ゆみも自分のヨットが欲しいなんて全く言わなくなったものね。
そうだったんだ。
