ゆみちゃん、湘南で乗ったヨットはどうだった?
楽しかったよ。ワンちゃんが可愛かったし!
ヨットはどうだった?
ヨット?あ、ヨットも小さくて可愛かった。
ゆみ、すごい乗りこなしていたわよね。
うん。
おじさんがね、あのヨットをゆみに上げるって言うんだけど。
え、くれるの?
うん、プレゼントしてくれるって。
嬉しいけど、なんで?
あのおじさんはね、あそこのマリーナの仲間たちと一緒に大きなボートに乗らないかって誘われているらしいのよ。
そうなんだ。
大きいボートに乗るようになったら、あの小さいヨットには乗れなくなってしまうでしょう。
うん。
それでね、ゆみちゃんがあのヨットを好きそうだったし、上手に乗りこなしていたから上げるから引き継いで乗ってくれって言うのよ。
欲しい!
それじゃ、おじさんに下さいって返事しちゃうよ。
あ、待って!
どうしたの?
ヨットってただでもらえても、マリーナ代が高いのよ。
マリーナ代は大丈夫よ。
そうなの?
お母さんが、お姉ちゃんからあなたがプリンセストレーディングで働いた分のお給料をゆみの銀行口座に振り込んでもらっていて、それをちゃんと貯めてあるから。
え、そうなの!100万ぐらいはちゃんともらっている?
100万は…
何の話?
ゆみちゃんのお給料。
お姉ちゃん、私のお給料って大体100万ぐらいある?
え、それ何よ。
なに、ゆみはお給料を100万欲しいの?
うん。
良いよ、100万のお給料にしてあげても良いけど。
良かった!
ただし、100万お給料出すということは会社はね、その3倍は売上げ出さないといけないのよ。
そうなんだ。
だから、そのためにゆみは300万ぐらい会社を儲けさせてちょうだい。
それって大変?
そうね。ホームページでオファー集めてるだけじゃだめかな。まなみとかに全部任せるのではなくて、ゆみ自身も自分でオファーの海外バイヤーに返事して…
昔、横浜の貿易会社とかでもやっていたよ。
そうね。それで300万以上車を毎月売らないと。
できるかな?
すぐには無理ね。
お給料の前借りとかかな。
どこでそんな言葉を覚えてきたのよ。
どうしよう、お母さん?
大丈夫よ、お母さんは思うんだけど、マリーナ代ってそんな100万も掛かるところばかりじゃないと思うわ。もう少し安いところもあるはずよ。
そうなの?
公共のマリーナとかだとそんなに掛からずにヨットを置けるはずよ。
本当に?
お父さんのマリーナは、100年以上続く日本初のヨットクラブですごく権威のあるマリーナだからこそ、置き場代も100万ぐらい掛かるんだと思うのよ。
そうなんだ?
何せ、あなたの東京の方のおじいちゃんは権威とか名誉にすごく拘る人だったからね。
私、東京のおじいちゃんって知らない。
そうよね。あなたが産まれる前に亡くなってしまったからね。
東京のおばあちゃんは知っている!
おばあちゃんは中学、高校の頃ずっと一緒に東松原で住んでいたものね。
うん。
祥恵は知っていたかしら?
おじいちゃん?知っているよ!
そうだった?
うん。まだ小さかったから忘れてしまっていることも多くてあんまりは覚えてないんだけど。
でも、一応はおじいちゃんとの記憶はあるのね。
うん。毎年、夏休みになると長野の実家へ遊びに行っていた気がする。
え、長野の実家?
滝があって、牧場へ連れて行ってもらってリフトに乗った気がする。
あ、それは蓼科のおじいちゃんの別荘だわ。
あれ、別荘だったんだ。
そう。蓼科の別荘、近くに乙女滝とかリフトの付いた観光牧場があったのよ。
そうか、あれって蓼科か。
あの頃はまだ今のプリンセストレーディング本社はおじいちゃんのお兄さんの家だったしね。
そうなの?
元々は、おじいちゃんのお兄さんがあそこの軽井沢近くの家を別荘として購入したのよ。
そうだったんだ。
それで、おじいちゃんのお兄さんは仕事をリタイアしてから東京の家を引き払って、あそこの家へ移転して暮らすようになったのよ。
へえ。
それで、おじいちゃんがお兄さん家の近く、蓼科に別荘を購入したの。
私が小さい頃行っていたのはその蓼科の別荘だったんだ。
そう。それでお兄さんが亡くなった時に、おじいちゃんは2つの家は維持できないからって蓼科の別荘を引き払って、お父さんに歯科医院を任せてセカンドライフは長野へ移る予定だったの。
なるほどね。
でも、結局おじいちゃんはそこに住むことはなく、家はおばあちゃんに引き継がれて、おばあちゃんはずっとあなたたちと一緒に東京で暮らしていたでしょう。
ああ、そういう家だったんだ。
おじいちゃんのお兄さん、すごく贅沢な人で拘る人だったのよ。
そうなんだ。
だから、長野の家は今ではもう絶対に作れない家でね。大きな大木を1本丸ごと支柱に使って頑丈でしっかりと作られている家なのよ。
そうなの?
お父さんがあの家を建て直そうかって話があったんだけど、その時に依頼した大工さんがこの家の造りは支柱の大木にしても、もう今の大工さんでは二度と造り直せない貴重な家だって言われたの。それで未だにそのまま建て直されずに保存してあるのよ。
そうか、お母さん大丈夫よ。
プリンセストレーディングの本社にリニューアルした時も、内装だけ触っていて全く建て直しはしていないから。
ならば良かったわ。
お母さん、すごく良い話聞けて良かった。
ええ。
で、ヨットはおじさんから頂いてしまっていいわね?
うん!
それじゃ、おじさんにそう伝えておくわね。
マリーナは?
マリーナはお母さんと一緒にちょっと安い公共のマリーナを探してみましょう。
はーい。
