お父さんは、ゆみが生まれるずっと以前から横浜ヨットクラブで30フィートのセイリングクルーザーに乗っていました。長いこと乗ってきたため、ヨットは古くなり傷みも多くありました。
祥恵とゆみの大学受験も終わり、2人とも無事に大学へ合格できて父親としてもホッとできたとき、お父さんは思い切って長年乗ってきた30フィートセイリングクルーザーを32フィートのセイリングクルーザーへ新しく買い換えました。
それは、ドイツ製のセイリングクルーザーでした。
ゆみは、自分が生まれるずっと以前からお父さんが乗っていた30フィートセイリングクルーザーには、お父さんに一度も乗りに連れていってもらったことがありませんでした。
大学生のとき、お父さんが買い換えたドイツ製のセイリングクルーザーには、ドイツから日本へ輸入され到着して、日本の海で初進水した進水式のときから、お父さんにお母さんと一緒に連れてきてもらえて、お父さんのヨットに乗せてもらえました。これが、ゆみにとっては、初めてお父さんのヨットに乗せてもらえた瞬間でした。
「うわ、すごい!大きなベッドも付いているよ!」
ゆみは、余裕でお泊まりできる大きなベッドやお料理できる広いキッチンも、広いリビングルームもシャワー付きの広々としたトイレも付いたお父さんのヨットに大興奮でした。当日の進水式は、ゆみは大学の同級生で、同じヨット部の友だちと一緒に参加したのですが、友だちもお父さんの大きく新しいヨットに大興奮でした。
友だちは、お父さんのヨットが大変気に入って、ゆみは大学ヨット部を続けているにも関わらず、友だちだけは大学ヨット部を退部して、お父さんのヨットのクルーになって乗るようになっていました。