祥恵って小学生からヨットに乗っているのよね。
そうね。
祥恵のヨット歴ってハンパなく長くない。
ヨットをやっている長さだけはね。
だって20年以上にはなるよね。
うん。でも、うちのお父さんなんかもっと長いよ。
そうなんだ。
だって私が生まれる前から乗っているんだよ。
お父さんってどうしてヨットに乗り始めたのだろうね。
わからない、進水式した船の前の30フィートのセイリングクルーザー、ヤマハ発動機が造ったYAMAHA30Sって艇種にずっと乗っていたみたいよ。
ああ。お父さんのお父さん、おまえのおじいちゃんが持っていたヨットだよ。
へえ、そうなんだ。
おじいちゃんが今のおまえも通っている横浜のマリーナの会員に初めてなった時にね。
おじいちゃんはどうしてあの横浜のマリーナの会員になったの?
あそこのマリーナは、横浜ヨットクラブといって100年以上続く日本初のマリーナなんだよ。
そんなすごいマリーナなんだ。
ああ、会員には石原慎太郎とか石原裕次郎、日本が誇る著名なヨットセーラーがたくさん所属していた権威あるヨットクラブだったんだぞ。
へえ。
おじいちゃんが世田谷の歯科医師会の会長に就任した時、横浜ヨットクラブを紹介されてその権威に魅かれて入会したんだけどな。
うん。
せっかく会員になれたのに、ただ会費払っているだけじゃ勿体無いなとマリーナに置いておく船も欲しいなと建造したのがYAMAHA30Sだ。
会費払うだけじゃ勿体無いって貧乏性じゃん。
そうだよな。
それで、そのセーリングクルーザーをお父さんが引き継いだんだ。
ああ、横浜ヨットクラブの会員権と一緒にな。
なるほど。
最初、お父さんは会員権だけで良かったんだけど。
そうなの?
それがおじいちゃんのヨットに乗っているうちに会員権よりもヨットの方の魅力にはまってしまって、それからはずっとヨットに乗り続けているって感じかな。
そんなおじいちゃんのヨットを買い替えてしまって良かったの?
だって仕方ないだろう。あれ、もう30年以上経っていたぞ。
キャビンもだいぶ草臥れていたものね。
そうだろう。
買い替えてくれた今のヨットの方が乗りやすくなったわ。
トイレも広くきれいになったし、ベッドも寝やすいし、台所も近代的に革新されただろう。
そうね!
たぶん買い替えずにあのままだったら、おまえ以外はお父さんと乗ってくれなかったよ。
え?
船がきれいになったから、ゆみもお友達連れて乗りに来てくれて、お母さんだって夏のクルージングには一緒に出掛けてくれるようになってくれたんだと思うぞ。
それはあるかもね。
現に、ゆみもお父さんが買い替えるまでは一度もお父さんのセイリングクルーザーに乗りに来なかったものね。
そうなんだ。
まあ、中学、高校の頃はゆみの体があまり強くなかったっていうのもあるけどね。
