中古車輸出・第61話

「次は、アフリカの方ね」
ゆみは、まるで自分のメールボックスに入っている海外バイヤーたちが、歯医者の待合室で診察の順番待ちしているように、いや銀行で受付の順番待ちしているように見立てて、それぞれのメールを順番に開いては、その海外バイヤーのご用をお聞きしていた。
「マラウィの海外バイヤーさんなんだ。ランドクルーザーをご希望ですね」
アフリカは、やはり動物たちがたくさん暮らすサファリなのか、ジープの問い合わせが多かった。中でも、トヨタのランドクルーザーを希望する海外バイヤーは多い。

中古車輸出・第60話

ゆみは、オークション会場のサイトにログインすると、ミキサー車を検索してみる。けっこう色々なミキサー車が出品されている。ゆみは、個人的にタマゴの形をしたタンク部分にEGGと書かれているミキサー車が可愛くて好きだった。
「彼の予算にはまるミキサー車で何か良いものはあるかな」
ゆみは、オークション会場サイト上でいくつか良さそうなミキサー車をピックアップすると、それらの情報を写真と共に、ミャンマーの海外バイヤーへ返信してあげた。

中古車輸出・第59話

「シャラン、海外バイヤーからの私への返事が増えてるみたいなの」
「それは良かったね」
シャランは、ゆみに答えた。
シャランは、自分の海外バイヤーを相手にしていて、ゆみの海外バイヤーのことなど相手にしている暇も無さそうだった。ゆみは、自分の海外バイヤーへの返信に集中していた。
「そうなんだ、ミャンマーで工事現場で使うミキサー車がほしいのね」
ゆみは、海外バイヤーからのメールを確認していた。

NY恋物語・第80話

「ゆみちゃん、お兄ちゃんとばかり遊んでる」
美香は、ゆみが良明やヒデキたちとばかり、サッカーのボードゲームしているのを眺めて、裏やまっそうにしていた。
「ごめんな、俺が同い年だから一緒のクラスになれるとか期待させちゃったものな」
「ううん、隆お兄さんのせいじゃないよ」
美香は、隆に言った。
「今度、女の子たちだけで、うちに遊びに来るか」
「うん!」
美香たち3姉妹が大きく頷いた。

中古車輸出・第58話

「はい、今日のところはここまでで良いかな」
シャランは、ゆみに言った。
「後は、書類の手続きが終わったり、車が港へ陸送終わったりする度に、その都度、一緒に業務を進めていきましょう。車の注文取ったら終わりじゃないからね、相手の海外バイヤーのところに、ちゃんと車を届けるまでが私たちの仕事よ」
シャランは、ゆみに説明した。
「はい!わかりました、シャラン先輩」
ゆみは、シャランに敬礼した。

中古車輸出・第57話

「今回は、私が行政書士に依頼するけど」
シャランは、ゆみに説明した。
「次からは、ゆみちゃんが自分で行政書士に電話して、輸出抹消お願いしますって依頼するのよ」
シャランは、ゆみに言った。
「お願いすれば、あとはぜんぶ行政書士が全ての手続きをやってくれるの?」
「うん、手続き終わったら、それを船の会社、今回はアマカップにも知らせてあげるの」
シャランは、自分の手を動かしながら、ゆみにも伝えた。

中古車輸出・第56話

「じゃ、私は自分の仕事に戻ってもいい?」
ゆみは、シャランに聞いた。
「だめよ、まだ、車を港に移動するように手続きできて、船のブッキング予約ができただけなんだから。これから輸出の手続きをしなくちゃ」
シャランは、ゆみに言った。
「行政書士さんに依頼して、ポルシェの車検証を輸出抹消手続きしなくちゃいけないの。これって、ゆみちゃん担当なんだから、ゆみちゃんの仕事なのよ」
シャランは、ゆみに命じた。

中古車輸出・第55話

「陸送終わりました。船のブッキングもしますか?」
シャランは、経理担当に確認した。
「お願い、行き先はドイツのブレマハーベン港だからアマカップに頼むように」
シャランは、アマカップジャパン、ヨーロッパ航路の自動車専用船に連絡を入れて、ポルシェをドイツまで輸送する船のブッキング予約をした。
「これでドイツまで運んでもらえるのね」
ゆみは何もせずに、シャランに船の手配全部をやってもらってしまった。

中古車輸出・第54話

「落札したら、すぐにオークション会場に落札金額を振り込まないと車を仕入れられなくなってしまうのよ。次からは落札したらすぐに教えてちょうだい」
経理担当は、ゆみに説明した。
「シャラン、静岡会場だから、ゆみちゃんと一緒に車の陸送手続きを手配しておいてちょうだい」
「陸送先は横浜港で良いですか」
シャランは、ゆみを自分の席に呼ぶと、ゆみが落札したポルシェをオークション会場から横浜港へ運ぶ陸送の手続きをした。
ゆみは、シャランが陸送してくれるのをただ眺めていた。

中古車輸出・第53話

ゆみは、一仕事を終えたような顔で、中古車オークション会場のアカウント情報が入っているパソコンから自分の席に戻って来た。
「落札できたの?」
戻ってくる途中、経理担当に聞かれて、ゆみはうんと頷いた。
「落札できたのだったら、ちゃんと落札したことを報告してくれないと」
経理担当は、ゆみの頭をポンと撫でながら言った。そのままファックス機を確認しに行って、オークション会場から届いていた落札通知を持って戻って来た。

NY恋物語・第79話

「私の部屋にも見に来てよ」
「え、ううん、大丈夫」
美香は、ゆみの手を引いて、自分の部屋へ案内した。
「うわ、かわいい部屋!」
野球好きの良明の部屋と違って、ぬいぐるみとお人形がいっぱいな部屋だった。
「さすが、女の子3人の部屋だな」
一緒について来た隆が、美香に言った。
「隆お兄さんはだめ、ここは女の子の部屋」
「そうか、ごめんごめん」

NY恋物語・第78話

「ゆみちゃん」
良明の部屋を見終わって、部屋から出ると、同い年ぐらいの女の子に声をかけられた。
「ゆみちゃんでしょう?隆お兄さんの妹の」
「うん」
「私は美香、良明の妹」
美香は、ゆみに挨拶した。
「本当は、私がゆみちゃんとクラスメートになりたかったんだ」
美香は、ゆみに言った。

NY恋物語・第77話

「やっぱり、ゆみちゃんは頭のいい子だ」
良明のお母さんは、ゆみのことを背後から抱きしめながら、褒めてくれた。
「せっかく来たんだし、良明の部屋を案内してあげる」
良明のお母さんは、ゆみに会えたのが嬉しそうだった。
「うわ、すごい!」
良明の部屋の壁には、いっぱい野球のペナントが貼られていた。
「日本の野球チームのペナントじゃないか」
「日本にも野球チームがあるんだ」
ゆみは、隆に聞いた。

NY恋物語・第76話

「おまえは、なんで良明君と一緒なんだ」
「私と良明君はクラスメートだもの」
「クラスメート?」
隆は、ゆみに聞き返した。
「あ、そうか!おまえの言うヨシュワキー君って良明君のことか」
隆は、ゆみが話していたことを思い出した。
「ゆみちゃんって、良明と同い年なの?」
「あ、ゆみは飛び級で学年を飛んでいるんですよ」
隆は、思い出したように、岡島さんに説明した。

NY恋物語・第75話

「え、なんでわかったんですか」
ヒデキは、岡島さんに聞いた。
「わかるわよ。伊達に男の子1人に、女の子3人を育ててきていないから」
岡島さんは、ヒデキに答えた。
「でも、ゆみちゃんを連れて来てくれて嬉しかったわ」
良明のお母さんは、ヒデキに言った。
「最近、いつも隆君にしか会っていなかったし」
「はあ、すみません」
隆は、岡島さんに苦笑していた。

NY恋物語・第74話

「あの、おばさん、ごめんなさい」
ゆみは、岡島さんに謝った。
「何のこと?」
「あのー」
「壊れてしまったバレッタのことかな」
「はい」
「あれでしょ、ヒデキ君に行けとか言われて、ここに来てしまったんでしょう」
「え、どうして?」
ヒデキが、岡島さんの顔を見た。

NY恋物語・第73話

「それはね」
ゆみは、返事に困っていた。
「ね、隆君。彼女がゆみちゃん?」
「はい、そうです。妹のゆみです」
隆は、ゆみの頭を押してお辞儀させながら、岡島さんに妹を紹介した。
「ゆみちゃん!会いたかったのよ」
岡島さんは、ゆみのことをハグした。
「岡島さんは、おまえのことを小さい時、いろいろ面倒みてくれた命の恩人なんだぞ」

NY恋物語・第72話

「ごめんなさい」
ゆみは、兄に謝った。だから、あんなバレッタ1個で、わざわざ来たくなかったのだ。兄に知られたら、ぜったいに怒られるとわかっていたのに。
「ゆみ、おまえは、こんなものが壊される度に、わざわざ学校の友達の家まで押しかけて、お友達のお母さんに言いつけているのか?」
「ううん、していないよ」
ゆみは、慌ててお兄ちゃんに返事した。
「じゃ、なんで今日は文句を言いに来たんだ」

NY恋物語・第71話

「ゆみ、おまえ何をやっているの?」
「お兄ちゃん!」
奥の部屋から兄の隆が現れたので、ゆみは驚いていた。
「良明が、ゆみちゃんの髪留めを階段の上から落として壊してしまったんですよ」
ゆみの代わりに、ヒデキが隆に説明してから壊れたバレッタを手渡した。
「こんなものの文句を言うためにわざわざ来たのか」
隆は、ヒデキから受け取ったバレッタを自分のズボンのポケットにしまうと、ゆみに聞いた。

NY恋物語・第70話

「ほら、言わなきゃ」
ヒデキは、話を中断したゆみを即した。
「壊れちゃって、学校の階段から落ちたら壊れてしまって」
ゆみは、良明のお母さんにうまく説明できないでいた。
「え、そこにいるのは、ゆみか?」
部屋の奥から、ゆみが日常いつも聞いている、聞き覚えのある声が聞こえた。

NY恋物語・第69話

「ほら、ゆみちゃん」
ヒデキは、ゆみを良明のお母さんの前に立たせると、壊れたバレッタを持っているゆみの手を、おばさんの前に差し出させた。
「あら、可愛らしいお嬢さん。どうされたの?」
良明のお母さんは、ゆみに言った。
「なんか壊れちゃって」
ゆみは、途中まで話しかけて、話を中断した。

NY恋物語・第68話

「こんにちは」
厳顔先には、良明のお母さんと思われる女性が立っていた。
「あら、ヒデキ君」
女性は、皆の中にヒデキの姿を発見して、声をかけた。
「こんにちは。なんか、彼女が話したいことあるらしいんです」
ヒデキは、愛想の良い言葉で、良明のお母さんに返事した。

NY恋物語・第67話

「はーい」
ゆみは、ヒデキの方を見ると、首で早く答えろよって指図していた。
「あのー、私はヨシュワ、良明君のクラスメートなんですけど」
ゆみは、知る限りの丁寧な日本語でインターホンに返事した。
「良明のお友達?」
インターホンの女性が言うと、インターホンが切れた。しばらくすると、玄関の扉が中から開いた。

NY恋物語・第66話

「押しなよ」
ヒデキは、ゆみに玄関のインターホンを指差した。
「私が?」
ゆみがヒデキに聞くと頷いた。良明を見ると、押さないでほしそうな気がした。
「やっぱりいいわ、私はうちに帰る」
「だめだよ」
ヒデキは、ゆみをインターホンの前に移動させると、ベルを押した。しばらくして、インターホンから女性の声がした。

中古車輸出・第52話

「このポルシェが落札できたら良いのにな」
ゆみは、最初に入札してみたポルシェの入札状況を確認しながら考えていた。このポルシェが、ドイツの海外バイヤーが1番気に入ってくれていた車だった。
「あー、入札されてしまった」
中古車オークション会場のサイトは、リアルタイムで入札状況を確認できる。ゆみの入札金額より多い入札があったので、ゆみも少しだけ自分の入札金額を上げてみた。
「これで落札できるかな」
ゆみは、状況を確認していた。

中古車輸出・第51話

「ドイツの海外バイヤーは、ゆみの仕事だろう」
社長は、ゆみに言った。
「ゆみが、ポルシェの仕入れからドイツまでの船積み、最後まで自分でやりなさい」
ゆみは、社長に命じられて、自分で中古車オークション会場のサイトにログインして、ポルシェを探すのだった。探したポルシェをドイツの海外バイヤーに確認してもらい、OKの出たポルシェに入札し、落札を試みる。
「このポルシェから入札してみるか」
ゆみは、まず1台目に入札してみた。

中古車輸出・第50話

「私も、また新しいバイヤーから注文取るのね」
ゆみは、部長とシャランに答えた。
「でも、その前にまずドイツのポルシェを仕入れて、輸出してちょうだい」
ゆみは、経理担当の社長の奥さんから指示された。
「ね、シャラン。ポルシェ仕入れるのお願い」
シャランは、ゆみに言われてオークション会場のサイトを覗きこむ。
「シャランは、ポルシェの仕入れはやらなくて良いぞ」
部長と社長が、シャランに命じた。

中古車輸出・第49話

「それじゃ、シャランは85万でいきなさい」
社長は、シャランに言った。全営業担当者の来月の目標金額が決まった。この目標金額を目指して、各自で来月からの仕事を頑張っていくことになる。
「私、オファーメルーの海外バイヤーがちゃんとしたバイヤーだってことがわかれば、もう中古車輸出はしなくても良いんだけど」
「そうだよね」
シャランは、ゆみに頷いた。
「いや、ちゃんとしたバイヤーかはまだわからないだろう」

NY恋物語・第65話

エレベーターが14階に停まると、良明は降りて、右側の廊下を進み始めた。ゆみも、慌てて降りると、良明の後を追っかけて行く。
「どこに行くの?こっちだよ」
ヒデキは、ゆみたちに声をかけると、反対の左側の廊下を進み始めた。
「あっちだってよ」
ゆみは、良明の手を握ると、ヒデキたちの方向へ歩き出した。
「ここだよ」
ヒデキは、突き当りの部屋のドアの前で立ち止まった。

NY恋物語・第64話

エレベーターは4階に停まって、野球のバットを持ったヒデキたちが乗ってきた。
「ヒデキ君」
「え、何してるの?」
「どこに行くかわからないみたい」
ゆみは、ヒデキに言った。
「14階だよ」
ヒデキは、14階のボタンを押した。
エレベーターは、14階へ向かって上がり始めた。

NY恋物語・第63話

良明とゆみがエレベーターに乗ると、エレベーターの扉が閉じた。
「どこに行くの?」
ゆみは、良明に聞いた。良明は、エレベーターのボタンを押していないため、エレベーターはずっと18階に停止していた。
「どうするの?」
ゆみは、良明に聞いた。エレベーターは停止したままだったが、急に降り始めた。誰かが下の階からエレベーターを呼んだようだった。

NY恋物語・第62話

ゆみも、必死で追いかけて行くと、18階の廊下へ出た。
「あんまり速く走らないで。私、迷子になちゃう」
ゆみは、泣きそうな顔で良明に頼んだ。良明は、廊下を進むとエレベーターの前へ移動した。
「どこに行くの?」
ゆみは、良明に聞いた。エレベーターが来ると、良明はまた乗りこんだ。
「また乗るの?」
ゆみも、エレベーターに乗った。

NY恋物語・第61話

良明が左側の廊下を進み始めた。
「そっち?」
ゆみは、良明の後を追って行く。
「ここの家なの?」
ゆみは、突き当りのドアで立ち止まっている良明に聞いた。良明は、急にUターンすると、廊下を走り始めて、階段室の中へ入った。
「え、そっち?」
ゆみは、必死で良明について行く。良明は、階段室の階段を下って行くと、18階の廊下へ出た。

NY恋物語・第60話

エレベーターの扉が閉じた。
「どうする?」
ゆみは、良明の方を見た。良明は、19階のボタンを押した。
「19階に住んでいるの?」
ゆみは、良明に聞いた。
「ね、到着したよ」
ゆみは、良明に言った。エレベーターは19階で停止していた。良明がエレベーターの扉が閉じる直前に降りた。ゆみも、慌ててエレベーターを降りた。

NY恋物語・第59話

エレベーターが4階に到着した。
「それじゃ、頑張って良明のお母さんに言うんだよ」
ヒデキは、壊れたバレッタをゆみの手の中に握らせた。
「え、ヒデキ君たちは一緒に行かないの?」
ゆみは、ヒデキに聞いた。
「俺らは、野球するから行かないよ」
「ゆみちゃんは、絶対に行かないとだめだよ」
ヒデキが、ゆみに念押しして、降りていった。
「どうしよう?」

NY恋物語・第58話

「ゆみちゃんってドア開けてもらえちゃうんだ」
「さすが、長く住んでいるだけあるな」
ヒデキと椎名が話していた。
「良明君の家に遊びに行ってみてもいい?」
ゆみは、良明と話していた。良明は首を横に振った。
「そうよね、だめよね」
ゆみは、少し残念そうに答えた。
「エレベーター来たよ」
ヒデキが、ゆみたちを呼んだ。
ゆみは、良明の手を引いて、乗り込んだ。

NY恋物語・第57話

「椎名君の家ってこっちだった?」
3人は、同じアパートメントらしいが、椎名の家は反対方向だったはずだ。
「今日はヒデキの家に1回寄ってから、ヘンリーハドソンパークで野球する予定なんだ」
椎名は、ゆみに言った。
「ハロー」
ゆみは、自分家のアパートメントのエントランスに入ると、エントランスに立っていた黒人ドアマンが、ゆみの姿を見つけて、ドアを開けてくれた。

NY恋物語・第56話

「とりあえず行こう」
ヒデキは、ゆみの壊れたバレッタを片手に歩き出した。他の3人もヒデキの後について行く。
「良明のお母さんに言いつけような」
ヒデキは、ゆみにそう命じていたが、ゆみ自身は、そんなことはしたくないと思っていた。でも、みな同じ会社に勤める保護者がいて、同じアパートメントに住んでいると聞いて、少しだけ良明君の家に遊びに行ってみたいという気持ちにはなっていた。
「一緒のアパートメントに住んでいるの?」

NY恋物語・第55話

「良明のお母さんに言いに行きな」
「私、良明君の家知らないし」
ゆみは、ヒデキに言った。
「良明の家って、ゆみちゃんと同じアパートメントだよ」
「え、そうなの?」
ゆみは、ヒデキに聞き返した。
「そうだよ。俺らみな同じアパートメントだよ」
ヒデキのお父さんも、良明のお父さんも、ゆみの兄も同じ商事会社に勤めていた。

NY恋物語・第54話

「良明が壊したよな」
ヒデキと椎名が言った。
ゆみは、ヒデキたちと同じ5年の同級生ではあるが、飛び級により本来の学年よりも3年上に進級していた。3歳年下なので2人に決めつけられてしまうと反論しづらくなってしまう。
「これは、良明のお母さんに言って、弁償してもらった方がいい」
「え、そんなことはしなくても」
「いや、ちゃんと言わないとダメだ」

NY恋物語・第53話

「良明のやつが壊したな」
ヒデキが、ゆみに言った。
「別に、良明君が壊したわけじゃ」
「いや、良明が明らかに壊した」
ヒデキが決めつけていた。
「良明が壊したよな」
「まあ、良明が壊したといえば壊したかな」
椎名が、ヒデキに言った。

NY恋物語・第52話

良明の手が、ゆみの髪に当た理、髪に付けていた猫のバレッタが階段の下へと落ちていった。
「あ、バレッタが落ちちゃった」
ヒデキが走って、階段の下へ行くと、ゆみのバレッタを拾い上げた。
「壊れちゃっているよ」
ヒデキは、バレッタをゆみに見せた。ゆみのバレッタは、半分に割れてしまっていて、髪どめの部分が本体から外れてしまっていた。
「これ、お兄ちゃんが買ってくれたばかりだったのに」

NY恋物語・第51話

「日本人だし、日本語わかるし、手を離せよ」
ヒデキは、ゆみの手を良明から離すように言った。
「別に日本人でも仲良しだし、クラスメートだから手をつないでも良いでしょう」
「誤解するから、手を離せよ」
ヒデキは、ゆみの手を良明から離させようとした。
「え、ちょっと危ないったら」
ゆみと良明の手が離れた瞬間、良明の手が、ゆみの髪に触れた。

NY恋物語・第50話

「私、中国語が話せないのよ」
「中国語?」
ヒデキは、ゆみから良明が中国人だと聞いて笑い出した。
「良明は日本人だよ」
「ヨシュワキー君って日本人なの?」
「ヨシュワキーじゃないよ、良明、岡島良明」
ヒデキは、良明の名前をゆみに伝えた。
「名前が日本人じゃないの」
ゆみは、ヒデキから聞いて驚いていた。

NY恋物語・第49話

ゆみとヨシュワキーが廊下の階段を上がっていると、後ろから少年が2人、大声でお喋りしながら階段を駆け上がって、追い越していった。
「あれ、ゆみちゃん!」
少年たちは、階段の上から振り向いて、ゆみに声をかけた。ヒデキと椎名の2人だった。
「え、なんで、ゆみちゃんは良明と手をつないでいるの?」
ゆみに一方的に好意をよせているヒデキが聞いた。
「私たちクラスメートだもの」
ゆみは、良明とつないでいる手を仲良く振りながら答えた。
「なんで?」

NY恋物語・第48話

「ミスタールビンのところに行こう」
ゆみは、ヨシュワキーの手を引いて、ミスタールビンの教室に移動した。
「今日は、ミスタールビンも風邪でお休み」
ミスタールビンのアシスタント先生が、ゆみに伝えた。
「どうする、ヨシュワキー君も帰ろうか」
ゆみは、ヨシュワキーに言った。
「行くよ!」
ゆみは、ヨシュワキーの手を引いて、階段を上がっていった。

NY恋物語・第47話

「今日の5年生の午後の授業はありません、お休みになりました」
アスター先生が、皆のテーブルを周って、クラスの皆に伝えていた。
「ミスタールビンのクラスはあると思うから、ゆみはヨシュワキーを連れて行ったら、その後は家に帰っていいわ」
アスター先生は、ゆみに言った。
「それじゃ、私たちは先に帰ろうかな」
チェッカーをしている2人に伝えた。

NY恋物語・第46話

ランチタイムだった。
相変わらず、ヨシュワキーは、お弁当を持って来ていないのか、ランチタイムでも何も食べずに、ゆみの横に腰掛けているだけだった。
「マイケル、チェッカーやろうか」
食事を食べ終わって、シャロルはマイケルとボードゲームのチェッカーをやり始めていた。ゆみは、食事の後、自分の髪につけている猫のバレッタをいじりながら2人が遊んでいるチェッカーを眺めていた。

NY恋物語・第45話

そして、それからは、ゆみの言葉がヨシュワキーに伝わらなくても、ゆみがヨシュワキーの手を引いて、手話のように指図していても、クラスの誰も笑わなくなった。
「でも、変よね」
ゆみは、ヨシュワキーがチャイニーズとわかった後も、月曜と木曜の午後は、いつもミスタールビンのところに彼を連れていっていたのであった。ミスタールビンは、日本語で英語を教える先生なんだけどな。

NY恋物語・第44話

「ああ、チャイニーズね」
シャロルは、隆の話をゆみから聞いて、納得していた。
「アスター先生、ヨシュワキーはチャイニーズなんです」
マイケルも、アスター先生にジャパニーズでなくチャイニーズであることを説明してくれた。アスター先生は、チャイニーズだったかしらと少し疑問に感じたが、彼女自身もジャパニーズとチャイニーズはよく似ていて違いがよくわからないので、マイケルに返答出来ずじまいだった。
「チャイニーズでも良いじゃない、ヨシュワキーと仲良くしてあげなさい」

NY恋物語・第43話

「そうか!中国人だったのね!」
ゆみは、隆に聞いて、なるほどと思った。
「確かに、おまえの日本語は下手だけど、日本人なら通じないってことはないよ」
「そうか、そうよね!そういうことだったのね」
ゆみは、隆の見解に納得した。
「明日、シャロルにも話してみる」
ゆみは、マイケルに自分の日本語が下手と言われたのは悔しかった。
「彼は、チャイニーズだったのよ」

NY恋物語・第42話

「ヨシュワキー君っていうの、私の隣の席になったんだけど」
ゆみは、隆に学校であったことを話していた。
「私、もっとお兄ちゃんと日本語で話して、日本語をちゃんと勉強しておけばよかった」
「ぜんぜん通じなかったのか」
隆は、ゆみの日本語がぜんぜん通じなかったことを聞いて、思わず吹き出してしまっていた。
「でも、ヨシュワキーって名前からして、日本人ではなく中国人なのかもしれないな」

NY恋物語・第41話

「お兄ちゃん、うちのクラスに日本人の新入生が来たのよ」
ゆみは、夕食の時、隆に話していた。
「おう、だから、お兄ちゃんが言っただろう」
「え、新入生って女の子じゃないよ。男の子だよ」
「そうなのか」
「ヨシュワキー君って男の子なの」
ゆみは、隆に伝えた。

NY恋物語・第40話

「ゆみちゃん!」
ミスタールビンに良明をお願いして、クラスに戻ろうと歩き出したゆみは、教室の後ろの方から呼び止められた。
「あら、こんにちは」
ゆみは、ヒデキに挨拶した。ヒデキも、ミスタールビンの英語授業を受けていた。
「どうしたの?ゆみちゃんもミスタールビンの授業受けるの?」
「受けないわよ。うちのクラスの子と来ただけ」

NY恋物語・第39話

「ゆみ、久しぶりじゃないか」
ミスタールビンは、ゆみに日本語で言った。ミスタールビンは、大学で日本語を勉強していて、日本人と同じぐらい上手に、きれいな日本語を話せる先生だった。
「うちのクラスのヨシュワキー君です」
ゆみは、ミスタールビンに紹介した。ここPS24小学校では、日本から来たばかりの日本人生徒たちを集めて、ミスタールビンが英語の授業を行なっていた。

NY恋物語・第38話

「私たち、先に行っているね」
シャロルは、ゆみに言った。ゆみたちの午後の授業は音楽だった。ゆみは、良明をミスタールビンのところに連れて行かなければならないので、シャロルは、先に音楽室に向かった。
「これからミスタールビンのところに行くの」
ゆみは、良明に説明した。
「ミスタールビンは、私よりも日本語がすごく上手だから、話しやすいと思うよ」
ゆみは、良明に伝えた。

NY恋物語・第37話

「私のサンドウィッチ、半分食べる?」
ゆみは、自分の分のサンドウィッチを半分、良明に差し出したが、良明は、結局それも全く何も食べてくれなかった。
「ゆみ!」
アスター先生が、ゆみたちの座っているテーブルにやって来た。
「午後からの授業なんだけど、午後は、ヨシュワキーはミスタールビンの授業なので、ミスタールビンのところに連れて行ってあげてちょうだい」

NY恋物語・第36話

食堂には、机と椅子が用意されていて、生徒たちは、そこへ腰掛けてお昼ごはんを食べる。お昼ごはんは、給食ではなくて、生徒たちそれぞれが持参して来たお弁当を食べていた。お弁当は、紙袋にサンドウィッチと缶ジュースを入れている子が殆どだった。
「ごはんだよ」
ゆみも、自分の紙袋を開くと、中から持って来たサンドウィッチと小さな缶ジュースを出して食べは味めた。良明は、横の席に座ったままだ。
「ごはん持って来ていないの?」

NY恋物語・第35話

ランチタイムは、学校の地下にある食堂へ行って、そこで食事になるのだった。
「食堂に行くのよ」
どうせ、ゆみが話す日本語は良明には通じないのだ。いつの間にか、ゆみは、日本語で説明するというよりも、良明の手を引っ張って、移動させるようになっていた。
「マイケルじゃないけど、ゆみのそれって通訳じゃないね」
シャロルも、ゆみの通訳を笑っていた。

NY恋物語・第34話

「次はランチタイムです、教室の前に並んでください」
アスター先生は、皆に言った。午前の授業中、ずっとゆみは自分のルーズリーフを広げて、良明にも見せて、一生懸命、先生の話している授業の内容を説明していたのだったが、ゆみの日本語が通じないのか、良明はずっと黙ったままだった。
「ランチタイムよ。前に並ぼう」
ゆみは、良明の手を引っ張って、椅子から立たせた。
「ゆみ、その通訳ならば、日本語話せないけど、俺でも出来ると思う」
マイケルが笑いながら、ゆみに言った。