「ね、たぶん日本語の発音がおかしいのかもよ」
シャロルは、ゆみに言った。以前、ヒデキ君たち日本人とゆみが会話していた時に、ゆみの日本語の発音がおかしくて、ヒデキたち日本人に、ゆみの日本語が通じなかったことがあったことを思い出していた。
「そうかもしれない」
ゆみが、困ったようにシャロルの顔を見た。
「アスター先生!ゆみの日本語おかしくて全然通訳になっていません」
マイケルが手を上げて笑いながら、アスター先生に伝えた。
「ゆみも、あまり日本語得意じゃないから困ったわね」
アスター先生は、マイケルに苦笑した。
NY恋物語・第32話
「ヨシュワキー君、ここがあなたの席よ」
ゆみは、手で引っ張って椅子に座らせると、良明に言った。
「ここ、あなたの席」
ゆみが話しかけても、良明は黙ったままだった。
「ゆみ、ゆみの日本語通じていないんじゃないの」
親友のシャロルが、向かいの席からゆみに言った。
「私、ゆみ。ヨシュワキー君、こんにちは」
やはり、良明は何も言わず黙ったままだった。
NY恋物語・第31話
「えーと、なんて読むのかな?ヨシュワキー、ゆみの隣があなたの席」
アスター先生は、良明に伝えた。
「英語じゃ通じないか。ゆみ、日本語で説明してあげて」
アスター先生は、ゆみに命じた。
「こんにちは、あそこがあなたの席」
ゆみは、アスター先生に言われて、良明を自分の隣の席に案内した。
「こっちよ」
NY恋物語・第30話
「はーい。皆さん、授業を始めますよ」
アスター先生は、教室の入口に立つと、中にいる生徒たちに声をかけた。
「今日は、新しく仲間になる日本から来た新入生を紹介します」
アスター先生は、良明のことをクラスの生徒たちに紹介した。
「日本人同士、ゆみの隣の席にしましょうか」
アスター先生は、ゆみの隣の席のマイケルに言った。
「マイケルは、向かい側のシャロルの横に席を変わってちょうだい」
NY恋物語・第29話
アスター先生は、良明と一緒に教室へ移動していた。
「こんにちは、アスターといいます」
アスター先生は、良明に自己紹介したが、良明には通じなかったようだった。
「まだ日本から来たばかりで、英語じゃわからないか」
良明は、黙ったまま、アスター先生の後について歩いていた。
「うちのクラスには、日本人の女の子がいるのよ。席は、その子の隣にする予定だから、いろいろ学校のことは、彼女に聞いてね」
アスター先生は、英語では通じないとは思ったが、一応そんなことを歩きながら、良明に伝えていた。
NY恋物語・第28話
由香と末っ子の萌香は、担任の先生に中山先生も一緒に、教室へ向かうことになった。
「お母さんも、ご一緒に教室を見に行きますか?」
「お願いします」
岡島の奥さんは、中山先生と一緒に2人の教室へついて行くことになった。
「隆くんは、もうここまででいいわよ」
「いいんですか?」
「隆くんは、会社だってあるでしょう」
中山先生は、隆のことを解放してくれた。
NY恋物語・第27話
「うちのクラスに入るのは彼かな」
アスター先生は、中山先生に確認すると、良明のことを中山先生から引き継いだ。
「私も、ご一緒にクラスまで行きますか?」
「いらないわ。大丈夫よね」
アスター先生は、良明の顔を覗き込むと、良明を連れてクラスへ行ってしまった。
「こんにちは、行きましょうか」
ミラー先生は、美香にいうと、一緒に行ってしまった。
NY恋物語・第26話
「あ、隆くん」
中山先生は、この学校で学校事務の仕事している日本人だった。
「先生、今日から岡島さんのところの子が通うんですけど」
「ああ、そうだったわね。聞いているわ」
中山先生は、奥にいるミラー先生に声をかけて呼んだ。その手前にいたアスター先生にも声をかけた。
「あ、今日からの新入生よね。承りました」
アスター先生は、中山先生に返事した。
NY恋物語・第25話
隆は、学校に着くと、かつて知ったる学校なので、入口から中に入るとすぐ手前にある職員室に入って、中山先生の姿を探す。
「お、タカシ!元気ですか?」
「ハロー、ゆみがお世話になっています」
隆は、知ってる先生に出会って、挨拶をしていた。妹のゆみが通っている学校だし、ゆみは、この学校では優等生で有名なので、出会う先生、出会う先生に声をかけられ大変だった。
「あ、中山先生!」
NY恋物語・第24話
「それじゃ、行きましょうか」
隆の愛車、オールズモービルの助手席には、岡島さんの奥さんが座っていた。後部座席には、岡島さんの4人の子供たちが座っていた。
「学校って車で通うの?」
「歩いていけるから大丈夫だよ。今日だけは、俺が皆を学校まで送ったら、そのままマンハッタンの会社に出勤しなければならないから車で行くけど」
隆は、美香に伝えた。
「ゆっくりめに走るから、学校までの道を覚えておいてよ」
NY恋物語・第23話
「お兄ちゃんも、うちの学校へ一緒にくるの?」
「そうだな。10時ぐらいに行くけどな」
隆は、ゆみに答えた。
「10時?それじゃ、私は遅刻してしまうんだけど」
「ゆみは、時間になったら1人で行けばいいだろう」
「一緒に行けないの?」
「遅刻しちゃうだろう」
隆に言われて、ゆみは1人で学校へ出かけた。
「なんだ、つまらない」
「行ってらしゃい」
NY恋物語・第22話
月曜日の朝、朝食を食べ終わった後、隆はソファに座って、のんびりとテレビの朝のニュース番組を見ていた。ゆみは、朝食の後片付けをしながら、不思議に思っていた。
「片付け終わったのか」
「うん」
ゆみは、隆に答えた。
「お兄ちゃん、会社に行かないの?」
「今日は、岡島さんたちを学校へ案内してから、会社に出社するからゆっくりなんだ」
隆は、ゆみに説明した。
NY恋物語・第21話
「ゆみと同じ学校に通うんだぞ」
「そう」
「ゆみと同じクラスになるかもしれないぞ。ゆみも日本人の友達がほしいって言っていただろう」
「ならないよ、いつも日本人はロールパン先生のクラスだもの」
「わからないぞ、アスター先生のクラスかもしれないぞ」
「そうかな」
ゆみは、隆の言葉にもあまり期待していなかった。
「ゆみと一緒のクラスになるといいな」
NY恋物語・第20話
「岡島さんの家族は5年生の男の子と妹が3人いるんだ」
「そうなのね」
ゆみは、あまり興味なさそうに答えた。
「その妹のうち、1番上のお姉さんが、ゆみと同い年の3年生なんだ」
「私と同い年なの」
「そう」
隆は、ゆみに答えた。
「そして、彼女たちはPS24に通うんだぞ」
NY恋物語・第19話
「今日はさ、岡島さんのお迎えしてきたんだ」
「誰?私の知らない人」
ゆみは答えた。
「知らなくはないんだぞ。ゆみだって、小さい時には岡島さんにいっぱい抱っこしてもらって、俺がうまく食事させられない時、代わりにごはん食べさせてくれたんだぞ」
隆に言われても、ゆみは全然覚えていなかった。
NY恋物語・第18話
「ゆみの肉じゃが美味しいな」
隆は、夕食を食べながら、ゆみに話しかけた。
「良かった」
「おまえは会った事ないのに、お母さんの味と同じ味するんだよ」
隆は、妹の顔を覗きこみながら言った。
「最近、少しアメリカンっぽいけど、顔もお母さんにますます似てきた」
仕事から帰ってくると、姿だけは家に母親がいるみたいなのだ。
NY恋物語・第17話
「ただいま」
隆は、家に帰ると、待っている妹に声をかけた。
「お帰りなさい」
「お、今日は肉じゃがなのか?」
隆は、キッチンの鍋の中を覗き込みながら、妹に言った。
「うん、おばあちゃんが日本から送ってくれたじゃがいもで」
髪色も少し茶っぽく日本人離れしたアメリカンな感じの少女が、少したどたどしい発音の日本語で、隆に返事した。髪は染めているわけではない、こっちの生活が長く環境がそうしてしまっているのだった。
中古車輸出・第48話
「次はシャラン」
社長がシャランのことを指した。
「そうね。今、スリランカの近くのモルジブ島のバイヤーを進めているんだけど、何人かのバイヤーとは、話が進み始めたので、それを達成しようかなと」
「わかった。それで来月の目標値は?」
「そうね、70万ぐらいで」
「お前、ゆみより車の輸出は先輩だろう。ゆみが80万なのに、ゆみより下なのか」
「うーん、90で。いや80万にしたい」
中古車輸出・第47話
「1台だけで55万」
「1台で55万っていうのはけっこう良かったな」
社長も褒めてくれた。
「今月からは、月の売上げを報告した後で、その総括と来月の目標を言うようにしよう」
社長は、皆に提案した。
「まず、今井から来月の目標は?」
ゆみが返事に困っていると、社長が目標を決めてくれた。
「今月55万だったから倍、流石に倍は難しいか、それじゃ80万にしよう」
中古車輸出・第46話
「え、何をどう報告したらいいの?」
ゆみは、報告する内容がよくわからずにいた。
「ポルシェだろう?ポルシェとドイツまでの船賃でいくらもらったんだ?」
「え、180万」
「うん。それで粗利はどのぐらいだ?」
「粗利?よくわからない」
ゆみが言うと、会社の経理担当が代わりに計算し報告してくれた。
「55万ですかね」
中古車輸出・第45話
「次、今井も報告あるだろう」
営業担当者全員の報告が終わった後で、社長がゆみに声をかけた。。
「私?」
「あるだろう?」
「ドイツの海外バイヤーさんのこと?1台しか売れてないよ」
社長が、ゆみに頷いた。
「その売上げと粗利を皆の前で報告しろよ」
社長が命じた。
中古車輸出・第44話
「さあ、売上げ報告会議を始めるぞ」
部長が、会社の皆に声をかけた。今日は月末、月の最後の日なので、毎月、各自の売上げを報告する報告会議がある日だった。
「よし、シャランから発表するか」
「今月は170万で、粗利が40万ぐらいでした」
部長に言われて、シャランがまず最初に、自分の今月の売上げ金額とおおよその粗利を報告した。シャランに続いて、営業担当者たちが順番に自分の売上げを報告していく。
ヨット教室物語・第18話
佐藤麻美子のフォローもあり、今井隆の起業した会社は毎年、順調に売上げを伸ばしていき、今では従業員を5、60人ぐらい抱えるまでの中規模の会社にまで成長していた。
「温かい」
佐藤麻美子は、ヨットのキャビンでお湯を沸かして、コーヒーを飲んでいた。
「本当、温かいな。外が寒すぎるよな」
「そうでしょう!」
佐藤麻美子は、今井隆に同調した。
今井隆は、念願のマイボートでお茶をすすっていた。
ヨット教室物語・第17話
「もお!隆、本当に不器用よね」
佐藤麻美子は、書類作りに苦労している今井隆をみて言った。
今井隆は、いろいろ面白いアイデアは出すアイデアマンではあったが、役所に提出する際の会社の書面作りとかは不器用そのもので、大の苦手だった。そんな隆がパソコンで何度も書類を作り直している姿を見ていられなくなった佐藤麻美子も、就職した会社を退職して、隆の起業したIT会社に経理担当として転職したのだった。
「麻美子、本当に助かるよ」
ヨット教室物語・第16話
「隆の会社の起業は手伝ってあげたけど、その後は自分でやってね」
佐藤麻美子は、今井隆に伝えた。
佐藤麻美子自身は、特に自分が就職したその会社を辞める気は全くなく、最初の会社の起ち上げ時だけ今井隆の会社を手伝ってあげたつもりでいた。起業した後の会社経営については、
「隆1人で頑張ってね」
と、今井隆にも伝えていた。
「なんだよ、役所に提出する書面作りって難しいな」
ヨット教室物語・第15話
人気サイトのおかげで、今井隆は、せっかく就職できたその会社を辞めて、自分のIT会社を起ちあげた。
プログラミングなんて全くわからず、サイトの作り方も何もわからなかった今井隆だったが、会社の起業の仕方も何もわからなかった。
佐藤麻美子の父親は、東京の中目黒で輸入雑貨の会社を起業した自営業者で、アメリカのサンフランシスコに支店まで作り、単身赴任でアメリカへ移住していた。
その父親の姿を幼い頃からみてきた佐藤麻美子は、今井隆がIT会社を起ちあげる際、会社の起業を色々手伝ってあげた。
ヨット教室物語・第14話
佐藤麻美子の所属は総務部で、営業部に配属となった隆とは別の部署になった。
「インターネット上に、こんなサイトがあったら便利だろうな」
今井隆は、その会社で働いているときに思いついたサイトを具現化してみた。サイトなんて一度も作ったことがない、プログラミングのやり方なんて全くわからなかったが、わからないことはGoogleで検索しながら見よう見まねで作り上げた。出来上がったサイトは、ほかの人たちにも使っていて便利と思ってもらえる人気サイトになってしまったのだった。
ヨット教室物語・第13話
今井隆は、佐藤麻美子に薦められたその会社を受けてみた。すると、その会社に受かって、内定をもらうことができた。
「麻美子も、この会社に就職するんだろう」
「え、そうね・・」
佐藤麻美子は、実はその会社には行くつもりはなくて、別の内定をもらった会社へ行くつもりでいたのだが、今井隆にそう聞かれて、思わず頷いてしまい、結局その会社へ隆と一緒に入社することになってしまった。
ヨット教室物語・第12話
今井隆は、大学の就職活動中のとき、なかなか内定を取れず、就職先が見つからないでいた。
もうほとんどの同級生たちは、会社から内定の通知をもらっていた時期だった。もちろん、佐藤麻美子も、就職試験を受けた会社から既にいくつか内定をもらっていた。
そんな中の1社に、まだ新卒の求人を募集している会社があった。
「ね、この会社を受けてみたら」
佐藤麻美子は、今井隆にその会社を薦めてみた。
ヨット教室物語・第11話
佐藤麻美子は、特にヨットに興味があるわけではなかった。
大学時代からの同級生であった今井隆に、自分のヨットがやっと横浜のマリーナに輸入されてきたから一緒に見に行こうと誘われてついてきたのだった。
「このヨットの中で暮らせるんじゃないの」
「うん、暮らそうと思えば暮らせるよ、世界中どこでも行けるし」
今井隆は、佐藤麻美子に答えた。
中古車輸出・第43話
「もしかして、私が車の注文を取ってしまったの?」
「そうよ!ゆみちゃんの売上げよ」
シャランは少し興奮しながら、ゆみに言った。
「え、そうなの?どうしよう?どうしたら良いの?」
ゆみの方は、少し困惑していた。
「ゆみ!初注文じゃないか!」
それを聞いて、社長も興奮したような大きな声で、ゆみのことを褒めた。
中古車輸出・第42話
「ゆみちゃんじゃないの!」
シャランは、ゆみに大声で伝えた。
「え、私じゃないよ」
「ほら、プロフォーマインボイスの金額見てごらん」
シャランは、ゆみに見せた。
「これは、計算したら大体160万かなって計算してあげただけよ」
「だから今朝、会社の口座に160万が入金されたのよ!」
シャランに言われて、ゆみは啞然としていた。
中古車輸出・第41話
「どなたかしら?大きな金額の入金があったんだけど」
会社の経理から会社の口座に入金があったことを営業担当者たちに告げられた。
「そんな金額は覚えがない」
どの営業担当者たちも、金額に心当たりがなかった。
「ね、ゆみちゃんじゃないの?」
シャランが、ゆみに聞いた。
「知らない」
ゆみは、シャランに答えた。シャランは、ゆみがドイツの海外バイヤー宛に作ったプロフォーマインボイスを確認した。
ヨット教室物語・第10話
「私は、今日はたまたま隆のヨットがどんなヨットかなと思って、見に来ただけのことで、普段は別にヨットなんて乗りに来ないけど」
佐藤麻美子は、今井隆にそう返事した。
そう答えていた佐藤麻美子だったが、まさか、これから先ずっと毎週末のように、今井隆の趣味のヨットに付き合わされることになろうとは思ってもいなかった。
ヨット教室物語・第9話
普段から全くおしゃれなどしていない無頓着な今井隆が、これを機会に、鏡台でメイクとかして、少しは、おしゃれに目覚めてくれるのかなと佐藤麻美子は思っていた。
「え、俺は別におしゃれなんかしないけど、麻美子はメイクできる鏡台とか必要だろう?」
今井隆は、佐藤麻美子に聞いた。
ヨット教室物語・第8話
「トイレは、後ろ側のこっちにも付いているんだよ」
今井隆は、船の後ろの方の部屋に入って、そっちの部屋にあるトイレも佐藤麻美子に見せた。
「鏡台まで付いているじゃないの」
佐藤麻美子は、後部キャビンに入ると、ベッドの横に付いている鏡台に気づいた。
「隆が、メイクとかおしゃれするの?」
佐藤麻美子は、今井隆に聞いた。
ヨット教室物語・第7話
「ほら、ギャレーっていうんだけど、台所もちゃんと付いているから、麻美子が得意の料理を何でもここで作ることができるよ」
「私、別に料理は得意じゃないけど」
今井隆は、パイロットハウスの一段下に下がったところにある台所を佐藤麻美子に見せていた。
「こっちにはトイレも付いているから、海でトイレへ行きたくなっても大丈夫」
今井隆は、船の前方に付いているトイレルームを佐藤麻美子に見せた。
ヨット教室物語・第6話
ナウティキャット33には、デッキ中央部にパイロットハウスと呼ばれる四方を窓で囲まれている部屋があって、船内に操船用のステアリングがついていて、中でも操船できるようになっていた。
その四方についている窓の両サイドの一部が扉になっていて、その扉をガラガラと開くと、船内に入室できるように構成されていた。その船内へ入ってみると、
ヨット教室物語・第5話
今井隆は、ヨットのデッキ上、中央付近に付いているパイロットハウスの両サイドにある扉を開くと、そこから船内に入った。一方、今井隆の新しいヨットの周りに保管されているヨットのほとんどは、デッキ上の床に扉をスライドさせて開く入り口が付いていて、そこから船内に入れるようになっていた。
今井隆のヨットは、フィンランド製のナウティキャット造船所で建造されたヨットで、艇種を「ナウティキャット33」という33フィートのヨットモデルだった。
NY恋物語・第16話
「それでは、後はごゆっくり」
隆は、岡島さんの家族に挨拶した。
「帰ってしまうの?」
「うん、妹が家で待っているからね」
「そうか」
「ちなみに、俺も、このアパートメントの7階に住んでいるから」
隆が言った。
「何か困ったことあったら、すぐ呼んでください」
NY恋物語・第15話
「さあ、どうぞ」
隆は、岡島さんから預かっていた家の鍵でドアを開けると、岡島さんの家族を部屋に招き入れた。
「うわ、広い家!」
リビングやダイニングと順番に確認していく。
「ここが君たち女性陣の部屋かな、そっちが良明くんの部屋か」
隆が案内した。車から持ってきた荷物をそれぞれの部屋に入れた。
「お父さん、脱いだ服がそのまま、仕方ないね」
NY恋物語・第14話
「ほら、到着したよ」
隆は、車をアパートメントの駐車場に入れながら、言った。隆たちのアパートメントは、マンハッタン郊外のリバーデールという町に在った。
「ここが、私たちの新しい家?」
「そう、このアパートメントの14階の部屋が君たちの新しい家」
「そうなんですね」
「君たちのお父さんは、もうここに住んでいるよ」
「お父さん、先に住んでいたんだ」
NY恋物語・第13話
「え、それじゃ、ゆみちゃんってお父さんお母さんいないの」
「いないよ、俺だけ」
隆は、運転しながら美香に答えた。
「ごはんとかは、隆さんが作ってあげているの?」
「昔は作っていたけど、最近は、料理はゆみが作っている」
「そうなの」
「俺が会社で仕事して、ゆみが料理とかしている」
「すごい!」
美香は、隆の話を聞いて驚いていた。
NY恋物語・第12話
しかし、それまで進学する予定で、就職活動も一切していなかった、高校を卒業したばかりの隆には、そう簡単に就職先など見つかるはずもなかった。
「どうだろう、うちの総務部で働いてみないか」
そんな時に、声をかけてくれたのが父親と同じ商事会社のニューヨーク支店で働く岡島さんだった。当時、父親はニューヨーク支店の支店長を務めていた。そして、岡島さんがうまく話をつけてくれて、支店の総務部に配属してもらえたのだった。
「ありがとうございます」
NY恋物語・第11話
妹は、少し前に未熟児室から出てきたばかりの子だった。日本行きの長時間の飛行機に搭乗できるだけの体力も持ち合わせていず、帰国することはできなかった。
「アメリカは福祉がしっかりしているの」
日本の祖父母や親族は、隆に妹はアメリカの施設に預けて帰国しろと命じた。しかし、隆には、今や両親を失って、家族はまだ小さい妹1人しか残されていなかった。
「俺、進学はしない!こっちで仕事を見つけて妹を育てる」
隆は、祖父母や親族たちに自分の決意を伝えた。
NY恋物語・第10話
3月、ジャパニーズスクールに通う隆にとっては、高校卒業間近のことだった。高校を卒業したら、隆1人で帰国して、日本の大学への入学が決まっていた。
「隆は日本へ帰ってきなさい」
日本の祖父母や親族は、1人残された隆に提案していた。
「日本に帰国するなら妹も連れて行く」
隆は、祖父母や親族たちに伝えていた。
NY恋物語・第9話
退院の朝、病院のエントランスロビーに飛び込んできた大型トラックに巻き込まれて、隆たちの両親は亡くなってしまった。
「え、お父さん!お母さん!」
事故の時、たまたま妹を抱きかかえてエントランスのソファに腰掛けていた隆は、妹ともども事故には巻き込まれずに助かったのだった。
病院の職員たちが担架を抱えて、すぐに飛び出して救助してくれたのだったが、父と母は即死だった。
「うそでしょう、これからどうしたら良いんだよ」
隆は、幼い妹を抱えて呆然としていた。
NY恋物語・第8話
十年前、隆の母親は出産のため、ニュージャージー州の病院にいた。18歳、高校卒業間近の隆の歳が離れた妹が生まれようとしていたのだった。
「お母さんは大丈夫よ、大丈夫だから」
大学時代からの親友だった岡島さんが付き添ってくれていた。
少し難産ではあったが、妹のゆみは無事誕生した。しかし、未熟児で生まれた妹は、しばらく未熟児室から出ることはできなかった。それでも、ようやく未熟児室から出て、父親が迎えに来て、母子ともに退院となった。
NY恋物語・第7話
「良明は、日本では野球していたのよ」
「へえ、こちらにいる日本人の子同士でも、よく野球してますよ」
隆は、岡島の奥さんと話していた。
「本当に懐かしいわ」
岡島の奥さんは、助手席から運転している隆を見て話しかけた。
「あの当時は、本当にお世話になりました」
「ううん、元気そうで何よりだわ」
岡島の奥さんは、隆と話していた。
NY恋物語・第6話
隆は、駐車場の車に戻ると、岡島さんたちの荷物をトランクに入れた。
「良明も手伝いなさいよ」
「はい」
岡島さんの息子が、スーツケースを持ち上げてトランクに入れた。
「お、力持ちだね」
「いいえ」
「体つきも大きくて、スポーツとか得意そうだね」
隆は、良明のがっしりした肩を触りながら話しかけた。
NY恋物語・第5話
岡島さんの家族は、3人の女の子以外に、大きな男の子が1人いた。
「君が美香ちゃんか、うちの妹と同い年なんでしょう」
「そうよ」
岡島さんの奥さんが、隆に答えた。
「学校は、家の近くの公立小学校で良いんだよね」
「ええ」
「それなら、うちの妹と同じ学年のクラスに通うかもね」
「そうなんだ、それだと心強い」
美香は、隆に言った。
NY恋物語・第4話
岡島さんは会社の上司でもあるが、奥さんは隆の亡くなった母親の大学時代の仲の良かった同級生でもあった。
「ゆみちゃんは元気?」
「ええ、おかげさまで」
隆は、岡島さんの奥さんに返事した。
「隆さんよ」
岡島さんの奥さんは、自分の子供たちに隆を紹介した。
「こんにちは、もしかして美香ちゃん?」
「はい!」
3人いる女の子の中で1番大きい子が、隆に答えた。
NY恋物語・第3話
「隆くん」
隆は、ウェルカムボードを広げようとしている時に、背後から声をかけられて振り向いた。
「あ、岡島さん!ようこそ、ニューヨークへ」
隆は、岡島さんの奥さんに気づき、慌てて挨拶した。
「お久しぶり」
「このボード、せっかく作ってきたけど要らなかったですね」
「要らないわよ、隆くんのことはすぐわかったわ」
「俺もわかるとは思ったけど、あれから何年も経っていますし」
隆は、笑顔で岡島さんの奥さんに答えた。
NY恋物語・第2話
「やれやれ、なんとか間に合いそうだ」
今井隆は、オールズモービルを空港の駐車場に停めた。
「ラッキー!日本からの便は多少到着が遅れているじゃん」
隆は、空港の到着案内を確認していた。
「さてと」
隆は、バッグから『ウェルカム岡島様』と書かれたウェルカムボードを取り出すと、日本からの便が着く到着ロビーへと向かった。今日、日本からここに到着する岡島さん一家のお出迎えにやって来たのだった。
会社の上司の家族で、総務部に配属している隆にとって、転勤して来る社員家族のお出迎えやニューヨークでの生活を支えるのは大切な業務の一つだった。
明星学園・第47話
「もしゃもしゃ頭の佐伯先生、副担任で英語の塚本先生」
「何それって、ゆみから聞いたの?」
祥恵は、お母さんに質問した。
「ゆみちゃんは、あなたと違って学校であったことを全部ちゃんと話してくれますからね」
「そうか、これからは、ゆみを通して全部お母さんにバレるのか」
祥恵は、お母さんに言った。
「あなたが、そんなクラスのリーダー格だったなんて知らなかったわ」
明星学園・第46話
「あーあ、いい湯だった。ゆみは?」
祥恵は、お風呂から上がってお母さんに聞いた。
「もう9時過ぎてるわよ」
「そうか、もう寝たか」
祥恵は、時計を確認した。ゆみは、まだ身体がそんなに強くないので、夜は9時には寝てしまい、朝は7時過ぎに起きていた。
「あなた、ゆみと同じクラスになったの」
お母さんは、祥恵に聞いた。
明星学園・第45話
「まあ、ゆみの方がすぐ有名人にはなるだろうけど」
「ゆみちゃんも、お姉さんの遺伝子持ってそうだものね」
ジョーのお母さんが笑顔で答えた。
「そういう意味じゃなくて、中学生になっても、お母さんにごはん食べさせてもらってる甘えん坊として、すぐに中等部中の有名人よ」
祥恵は、目の前でお母さんに食べさせてもらってるゆみの姿をみて言った。
「ああ、学校ではお母さん一緒でないだろうから1人で食べられるわよね」
明星学園・第44話
「へえ、祥恵がね」
祥恵は、普段からお母さんに家ではあまり学校であったことを話さないので、ファミレスでお昼ごはんしながら、ジョーのお母さんから聞いて驚いていたのだった。
「小等部では祥恵さんは有名人、ヒーローだったわよね」
「それほどでも」
祥恵は、ジョーのお母さんに言われて少し照れていた。
「まあ、ゆみの方がすぐ有名人にはなるだろうけど」
祥恵は、目の前でお母さんに食べさせてもらってるゆみの姿をみて言った。
明星学園・第43話
「あなたって、クラスのリーダーだったの?」
お母さんは、祥恵に聞いた。
「リーダーではないけど」
「1組のクラス中から頼りにされてるものね」
ジョーのお母さんは、祥恵に言った。
「そうかな」
「1組の皆や後輩からも慕われているお姉さんよね」
「へえ、祥恵がね」
お母さんは、ジョーのお母さんから話を聞いて驚いていた。
明星学園・第42話
「もしかして、ゆみちゃんって祥ちゃんの妹さん」
「はい、そうです」
祥恵は、ジョーのお母さんに答えた。
「あら、そうなの。祥ちゃんってこんな可愛い妹さんがいたの」
「可愛いかな?まあ、可愛いのは可愛いかな」
祥恵は、ゆみの方をチラ見しながら、ジョーのお母さんに返事した。
「1組の学級委員、祥ちゃんの妹さんだったのね」
「私、学級委員はしたことないんだけど」
