「百合子ちゃんとは、明日だって会えるんでしょう」
お母さんは、祥恵も一緒に車で帰って欲しそうだった。
「わかったよ」
祥恵は、後ろのドアを開けると、ゆみにもっと奥へ移動しろと命令してから乗り込んだ。
「ジョー君のお母さん」
お母さんは、助手席のおばさんを祥恵に紹介した。
「知ってるよ。おばさん、こんにちは」
「こんにちは」
祥恵は、ジョーのお母さんに挨拶した。
明星学園・第40話
「祥恵ー!」
お母さんは、こっちにやって来る祥恵の姿を見つけて、大声で叫んだ。
「どうしたの?」
祥恵は、初めは無視しようと思ったが、あまりに大声なので渋々、母親の側に来た。
「あなたも、これから帰るの?」
「まあ、そうだけど」
「じゃ、乗りなさいよ」
「なんでよ、百合子たちと帰る予定だったんだけど」
明星学園・第39話
「お母さんは、ゆみちゃんのお母さんと一緒に帰って、途中でお昼ごはんするけど」
ジョーのお母さんは、ジョーに伝えた。
「そうなんだ」
「あんたも一緒に乗って、ゆみちゃんとお昼にしたら?」
「それも良いんだけどさ、先に小汀たちと吉祥寺でお昼する約束しているんだけど」
「あら、そうなの」
「なので、軍資金を」
ジョーのお母さんは苦笑しつつ、ジョーにお金を渡した。
明星学園・第38話
「お母さん!」
ゆみは、車にいるお母さんの姿が見えると、車までいきなり走り出した。
「終わったの?」
「うん!」
ゆみは、お母さんに頷いた。
「ジョー君、ゆみのことありがとうね」
「いえいえ」
車の助手席には、ジョー君のお母さんが座っていた。
「ゆみは、後ろに乗りなさい」
中古車輸出・第40話
「なんか面倒くさいな」
ゆみは、プロフォーマインボイスに車の金額とドイツまでの船賃、輸送料を記載してから、送金先である会社の銀行口座をスイフトコード付きで記載した。
「もう少し簡単に作成できたら良いのにな」
ゆみは、この時のプロフォーマインボイスが、クラウド上で金額とかを記載するだけで作成できたら便利なのにと思っていたので、CheapVehicleLandでは、クラウド上で作成できるプロフォーマインボイスを開発、導入したのでした。
中古車輸出・第39話
「見積書?」
シャランは、スリランカ人なので時々わからない日本語もあった。何か物を買う時に、いくらかわからないから営業の人に金額を教えてと聞くと、作ってもらえる書類とゆみが説明した。
「うーん、見積書で良いのかな?」
「正確には、プロフォーマインボイスと見積書は違うものだけど、まあ、そんなようなものだ」
シャランが返事に困っていると、奥の席から部長が教えてくれた。
ゆみは、シャランからプロフォーマインボイスのテンプレートファイルをもらって、ドイツの海外バイヤー用のものを作成した。
中古車輸出・第38話
「シャラン、プロフォーマインボイスってなに?」
ゆみは、シャランに質問した。ドイツの海外バイヤーが車を教えてくれてありがとう、良い車が日本市場にもあるので発注したいから、プロフォーマインボイスを送ってくれと返事して来たのだった。
「正式なインボイスの前に送る予備のインボイスのことよ」
「予備のインボイス?」
「それの価格とかを確認して注文しようか決めるの」
「見積書みたいなものね」
「見積書?」
今度は、シャランがゆみに質問した。
明星学園・第37話
「お母さん?」
祥恵は、ゆみに聞いた。
「お母さんが車でゆみちゃんのこと待っててくれてるんだよな」
ジョーが、ゆみに代わって祥恵に説明した。
「あんたね、帰りもお母さんに送ってもらうつもりなの」
祥恵は、中学生になっても甘えん坊のゆみに呆れていた。
「明日から大人になるよな」
ゆみは、ジョーに頷いて、一緒に教室を出て駐車場のお母さんのところに向かった。
明星学園・第36話
「私は佐伯といいます」
教壇に立った先生は、1組の生徒たちに自己紹介した。
「私が、君たち1組の担任になります。こちらが副担任の、英語の塚本先生です」
佐伯先生は、自分の横に立っている女の先生のことも紹介した。
「今日はここまで。明日からは普通に授業が始まるからな」
佐伯先生は、生徒たちにそう伝えると、副担任と教室を後にした。
「ゆみちゃん、お母さんが待っているよ」
ホームルームが終わると、ジョーがゆみの席にやって来た。
明星学園・第35話
祥恵は、小等部から普通に進級しているため、教室後方の方で小等部からずっと一緒の友達と大きな声でお喋りをしていた。
「お姉ちゃんってあんな大きな声でお話しするんだ」
ゆみは、姉が大きな声で話しているのに驚いていた。
教室の前の入り口から天然パーマがモシャモシャの先生が入ってきた。先生が入って来ると、今までお喋りしていた生徒は話をやめて、自分の席に戻った。
ジョー君の天然パーマは、上部に丸くモシャモシャだったが、先生の天然パーマは、ペタッと垂れ下がったモシャモシャだった。
明星学園・第34話
「あんたの席はこっち」
祥恵は1組の教室に入ると、窓側の1番前の方の席に向かった。大概、席はあいうえお順なので、今井のイで1番前の席になることが多かった。
「あんたはこっち」
「お姉ちゃんの後ろ?」
「祥恵のサに、ゆみのユだからでしょう」
「そうか」
ゆみは、祥恵のすぐ後ろの席に腰掛けた。まだ友達がクラスに誰もいないゆみは、席に座って周りを見渡していた。
明星学園・第33話
「ほら、教室に行くよ」
祥恵は、ゆみに言った。
「お母さんにクラス聞き忘れちゃったの」
「あんたは、私と同じ1組よ」
「ゆみちゃんも、俺らと同じ1組なの?」
「そうなのよ」
祥恵は、ジョーに答えた。
「お兄さんと同じクラスで良かった」
「そうだね、仲良くしような」
ジョーとゆみは話していた。
明星学園・第32話
「え、ジョーが連れてきてくれたの?」
祥恵は、ジョーにお礼を言った。
「祥恵に妹がいたなんて知らなかったよ」
「そう、実は妹がいたのよ」
「もしかして、飛び級で妹と同級生になってしまったとか」
「そうなのよ、お恥ずかしい」
「恥ずかしくないよ、自慢の妹じゃん」
ジョーは、祥恵に言った。
「そう、甘えん坊でぜんぜん自慢の妹じゃないけどね」
明星学園・第31話
「お姉ちゃん!」
ゆみは、廊下の向こうからやって来る祥恵の姿を発見した。
「あんた、一体どこにいたのよ?」
祥恵は、ゆみのことを怒っていた。
「式の会場のどこにもいないから心配したじゃないの」
「お母さんと一緒にいた」
「今日から中学生でしょうが、何をやっているのよ」
祥恵は、ゆみの頭を小突いた。
「ゆみちゃんって祥恵の妹なの?」
明星学園・第30話
「階段が多いね」
ジョーは、背の低いゆみが小さい足で校舎の階段を上るのをみた。
「1番手前の教室が4組、1番奥が1組」
「そうなんだ、全部で4組までなの」
ゆみは、ジョーの説明を聞いていた。
「4組の誰かに聞いてみようか」
「うん」
ジョーが4組の教室を覗き込んでいると、
「ゆみ!」
明星学園・第29話
「教室の場所わからないんでしょう、一緒に行こう」
ジョーが差し出した手をもう1回ゆみは握った。
「お母さんのところに行って、私のクラス聞いてくる」
「いいよ、教室に行って他の誰かに聞こう」
ジョーは、ゆみに言った。
「どうして親切にしてくれるの?」
「だって、俺たち同級生だろう」
「うん」
ゆみは、嬉しそうにジョーの手を握りしめた。
明星学園・第28話
「ゆみちゃんも1組なの?」
ジョーは、歩きながらゆみに質問した。
「わからない、お母さんに聞いてないもん」
「小さいけど、中学生になったんだから自分でもわかっていなきゃ」
ジョーは、ゆみに言った。
「俺とゆみちゃんは同級生だろう」
ゆみは、ジョーに言われて慌ててジョーの手を離して、1人で先頭を歩き出した。
「え、どっち?」
明星学園・第27話
「ホームルーム始まってしまうから行こう」
ジョーは、ゆみに話しかけた。
「ほら、お兄さんと一緒に行ってきなさい」
「お母さん、帰ってしまうの?」
「お母さん、車の中で待っていてあげるから」
「ぜったい待っていてね」
ゆみは、お母さんの手を離して、優しそうなお兄さんの手を掴んだ。
「よし、行こう!」
ジョーは、ゆみと歩き出した。
明星学園・第26話
「あんたさ、ゆみちゃんと一緒に教室へ連れていってあげてよ」
おばさんは、息子のジョーに言った。
「ゆみちゃん、飛び級で進級してすごいのよ」
「飛び級?」
「勉強ができるから、学年飛びこえて中学生へ進級しちゃったのよ」
「へえー」
ジョーは、お母さんの後ろに隠れて小さくなっているゆみの姿を覗きこんだ。
明星学園・第25話
「あら、お嬢さんかと思ったわ」
お母さんは、髪がフワッとした少年の顔を覗き込んで驚いた。
「おジョーさんで正しいわよね」
おばさんは、自分の息子の頭を撫でながら、お母さんに答えた。
「名前がジョーだものね、斎藤ジョー」
「ジョー君っていうのね」
お母さんは、おばさんの息子、少年に挨拶した。
「今井といいます」
明星学園・第24話
「ジョー」
隣の席だったおばさんが、職員室の中へ入っていく生徒に声をかけた。
「あ、お母さん」
職員室のコピー機でコピーを取ろうとしていた生徒が、後ろから呼びかけられて振り向いた。髪がもしゃもしゃ、フワッと天然パーマに広がった少年だった。
「あんた、何組だったっけ」
少年は、1組と母親に返事した。
明星学園・第23話
お母さんも、隣の仲良くなったおばさんと席を立ち、体育館を後にした。
「あなたは、教室に行かないと」
お母さんが新入生たちとではなく、お母さんと一緒に体育館を後にしたゆみに言った。
「お母さんは?」
「お母さんは、もう帰るわよ」
「それじゃ、私も一緒に帰る」
「だめよ、それじゃ授業をサボることになるわよ」
お母さんは、ゆみに言った。
明星学園・第22話
「ほら、式が終わってしまったわよ」
お母さんは、ゆみに言った。結局、ゆみは式の間ずっと新入生の席ではなく、お母さんの横で式の進行をずっと聞いていたのだった。
「まずは、新入生から退席してください」
体育館に流れている放送で、前の席に座っていた新入生たちが体育館を後にした。この後、新入生たちは、教室でクラスミーティングがあるから、教室で待機するようにとアナウンスされていた。
新入生の後は、父兄席の両親たちが席を立った。
中古車輸出・第37話
「ゆみ、お返事ありがとう」
ゆみは、ドイツの海外バイヤーさんからのメール内容を確認した。80年代ぐらいの古いベンツやポルシェの車がほしいのだけど、そちらの市場にあるだろうか。もしあるのならば、まずはポルシェで取引を始めたいという内容だった。
ゆみは、早速中古車オークション会場のサイトにログインすると、ポルシェの車を検索してみた。それなりに、けっこう日本の市場にもポルシェの車ってたくさんあるじゃないの。見つけた車を何台かドイツの海外バイヤーさん宛にメールで教えてあげた。
中古車輸出・第36話
「ドイツからポルシェ欲しいって日本に言わないよ」
シャランは、ゆみに言った。
「そうなのかな?」
でも、いつもお返事はアフリカとかの人ばかりだったから、ゆみとしては、なんかヨーロッパの人と話してみたくなった。そして、ドイツの海外バイヤーさんにお返事を書いてみたのだった。
「ゆみ、お返事ありがとう」
次の日、ドイツの海外バイヤーさんからゆみ宛にお返事が返ってきていた。
中古車輸出・第35話
そして、社長の予想通り、ゆみの初注文が取れる日は近かった。
「え、ポルシェが欲しいってヨーロッパの海外バイヤーさん」
ゆみは、その日のオファーメールの内容を確認していて思った。いつも、オファーメールはアフリカや中東アジア、カリブ諸島など南米から来るものが多かった。
「ドイツ、ヨーロッパから来るオファーメールなんて初めて見た」
「そんなの無視しておきなよ」
シャランは、ゆみにアドバイスした。
「どうして?」
「だってポルシェってドイツ製の車だよ」
中古車輸出・第34話
「でも、換金できるかもしれないし手続きしてみるか」
社長は、ゆみに聞いた。
「え、やっぱ辞めておく」
「換金できるかの手続きぐらいしてみても良いぞ」
社長に言ってもらえたが、ゆみは断った。
「頑張ってもっとちゃんとした海外バイヤーから注文もらう」
「そうか、それならばそうしてみなさい」
社長は、ゆみに言った。
「今井なら、後もう少しできっと車の注文取れるさ」
明星学園・第21話
「あら、中学1年生なの?優秀なのね」
おばさんは、お母さんからゆみが飛び級で進級したという話を聞いて、ゆみのことを褒めてくれた。
「だから、あなたの席は新入生、前の席なのよ」
お母さんは、再度ゆみに告げた。
「ちょっと怖いわよね、背の大きいお兄さんお姉さんばかりだものね」
新入生たちより背の低いゆみのことを優しくフォローしてくれた。
お母さんは、ゆみの頭を撫でた。
明星学園・第20話
「お姉さんが入学式なの?」
お母さんの隣に座っていたおばさんに、ゆみは質問された。
「お姉ちゃんもだけど、あなたも入学式よね」
お母さんの横でモジモジしていたゆみの代わりに、お母さんがおばさんに答えていた。
「あら、中学生なの?」
「そうよね」
お母さんは、隣のおばさんと仲良くなって、ゆみのことや祥恵のことをお喋りしていた。
明星学園・第19話
「あなた、前の席よ」
お母さんは、父兄席の後ろの方に空いている席を見つけ、そこへ腰掛けると、ゆみに言った。ゆみは、生徒席には行かずに、お母さんの横の空いている席に腰掛けた。
「あなたは、前の席だって」
お母さんは、ゆみに言ったが、ゆみは首を横に振って、お母さんの腕をしっかり掴んだまま、横に座り続けていた。
「あらあら、しょうがない子ね」
明星学園・第18話
「ほら、着いたわよ」
やっぱり、いつもお姉ちゃんと電車で通っているのと違い、車だと歩かずに学校までいけるので、通学が早くて楽だった。お母さんの朝は忙しいので、出発が遅くなってしまって、中等部の入学式はもう既に始まっていた。
「体育館でやっているみたいよ」
お母さんは、車を停めると、ゆみの手を引いて体育館の中へ入る。最前列で校長先生たちが話し、その前方に生徒たち、その後ろ側が父兄席だった。
明星学園・第17話
「あれ、お姉ちゃんは?」
「ゆみは、お母さんと一緒に行きましょう」
「お母さんと学校に行くの?」
ゆみは嬉しそうに、お母さんの小さな赤いベンツの助手席に腰掛けていた。
「ゆみは入学式にスカートはかないでいいの?」
「うん」
ゆみは、紺色の裾などに赤チェックの柄が入った可愛いオーバーオールを着ていた。
明星学園・第16話
「あんた、ゆみがまだ部屋にいるじゃないの」
「お母さんが連れてきてよ」
祥恵は、もう中学生なんだし母親が入学式について来なくても良いと言ったのだが、お母さんは、ゆみの晴れ姿を見に行くのだと言い張ったのだった。
「行ってきまーす!」
祥恵は一人で出かけてしまった。
「仕方ないわね、ゆみはお母さんと一緒に行くか」
どこか嬉しそうに、お母さんは呟いていた。
明星学園・第15話
武蔵野に在る明星学園は、小学校、中学校そして高等学校がぜんぶ揃った小中高一貫教育の学園である。中等部、高等部でいちいち1年生へ戻らずに7年、8年と続いていき10年、11年、12年と進級、卒業となっていく。
「今日から7年生だね」
祥恵は、リボンの付いた白いブラウスに制服風のチェックのプリーツスカートを着て、学校へ出かけるため玄関先で靴を履いていた。
「行ってきまーす」
明星学園・第14話
「彼女は、小学校で習う勉強はぜんぶ理解してしまっています」
進級会議の時、ゆみの担任の先生は他の教師たちに説明した。担任ではないが、ゆみに別の教科を教えたことのある先生も、確かに彼女の勉強の進捗は早くて小学校で習うことはもう改めて勉強する必要はないかもしれないと担任の先生に同調した。
「それでは、中等部への進級で宜しいですね」
そして、ゆみは1年から2年ではなく中等部1年つまり7年生への進級が決まった。
明星学園・第13話
「ゆみ、中学生の記念にお母さんと写真撮らない?」
「写真は良いけど、それは着ないよ」
ゆみは、お母さんが手に持っている赤いチェックのプリーツスカートを指差した。ニューヨークにいた頃に、お母さんがデパートで勝手に買ってきた唯一のゆみのスカートだった。
「中学生になっても、スカートはかないの?お姉ちゃんだってスカートはいているじゃないの、もうずっと大人になってもスカートはかないつもり?」
お母さんは、祥恵のはいているグリーンのデニムスカートを指差しながら聞いた。
明星学園・第12話
「祥恵、このスカート可愛くない」
お母さんは、学生服の広告チラシを見ながら、祥恵に声をかけた。
「うちの学校は、制服は無いんだけど」
「制服無くても良いじゃない、中学生なんだから入学式の時ぐらい制服っぽいの着ても」
お母さんが祥恵に答えた。
「ゆみだって中学生なんだから、ゆみに着せれば良いんじゃないの」
「あの子は、昔からスカートは、絶対にはかないのよ」
お母さんは、残念そうに呟いた。アメリカで育ったせいか、小さい頃からどんなに言っても、ゆみはスカートをはくのを嫌っていた。
明星学園・第11話
「ゆみさん、勉強はできるので飛び級になります」
1年が過ぎて、2年生へ進級するとき、母親は担任の先生からそう伝えられた。
「飛び級?なんだよ、それは?」
実家がニューヨークの母親は、アメリカでは飛び級など珍しくもなかったが、祖父の代からずっと東松原の歯科医院の父親には、飛び級なんて制度は聞いたこともなかった。明星学園は、日本に在りながらアメリカ的な自由教育が学校のポリシーなので、飛び級制度もどんどん取り入れていた。といっても、ゆみが初の飛び級生だった。
明星学園・第10話
「ゆみさん、大丈夫ですかね?」
クラスの子たちにイジメられているゆみのことを心配した担任の先生は、母親にも相談した。母親も、ゆみのことを気遣い、別のインターナショナルスクールにでも転校させるかと父親に相談したら、近所の公立小学校に通わせた方が良いんじゃないかと言う返答だった。
「別の学校に転校する?」
母親は、ゆみに聞いてみたが、ゆみは転校を嫌がった。クラスでは仲間はずれの一人ぼっちだったかもしれないが、大好きな姉と別々の学校になるのはぜったい嫌だった。
明星学園・第9話
「ハロー、ユミ。日本語ワカリマスカ」
男の子が笑いながら、ゆみへ外国人風に話しかけてみせて、クラスの皆が笑っていた。こいつ、日本人のくせに、日本語がわからないの。なんか日本語の発音も変だしな、クラスの子たちは、ゆみの話す日本語を笑うようになっていた。
「日本人じゃないんじゃないの。ゆみでなくユミーだ!アメリカン人のユミー!」
クラスの子たち皆から笑われ、おちょくられてイジメられるようになってしまっていた。
明星学園・第8話
教室にいる他の子たちだって、ゆみと同じ今日から1年生の初めて会った子たちばかりのはずなのに、もうクラスの子同士仲良くなって、いまテレビで流行っている番組の話などいろいろお喋りをしていた。それまでずっとニューヨークで暮らしていたゆみには、いま流行っている日本のテレビ番組なんか何も知らなかった。それより何よりも、ニューヨークでは、家にいたおじいちゃんやおばあちゃんとも殆どずっと英語で会話していて、日本語はたまにしか話していなかったので、皆の会話の内容がよくわからなかった。
「もっと、向こうでも日本語で話してればよかった」
明星学園・第7話
「私もお姉ちゃんと一緒のクラスでいいわ」
「一緒のクラスでいいわじゃないの、あんたは1年、私は6年生」
祥恵は、妹に説明した。
「嫌だ!お姉ちゃんと一緒がいい!」
「わがまま言わないの!早く自分の席に着きなさい!」
ゆみは、姉に言われて教室の一番手前奥にある今井と書かれた席に腰掛けた。きっと、お母さんだったらお母さんと同じ教室で勉強させてくれたことだろう。でも、姉は、ゆみの言うことをちっとも聞いてくれそうもなかった。
明星学園・第6話
ゆみは、姉に手を引かれながら歩いていた。ゆみたちの歩いていくのと同じ方向には、他にもたくさんの生徒たちが歩いていたが、祥恵と仲が良いクラスメートたちとは一緒になることはなかった。彼女たちは皆、井の頭公園駅でなく吉祥寺駅方面から通っていたのだ。
「ここが学校よ」
祥恵は、妹の手を引き、学校の門をくぐると1年生の教室に連れて行った。
「お姉ちゃんと一緒のクラスがいいな」
明星学園・第5話
「向こうに行ってみたい」
ゆみは、井の頭公園駅で降りると、手を引かれている姉に言った。井の頭公園駅の改札口を出ると、すぐ真横に公園に入るゲートがあった。ゲートをくぐると、大きな池があり、さらに奥には動物園もあった。
「遊びに来たんじゃないんだから、学校はこっちの道よ」
祥恵は、妹の手を引き、公園には入らずに学校方面への道を歩いていく。
明星学園・第4話
「お嬢さん、ここにお座りなさい」
親切なお姉さんが、ゆみのために座席を譲ってくれた。
祥恵は、座席を譲ってくれたお姉さんにお礼を言った。永福町の駅で急行電車の待ち合わせをしたため、車内はかなり空いたが、高井戸、富士見ヶ丘から立教女学院の生徒たちがたくさん乗ってきて、また車内は激混みになった。立教女学院の生徒たちは三鷹台の駅で降りたのだが、それでも吉祥寺駅までの通勤客で車内はまだ激混みだった。
「次、降りるからね」
祥恵は、鈍くさい妹に伝えた。
明星学園・第3話
「ここから電車に乗るの?」
ゆみは、姉に手を引かれながら、質問した。
「そうよ、東松原の駅から学校の近くの井の頭公園駅まで井の頭線で通うの」
祥恵は、妹に説明した。吉祥寺行きの各駅停車がやって来て、祥恵は妹の手を引いて乗りこむ。各駅停車だというのに車内は、ちょうど通勤時間で満員だった。
「つぶれちゃうよ」
「大丈夫だから、お姉ちゃんにちゃんと捕まってなさい」
祥恵は、妹の体を自分の腕で抱きかかえながら言った。
明星学園・第2話
「ゆみ、フラフラ歩いてんじゃないのよ」
祥恵は、妹の手を掴むと一緒に歩きながら、妹に注意した。
「この子、大丈夫かな」
ゆみは、短い足で道路をフラフラ歩いているし、自分よりも大きなバッグ抱えて揺れてるし、何よりも何をするにも動作が鈍くさい。
「通学路を覚えるまでどころか、ずっと1人でなんて通学できそうもないんだけど」
祥恵は、妹の手を引きながら考えていた。
ヨット教室物語・第4話
佐藤麻美子は、今井隆が立てかけた脚立を普通に登ると、デッキに付いているライフラインを飛び越えて今井隆のヨットの上に上がった。
「普通に上がれるじゃん」
「上がれるわよ。スカートなんて、小さい時以外、私一度もはいたことないし」
「そういえばそうだよな。麻美子は色気ないものな、俺も麻美子がスカートはいてるの見たことないわ」
「早く中に入ろう」
佐藤麻美子は、寒さで今井隆の言葉など聞いていなかった。
ヨット教室物語・第3話
「中に入ってみるか?」
「ええ、寒いから中に入ろう」
佐藤麻美子は、今井隆の言葉に嬉しそうに頷いていた。
佐藤麻美子は、今井隆の言う中とは、マリーナの建物の中のことだと思っていた。が、今井隆は、自分のフィンランドで出来上がったばかりのヨットの船体に、脚立を立てかけると脚立を登り始めた。
「麻美子、上に上がれる?スカートだし上に上がれないか」
「大丈夫よ。スカートなんてはいてないから」
ロングコートの下の足を開いてパンツを見せた。
中古車輸出・第33話
「詐欺だとは思うけどな」
社長は、ゆみに言った。
「この書き留めも?」
「ああ、偽物の書き留めだろう、恐らく換金もできない」
そうなのね、ゆみは手紙を自分のデスクのゴミ箱に捨てた。
「万が一、換金できるかもしれないから換金手続きしてみるか」
「換金できたらトラック200台仕入れて輸出するの?」
「うまく200台仕入れられたとしても、犯罪に使われる車に貢献することになるかもしれない」
社長は、ゆみに警告した。
中古車輸出・第32話
今井ゆみは、社長から会社に届いた手紙を手渡された。
「え、何これ」
ゆみは、社長から手渡された手紙の封筒を開けると、中身を確認した。丁寧なメールをありがとうと書かれていて、日野レンジャーのトラックを200台順番に送ってほしいと記載されており、手紙と一緒に途轍もない金額が記載された書き留めが同封されていた。
「確かに、私がイランからのオファーメールに返信したけど、全く何も返事をもらえなかったから駄目だったんだなと思って忘れていたんだけど」
中古車輸出・第31話
「なかなか車の注文取れないな」
月末の売上げ報告会議の時、今井ゆみは社長に言われてしまった。このままでは、本当にうちの会社のサイトから来るオファーメールはいたずらやスパムメールばかりってことになってしまうなと冗談交じりに社長はゆみに言った。
「来月こそ絶対1台は車の注文取ります!」
「よし、頑張れ」
ゆみは、悔しくて思わず報告会議で社長に宣言してしまっていた。
中古車輸出・第30話
今井ゆみは、イランの海外バイヤーにはけっこう丁寧に自己紹介も入れて返信してあげていたつもりだったのだが、なぜか何も返事をもらえなかった。
「トラックの大量注文だものね」
さすがに大型注文だったし、中古車輸出業の素人営業担当じゃ相手にもされなかったか。その後も毎日のように、営業担当者たちに振り分けるだけでなく、自分でも届いたオファーメール宛に返信し続けて、お返事が返ってくると、その海外バイヤーにはさらに返信を書いて、メールのやり取りを続けてはいたのだが、いずれも車の受注までには届かなかった。
中古車輸出・第29話
今井ゆみは、中古車オークション会場にログインすると今度は「日野レンジャー」で検索してみる。中古車オークション会場の使い方にもだいぶ慣れてきていた。日野レンジャーの落札相場も確認し、古いものから新しいものまで豊富に揃っていることも確認できた。
「うん、いいトラックいっぱいある」
今井ゆみは、イランの海外バイヤーにそのことを伝えてあげた。2015年ぐらいのものからいくらでも揃っているから送ってあげられるよ。
中古車輸出・第28話
アフリカの海外バイヤーで、ハイルーフのハイエースコミューターがほしいと望んでくるバイヤーは、大概そのバスを使ってタクシー、乗り合いバスを始めたいという人が多いようだ。
今井ゆみは、タンザニアの海外バイヤーとはそんな会話を長々といろいろお喋りを続けて、けっこう感触は良い感じだったのだが、車の受注に至るまでにはいかずメールは途切れてしまった。
「残り1件はイランの人か」
今井ゆみは、イランから届いたオファーメールの内容を確認した。建設会社と取引している人なのだろうjか、日野自動車の日野レンジャーというトラックを現場で大量に必要としているという依頼だった。
中古車輸出・第27話
ハイエースには何種類か種類があって、普通に後部座席があるもの、後部が全て荷物入れになっているもの、車椅子などが乗れるようになっているもの、座席数が18人分あるバスタイプのものがある。
特にアフリカでは、この18人分の座席があるハイエースコミューターというものが人気がある。よく田舎で見かける路線バスより車体の小さいコミュニティーバスのことだ。特に天井が高く盛り上がっているハイルーフというタイプのものが好まれる。海外バイヤーからハイエースと言われたら、ハイルーフのハイエースコミューターで探すと話が早い。
中古車輸出・第26話
「このハイエースは18人乗れるのか」
今井ゆみが返答すると、タンザニアの海外バイヤーからさらに質問がきた。確かに後部は広い荷物入れになっているけど18人も乗れるのかな、乗れても椅子がないから乗るの大変じゃないかな。
「シャラン、ここに18人も乗れる?」
今井ゆみは、シャランに自分が海外バイヤーに送った写真を見せながら聞いた。そんなところに人が乗れるわけないじゃないの、18人乗れるハイエースはハイエースコミューターっていうハイエースよ。
中古車輸出・第25話
「タンザニアさんは車の注文ちょうだいね」
今井ゆみは、前にパキスタンからのオファーメールの時に、シャランに聞いた返信の書き方を思い出しながら、自分のこと、会社の自己紹介から順番に返信文を書いていた。
「今度の車はハイエースか」
今井ゆみは、また中古車オークション会場のサイトにログインすると、ハイエースの落札相場を確認した。ハイエースってすごく高い車からけっこう安い車までいろいろあるのね。前回は、パキスタンの人に安く安く言われて、お返事ももらえなくなってしまったし、高くない方のハイエースで話を進めた方がいいわよね。
中古車輸出・第24話
今井ゆみに返事をくれた残りの2人、1人はタンザニアの海外バイヤーだった。タンザニアは、アフリカ大陸の右下辺りにある国だ。アフリカの国は、日本から世界へ輸出されている中古車の国の中で最もポピュラーな国の一つだった。
「この国ならば、楽勝で受注できるわよね」
タンザニアやケニアなどアフリカの国々は、月末にいつも開催されている売上げ報告会議でも、シャランを始め、どの営業担当者も必ずといって良いぐらい輸出先として報告されている国だった。この国ならば、さすがにウェブデザイナーの仕事しかしていない今井ゆみでも車1台ぐらいの注文ならば取れるだろう。
中古車輸出・第23話
「少し高くないか」
今井ゆみが見積もった金額をパキスタンの海外バイヤーに提出すると、パキスタンの海外バイヤーからは返答がきた。そうね、それじゃと今井ゆみは7500円だけ提示した金額より引いて再提出してあげた。うちの会社だっていろいろ経費も掛かっているのだし、これ以上はさすがに無理よと一言つけ加えて返答すると、その先は何も返答が無くなってしまった。
社長は、今井ゆみの方針に納得してくれた。
