中古車輸出・第73話

「あと、アフリカのランドクルーザーも落札するんでしょう」
シャランは、ゆみに聞いた。
「うん、海外バイヤーにどの車にするか聞いているところ」
「そうか、入札するのはその後か」
「うん」
ゆみは、シャランに答えた。
「すみません、面接に来ました」
会社の入り口に背の高い白人が立っていた。

中古車輸出・第72話

「そうか、福岡の会場で落札したから福岡の港に陸送するのね」
ゆみは、シャランに頷いた。
「うん、大阪会場なら大阪港、名古屋会場なら名古屋港みたいに」
「なるほどね、北海道なら北海道港、沖縄会場なら沖縄港ね」
「北海道とか沖縄だと船が直接出ていなかったりするから東北とか九州まで持ってくることもあるのよ」
「あ、船が出航しない港もあるのか」
「そう、新潟会場なんかも横浜港まで陸送したりするわ」
「なるほど、落札した会場と輸出先の国への船が出航する港と合わせて、陸送する港は考えるのね」

中古車輸出・第71話

「シャラン、これで大丈夫よね」
ゆみは、初めて書いた陸送申込書の内容をシャランに見せた。
「うん、大丈夫じゃない。え、待って」
シャランは、経理担当の方に振り返った。
「伊馬さん、船は横浜から出すんですか?」
「ううん、福岡港よ」
「ですよね。だったら横浜港でなく福岡港に陸送しなきゃ。福岡で落札した車は、福岡の1番近い港から出す方が経費も効率も良いのよ」

中古車輸出・第70話

「落札するの早くない?」
「本当に落札さrているわ。福岡のローカルなオークション会場ね」
経理担当は、オークション会場からファックスされてきた落札通知の用紙を、シャランの方に見せながら答えた。ゆみには、陸送用の申込書を手渡した。
「今回、福岡から出すからアトラスさんに依頼するから、船のブッキングはこちらでやるわ。だから、オークション会場から港までの陸送を依頼してちょうだい」
ゆみは、経理担当に命じられた。

中古車輸出・第69話

「ゆみちゃん、またオークション会場で落札しなきゃ」
「うん、ミキサー車はいっぱい扱っているところ見つけたの」
ゆみは、シャランに答えた。
「じゃ、いまオークション用パソコン空いているからやってきな」
シャランに言われて、ゆみはオークション用に使っているパソコンのところに移動すると、そこでミャンマー向けのミキサー車を落札して戻ってきた。
「え、もう落札したの?」
「うん」
ゆみは、シャランに頷いた。

中古車輸出・第68話

「モーリシャスなら180万なんだけど」
「ゆみちゃんじゃないの!」
シャランが、ゆみに言った。
「また入金あったのか、なんか海外バイヤーとのやり取りにすっかり慣れてきたんじゃないか」
社長が、ゆみに言った。
「うん、なんか最近は、海外バイヤーも皆、割とすぐお返事くれるの」
「そうか、返事の書き方に慣れてきた証拠だな」
社長は、ゆみの進歩に満足そうだった。

中古車輸出・第67話

「180万の入金待っている人いないの?」
経理担当が、再度みなに聞いた。
「さあ、知らない」
誰も心当たりのある営業担当はいなかった。
「ね、ゆみちゃんじゃないの?」
シャランが、ゆみに聞いた。ゆみは、首を横に振った。
「もう1回確認してみな」
「あ、私かな?モーリシャスの人かな?」
ゆみが、シャランに答えた。

中古車輸出・第66話

「後ね、シャランか誰かで入金を待っている人いない?」
経理担当は、営業担当全員に聞いた。
「いや、今のところは誰も待っていないかな」
「私も、モルジブからはまだもう少し入金までに掛かるかな」
「70万ですかね?」
それぞれ営業担当者たちが経理に返事した。
「70万ではないわね、180万よ」
経理担当が答えた。

中古車輸出・第65話

「ゆみちゃん、入金あったわよ」
朝、ゆみが会社に出社すると、経理担当から報告があった。
「220万の入金。ゆみちゃんでしょう?」
「そうかもしれない、ミャンマーの人よね」
ゆみは、経理担当に答えた。
「ずいぶん高いけど、これはなんの車なの?」
「ミキサー車」
ゆみは、経理担当に答えた。

中古車輸出・第64話

「モーリシャスってきれいな島ね」
ゆみは、ネットでモーリシャスを確認して言った。
「世界のリゾートアイランドなのね、行ってみたいな。っていうか、マダガスカルも大きな島なのね、私ずっとマダガスカルってアフリカ大陸の中にある国なのかと思っていた」
ゆみが、パソコンで地図を確認しながら、常識はずれなことを呟いているのを聞いて、シャランは思わず自分のデスクで作業しながら吹き出してしまっていた。

中古車輸出・第63話

「次はモーリシャス、モーリシャスってなに?」
ゆみは、オファーメールの内容を確認して呟いた。
「アフリカの島よ。マダガスカルの向こうにある島」
「マダガスカルは知ってるわ。リングテールルマーのいる島よね」
リングテールルマーは、黒白の、シマシマの長い尻尾があるアライグマみたいな顔をしたシルバー色のお猿さんだ。
世界中の国の名前を、動物たちの故郷で覚えている動物好きのゆみだった。

中古車輸出・第62話

「なんか会社の自己紹介みたいのいらない気するな」
ゆみは、いつもオファーメールへの最初の返信では、私は横浜の貿易会社の何々で、こんな仕事をしていますみたいな自己紹介を付けていたが、特に自己紹介は必要ないように感じていた。
「ハーイ、誰々さん。アムユミー」
の後は、すぐにこんな車があるよって、海外バイヤーさんが希望している車を写真付きで案内してあげる方が反応が良いように思えた。

中古車輸出・第61話

「次は、アフリカの方ね」
ゆみは、まるで自分のメールボックスに入っている海外バイヤーたちが、歯医者の待合室で診察の順番待ちしているように、いや銀行で受付の順番待ちしているように見立てて、それぞれのメールを順番に開いては、その海外バイヤーのご用をお聞きしていた。
「マラウィの海外バイヤーさんなんだ。ランドクルーザーをご希望ですね」
アフリカは、動物たちがたくさん暮らすサファリなのか、ジープ特にランドクルーザーのオファーが多かった。

中古車輸出・第60話

ゆみは、オークション会場のサイトにログインすると、ミキサー車を検索してみる。けっこう色々なミキサー車が出品されている。ゆみは、個人的にタマゴの形をしたタンク部分にEGGと書かれているミキサー車が可愛くて好きだった。
「彼の予算にはまるミキサー車で何か良いものはあるかな」
ゆみは、オークション会場サイト上でいくつか良さそうなミキサー車をピックアップすると、それらの情報を写真と共に、ミャンマーの海外バイヤーへ返信してあげた。

中古車輸出・第59話

「シャラン、海外バイヤーからの私への返事が増えてるみたいなの」
「それは良かったね」
シャランは、ゆみに答えた。
シャランは、自分の海外バイヤーを相手にしていて、ゆみの海外バイヤーのことなど相手にしている暇も無さそうだった。ゆみは、自分の海外バイヤーへの返信に集中していた。
「そうなんだ、ミャンマーで工事現場で使うミキサー車がほしいのね」
ゆみは、海外バイヤーからのメールを確認していた。

中古車輸出・第58話

「はい、今日のところはここまでで良いかな」
シャランは、ゆみに言った。
「後は、書類の手続きが終わったり、車が港へ陸送終わったりする度に、その都度、一緒に業務を進めていきましょう。車の注文取ったら終わりじゃないからね、相手の海外バイヤーのところに、ちゃんと車を届けるまでが私たちの仕事よ」
シャランは、ゆみに説明した。
「はい!わかりました、シャラン先輩」
ゆみは、シャランに敬礼した。

中古車輸出・第57話

「今回は、私が行政書士に依頼するけど」
シャランは、ゆみに説明した。
「次からは、ゆみちゃんが自分で行政書士に電話して、輸出抹消お願いしますって依頼するのよ」
シャランは、ゆみに言った。
「お願いすれば、あとはぜんぶ行政書士が全ての手続きをやってくれるの?」
「うん、手続き終わったら、それを船の会社、今回はアマカップにも知らせてあげるの」
シャランは、自分の手を動かしながら、ゆみにも伝えた。

中古車輸出・第56話

「じゃ、私は自分の仕事に戻ってもいい?」
ゆみは、シャランに聞いた。
「だめよ、まだ、車を港に移動するように手続きできて、船のブッキング予約ができただけなんだから。これから輸出の手続きをしなくちゃ」
シャランは、ゆみに言った。
「行政書士さんに依頼して、ポルシェの車検証を輸出抹消手続きしなくちゃいけないの。これって、ゆみちゃん担当なんだから、ゆみちゃんの仕事なのよ」
シャランは、ゆみに命じた。

中古車輸出・第55話

「陸送終わりました。船のブッキングもしますか?」
シャランは、経理担当に確認した。
「お願い、行き先はドイツのブレマハーベン港だからアマカップに頼むように」
シャランは、アマカップジャパン、ヨーロッパ航路の自動車専用船に連絡を入れて、ポルシェをドイツまで輸送する船のブッキング予約をした。
「これでドイツまで運んでもらえるのね」
ゆみは何もせずに、シャランに船の手配全部をやってもらってしまった。

中古車輸出・第54話

「落札したら、すぐにオークション会場に落札金額を振り込まないと車を仕入れられなくなってしまうのよ。次からは落札したらすぐに教えてちょうだい」
経理担当は、ゆみに説明した。
「シャラン、静岡会場だから、ゆみちゃんと一緒に車の陸送手続きを手配しておいてちょうだい」
「陸送先は横浜港で良いですか」
シャランは、ゆみを自分の席に呼ぶと、ゆみが落札したポルシェをオークション会場から横浜港へ運ぶ陸送の手続きをした。
ゆみは、シャランが陸送してくれるのをただ眺めていた。

中古車輸出・第53話

ゆみは、一仕事を終えたような顔で、中古車オークション会場のアカウント情報が入っているパソコンから自分の席に戻って来た。
「落札できたの?」
戻ってくる途中、経理担当に聞かれて、ゆみはうんと頷いた。
「落札できたのだったら、ちゃんと落札したことを報告してくれないと」
経理担当は、ゆみの頭をポンと撫でながら言った。そのままファックス機を確認しに行って、オークション会場から届いていた落札通知を持って戻って来た。

中古車輸出・第52話

「このポルシェが落札できたら良いのにな」
ゆみは、最初に入札してみたポルシェの入札状況を確認しながら考えていた。このポルシェが、ドイツの海外バイヤーが1番気に入ってくれていた車だった。
「あー、入札されてしまった」
中古車オークション会場のサイトは、リアルタイムで入札状況を確認できる。ゆみの入札金額より多い入札があったので、ゆみも少しだけ自分の入札金額を上げてみた。
「これで落札できるかな」
ゆみは、状況を確認していた。

中古車輸出・第51話

「ドイツの海外バイヤーは、ゆみの仕事だろう」
社長は、ゆみに言った。
「ゆみが、ポルシェの仕入れからドイツまでの船積み、最後まで自分でやりなさい」
ゆみは、社長に命じられて、自分で中古車オークション会場のサイトにログインして、ポルシェを探すのだった。探したポルシェをドイツの海外バイヤーに確認してもらい、OKの出たポルシェに入札し、落札を試みる。
「このポルシェから入札してみるか」
ゆみは、まず1台目に入札してみた。

中古車輸出・第50話

「私も、また新しいバイヤーから注文取るのね」
ゆみは、部長とシャランに答えた。
「でも、その前にまずドイツのポルシェを仕入れて、輸出してちょうだい」
ゆみは、経理担当の社長の奥さんから指示された。
「ね、シャラン。ポルシェ仕入れるのお願い」
シャランは、ゆみに言われてオークション会場のサイトを覗きこむ。
「シャランは、ポルシェの仕入れはやらなくて良いぞ」
部長と社長が、シャランに命じた。

中古車輸出・第49話

「それじゃ、シャランは85万でいきなさい」
社長は、シャランに言った。全営業担当者の来月の目標金額が決まった。この目標金額を目指して、各自で来月からの仕事を頑張っていくことになる。
「私、オファーメルーの海外バイヤーがちゃんとしたバイヤーだってことがわかれば、もう中古車輸出はしなくても良いんだけど」
「そうだよね」
シャランは、ゆみに頷いた。
「いや、ちゃんとしたバイヤーかはまだわからないだろう」

中古車輸出・第48話

「次はシャラン」
社長がシャランのことを指した。
「そうね。今、スリランカの近くのモルジブ島のバイヤーを進めているんだけど、何人かのバイヤーとは、話が進み始めたので、それを達成しようかなと」
「わかった。それで来月の目標値は?」
「そうね、70万ぐらいで」
「お前、ゆみより車の輸出は先輩だろう。ゆみが80万なのに、ゆみより下なのか」
「うーん、90で。いや80万にしたい」

中古車輸出・第47話

「1台だけで55万」
「1台で55万っていうのはけっこう良かったな」
社長も褒めてくれた。
「今月からは、月の売上げを報告した後で、その総括と来月の目標を言うようにしよう」
社長は、皆に提案した。
「まず、今井から来月の目標は?」
ゆみが返事に困っていると、社長が目標を決めてくれた。
「今月55万だったから倍、流石に倍は難しいか、それじゃ80万にしよう」

中古車輸出・第46話

「え、何をどう報告したらいいの?」
ゆみは、報告する内容がよくわからずにいた。
「ポルシェだろう?ポルシェとドイツまでの船賃でいくらもらったんだ?」
「え、180万」
「うん。それで粗利はどのぐらいだ?」
「粗利?よくわからない」
ゆみが言うと、会社の経理担当が代わりに計算し報告してくれた。
「55万ですかね」

中古車輸出・第45話

「次、今井も報告あるだろう」
営業担当者全員の報告が終わった後で、社長がゆみに声をかけた。。
「私?」
「あるだろう?」
「ドイツの海外バイヤーさんのこと?1台しか売れてないよ」
社長が、ゆみに頷いた。
「その売上げと粗利を皆の前で報告しろよ」
社長が命じた。

中古車輸出・第44話

「さあ、売上げ報告会議を始めるぞ」
部長が、会社の皆に声をかけた。今日は月末、月の最後の日なので、毎月、各自の売上げを報告する報告会議がある日だった。
「よし、シャランから発表するか」
「今月は170万で、粗利が40万ぐらいでした」
部長に言われて、シャランがまず最初に、自分の今月の売上げ金額とおおよその粗利を報告した。シャランに続いて、営業担当者たちが順番に自分の売上げを報告していく。

中古車輸出・第43話

「もしかして、私が車の注文を取ってしまったの?」
「そうよ!ゆみちゃんの売上げよ」
シャランは少し興奮しながら、ゆみに言った。
「え、そうなの?どうしよう?どうしたら良いの?」
ゆみの方は、少し困惑していた。
「ゆみ!初注文じゃないか!」
それを聞いて、社長も興奮したような大きな声で、ゆみのことを褒めた。

中古車輸出・第42話

「ゆみちゃんじゃないの!」
シャランは、ゆみに大声で伝えた。
「え、私じゃないよ」
「ほら、プロフォーマインボイスの金額見てごらん」
シャランは、ゆみに見せた。
「これは、計算したら大体160万かなって計算してあげただけよ」
「だから今朝、会社の口座に160万が入金されたのよ!」
シャランに言われて、ゆみは啞然としていた。

中古車輸出・第41話

「どなたかしら?大きな金額の入金があったんだけど」
会社の経理から会社の口座に入金があったことを営業担当者たちに告げられた。
「そんな金額は覚えがない」
どの営業担当者たちも、金額に心当たりがなかった。
「ね、ゆみちゃんじゃないの?」
シャランが、ゆみに聞いた。
「知らない」
ゆみは、シャランに答えた。シャランは、ゆみがドイツの海外バイヤー宛に作ったプロフォーマインボイスを確認した。

中古車輸出・第40話

「なんか面倒くさいな」
ゆみは、プロフォーマインボイスに車の金額とドイツまでの船賃、輸送料を記載してから、送金先である会社の銀行口座をスイフトコード付きで記載した。
「もう少し簡単に作成できたら良いのにな」
ゆみは、この時のプロフォーマインボイスが、クラウド上で金額とかを記載するだけで作成できたら便利なのにと思っていたので、CheapVehicleLandでは、クラウド上で作成できるプロフォーマインボイスを開発、導入したのでした。

中古車輸出・第39話

「見積書?」
シャランは、スリランカ人なので時々わからない日本語もあった。何か物を買う時に、いくらかわからないから営業の人に金額を教えてと聞くと、作ってもらえる書類とゆみが説明した。
「うーん、見積書で良いのかな?」
「正確には、プロフォーマインボイスと見積書は違うものだけど、まあ、そんなようなものだ」
シャランが返事に困っていると、奥の席から部長が教えてくれた。
ゆみは、シャランからプロフォーマインボイスのテンプレートファイルをもらって、ドイツの海外バイヤー用のものを作成した。

中古車輸出・第38話

「シャラン、プロフォーマインボイスってなに?」
ゆみは、シャランに質問した。ドイツの海外バイヤーが車を教えてくれてありがとう、良い車が日本市場にもあるので発注したいから、プロフォーマインボイスを送ってくれと返事して来たのだった。
「正式なインボイスの前に送る予備のインボイスのことよ」
「予備のインボイス?」
「それの価格とかを確認して注文しようか決めるの」
「見積書みたいなものね」
「見積書?」
今度は、シャランがゆみに質問した。

中古車輸出・第37話

「ゆみ、お返事ありがとう」
ゆみは、ドイツの海外バイヤーさんからのメール内容を確認した。80年代ぐらいの古いベンツやポルシェの車がほしいのだけど、そちらの市場にあるだろうか。もしあるのならば、まずはポルシェで取引を始めたいという内容だった。
ゆみは、早速中古車オークション会場のサイトにログインすると、ポルシェの車を検索してみた。それなりに、けっこう日本の市場にもポルシェの車ってたくさんあるじゃないの。見つけた車を何台かドイツの海外バイヤーさん宛にメールで教えてあげた。

中古車輸出・第36話

「ドイツからポルシェ欲しいって日本に言わないよ」
シャランは、ゆみに言った。
「そうなのかな?」
でも、いつもお返事はアフリカとかの人ばかりだったから、ゆみとしては、なんかヨーロッパの人と話してみたくなった。そして、ドイツの海外バイヤーさんにお返事を書いてみたのだった。
「ゆみ、お返事ありがとう」
次の日、ドイツの海外バイヤーさんからゆみ宛にお返事が返ってきていた。

中古車輸出・第35話

そして、社長の予想通り、ゆみの初注文が取れる日は近かった。
「え、ポルシェが欲しいってヨーロッパの海外バイヤーさん」
ゆみは、その日のオファーメールの内容を確認していて思った。いつも、オファーメールはアフリカや中東アジア、カリブ諸島など南米から来るものが多かった。
「ドイツ、ヨーロッパから来るオファーメールなんて初めて見た」
「そんなの無視しておきなよ」
シャランは、ゆみにアドバイスした。
「どうして?」
「だってポルシェってドイツ製の車だよ」

中古車輸出・第34話

「でも、換金できるかもしれないし手続きしてみるか」
社長は、ゆみに聞いた。
「え、やっぱ辞めておく」
「換金できるかの手続きぐらいしてみても良いぞ」
社長に言ってもらえたが、ゆみは断った。
「頑張ってもっとちゃんとした海外バイヤーから注文もらう」
「そうか、それならばそうしてみなさい」
社長は、ゆみに言った。
「今井なら、後もう少しできっと車の注文取れるさ」

中古車輸出・第33話

「詐欺だとは思うけどな」
社長は、ゆみに言った。
「この書き留めも?」
「ああ、偽物の書き留めだろう、恐らく換金もできない」
そうなのね、ゆみは手紙を自分のデスクのゴミ箱に捨てた。
「万が一、換金できるかもしれないから換金手続きしてみるか」
「換金できたらトラック200台仕入れて輸出するの?」
「うまく200台仕入れられたとしても、犯罪に使われる車に貢献することになるかもしれない」
社長は、ゆみに警告した。

中古車輸出・第32話

今井ゆみは、社長から会社に届いた手紙を手渡された。
「え、何これ」
ゆみは、社長から手渡された手紙の封筒を開けると、中身を確認した。丁寧なメールをありがとうと書かれていて、日野レンジャーのトラックを200台順番に送ってほしいと記載されており、手紙と一緒に途轍もない金額が記載された書き留めが同封されていた。
「確かに、私がイランからのオファーメールに返信したけど、全く何も返事をもらえなかったから駄目だったんだなと思って忘れていたんだけど」

中古車輸出・第31話

「なかなか車の注文取れないな」
月末の売上げ報告会議の時、今井ゆみは社長に言われてしまった。このままでは、本当にうちの会社のサイトから来るオファーメールはいたずらやスパムメールばかりってことになってしまうなと冗談交じりに社長はゆみに言った。
「来月こそ絶対1台は車の注文取ります!」
「よし、頑張れ」
ゆみは、悔しくて思わず報告会議で社長に宣言してしまっていた。

中古車輸出・第30話

今井ゆみは、イランの海外バイヤーにはけっこう丁寧に自己紹介も入れて返信してあげていたつもりだったのだが、なぜか何も返事をもらえなかった。
「トラックの大量注文だものね」
さすがに大型注文だったし、中古車輸出業の素人営業担当じゃ相手にもされなかったか。その後も毎日のように、営業担当者たちに振り分けるだけでなく、自分でも届いたオファーメール宛に返信し続けて、お返事が返ってくると、その海外バイヤーにはさらに返信を書いて、メールのやり取りを続けてはいたのだが、いずれも車の受注までには届かなかった。

中古車輸出・第29話

今井ゆみは、中古車オークション会場にログインすると今度は「日野レンジャー」で検索してみる。中古車オークション会場の使い方にもだいぶ慣れてきていた。日野レンジャーの落札相場も確認し、古いものから新しいものまで豊富に揃っていることも確認できた。
「うん、いいトラックいっぱいある」
今井ゆみは、イランの海外バイヤーにそのことを伝えてあげた。2015年ぐらいのものからいくらでも揃っているから送ってあげられるよ。

中古車輸出・第28話

アフリカの海外バイヤーで、ハイルーフのハイエースコミューターがほしいと望んでくるバイヤーは、大概そのバスを使ってタクシー、乗り合いバスを始めたいという人が多いようだ。
今井ゆみは、タンザニアの海外バイヤーとはそんな会話を長々といろいろお喋りを続けて、けっこう感触は良い感じだったのだが、車の受注に至るまでにはいかずメールは途切れてしまった。
「残り1件はイランの人か」
今井ゆみは、イランから届いたオファーメールの内容を確認した。建設会社と取引している人なのだろうjか、日野自動車の日野レンジャーというトラックを現場で大量に必要としているという依頼だった。

中古車輸出・第27話

ハイエースには何種類か種類があって、普通に後部座席があるもの、後部が全て荷物入れになっているもの、車椅子などが乗れるようになっているもの、座席数が18人分あるバスタイプのものがある。
特にアフリカでは、この18人分の座席があるハイエースコミューターというものが人気がある。よく田舎で見かける路線バスより車体の小さいコミュニティーバスのことだ。特に天井が高く盛り上がっているハイルーフというタイプのものが好まれる。海外バイヤーからハイエースと言われたら、ハイルーフのハイエースコミューターで探すと話が早い。

中古車輸出・第26話

「このハイエースは18人乗れるのか」
今井ゆみが返答すると、タンザニアの海外バイヤーからさらに質問がきた。確かに後部は広い荷物入れになっているけど18人も乗れるのかな、乗れても椅子がないから乗るの大変じゃないかな。
「シャラン、ここに18人も乗れる?」
今井ゆみは、シャランに自分が海外バイヤーに送った写真を見せながら聞いた。そんなところに人が乗れるわけないじゃないの、18人乗れるハイエースはハイエースコミューターっていうハイエースよ。

中古車輸出・第25話

「タンザニアさんは車の注文ちょうだいね」
今井ゆみは、前にパキスタンからのオファーメールの時に、シャランに聞いた返信の書き方を思い出しながら、自分のこと、会社の自己紹介から順番に返信文を書いていた。
「今度の車はハイエースか」
今井ゆみは、また中古車オークション会場のサイトにログインすると、ハイエースの落札相場を確認した。ハイエースってすごく高い車からけっこう安い車までいろいろあるのね。前回は、パキスタンの人に安く安く言われて、お返事ももらえなくなってしまったし、高くない方のハイエースで話を進めた方がいいわよね。

中古車輸出・第24話

今井ゆみに返事をくれた残りの2人、1人はタンザニアの海外バイヤーだった。タンザニアは、アフリカ大陸の右下辺りにある国だ。アフリカの国は、日本から世界へ輸出されている中古車の国の中で最もポピュラーな国の一つだった。
「この国ならば、楽勝で受注できるわよね」
タンザニアやケニアなどアフリカの国々は、月末にいつも開催されている売上げ報告会議でも、シャランを始め、どの営業担当者も必ずといって良いぐらい輸出先として報告されている国だった。この国ならば、さすがにウェブデザイナーの仕事しかしていない今井ゆみでも車1台ぐらいの注文ならば取れるだろう。

中古車輸出・第23話

「少し高くないか」
今井ゆみが見積もった金額をパキスタンの海外バイヤーに提出すると、パキスタンの海外バイヤーからは返答がきた。そうね、それじゃと今井ゆみは7500円だけ提示した金額より引いて再提出してあげた。うちの会社だっていろいろ経費も掛かっているのだし、これ以上はさすがに無理よと一言つけ加えて返答すると、その先は何も返答が無くなってしまった。
社長は、今井ゆみの方針に納得してくれた。

中古車輸出・第22話

「利益ってどのぐらいなの」
今井ゆみは、シャランたち営業担当者に聞いてみた。利益の出し方は担当者それぞれで全然違っていて、2万か3万ぐらいで安く見積もって数を売って利益を得ていこうというタイプ、営業経費などを考慮して5万ぐらい、10万ぐらいと強気で見積もるタイプとそれぞれ別れていた。
「でも経費とかも掛かるし、8万ぐらいは足しておこうかな」
今井ゆみは、営業担当者皆の意見を参考に考えていた。最初から安く見積もらなくても、商談の中でもう少し安くしてあげないとだめそうな方には多少低く見積もり直してあげるようにしよう。

中古車輸出・第21話

「そうね、80万ぐらいかな」
今井ゆみは、向かいの席のシャランにも聞こえるぐらいの大きさの声で一人言を呟いてみた。
「それに手数料とかもちゃんと足さないとだめよ」
シャランがゆみに言った。中古車オークション会場で落札すると会場の手数料、1・5万ぐらいに輸出手続き料2万ぐらい、会場から近くの港までの陸送料2万ぐらいが掛かる。それに後は自分たちの会社の利益も足さなければいけない。
「5・5と利益を足せばいいかな」

中古車輸出・第20話

「さて、なんてお返事しようかな」
今井ゆみは、受け取ったメールの内容を確認しながら考えていた。
いくらぐらいかと聞いてきているのだから、ノアの値段を教えてあげないといけないわね。今井ゆみは、パソコンで中古車オークション会場のページを開くと、会社のアカウントでログインした。
「トヨタのノア」
中古車オークション会場の検索フォームにトヨタノアと入力して検索する。本日出品されているたくさんのトヨタノアの車が表示された。年式や走行距離などによっても変わってくるが、だいたいの落札時の相場価格なんかも確認できる。

中古車輸出・第19話

「あら、お返事が来てる」
今井ゆみは、今朝新しく届いたばかりのオファーメールをプリントアウトして営業担当者みんなに配り終えると、自分のメールアドレスの内容を確認した。
「トヨタのノアが欲しいと言っていたパキスタンの人ね」
昨日、今井ゆみが書いたお返事の内容に対して、さらに今井ゆみ宛に追加のお返事をくれた海外バイヤーはぜんぶで3人だった。その1人がパキスタンの人で、黒色もしくは白色、シルバー色のノアが欲しい、いくらで出してもらえるのかを聞いてきていた。

中古車輸出・第18話

「ああ、なんか肩が凝った」
今井ゆみは、横浜の会社から東京の自宅へ帰るために、自分の車を運転しながら呟いた。
結局部長に言われて、いろいろと自分で試行錯誤しながらも、それぞれの海外バイヤー宛にそれぞれ文面の内容を変えながら何通も何通も返信することになってしまったのだった。
「私は、オファーメールの海外バイヤーがちゃんとした海外バイヤーかどうかを確認できれば良いだけで、別にずっと車の営業なんかするつもりないんだけどな」
あれからずっと部長が付きっきりだったのだ。

中古車輸出・第17話

「シャランと同じ内容にしたからといって、今井も同じように車の注文が取れるわけじゃないからな」
部長は、今井ゆみに言った。
シャランと一緒の内容でメールしたとしても、今井ゆみが同じように車の注文を取れるわけではない。シャランの文面は、あくまでシャランが車の注文を取れる文面であって、今井ゆみは今井ゆみが車の注文を取れる文面を自分で見つけない限り、いつまでも海外バイヤーから車の注文なんて取れないぞ。
「今井が車の注文を取れる文面は、自分で何度も何度も返信していく中で見つけないとな」

中古車輸出・第16話

「その内容じゃ、ほぼシャランのメールじゃないか」
今井ゆみの席の背後に来て覗き込んでいた部長が、今井ゆみに言った。今の内容ではシャランのメールの内容に、名前だけYumiと書き換えただけだから、文章なんて文法が下手でもどうでも良いからもっと今井らしさを全面に出して、ただし車のプロ意識は持って返事を書きなさい。
「はーい」
メールの内容なんてシャランと同じでも良いと思っていた今井ゆみだったが、結局ぜんぶメールの内容を自分なりの文章で書き直して、返信することになってしまった。

中古車輸出・第15話

「今井、素人っぽい返事の書き方はだめだぞ!」
シャランと今井ゆみの会話を聞いていた部長も、今井ゆみに注意した。
今井がウェブデザイナーだとか、車のことはよくわかっていないなんていうのは向こうには関係ないんだからな。向こうの海外バイヤーはプロの車屋から安心して車を購入したいのだから、今井が素人だと思われたら不安になるだろう。ある程度、知ったかぶりみたいになっても良いから私は車のプロだという自負を持って海外バイヤーには返事を書くようにしなさい!
「はい、わかりました」
今井ゆみは、一番奥の席の部長に返事をしていた。

中古車輸出・第14話

シャランは、3年前ぐらいに、スリランカから日本へ出稼ぎに来ている女性で、去年から今井ゆみと同じ横浜の貿易会社で働き始めていた。今井ゆみより少しだけお姉さんだったが、ほとんど同い年で、女性同士と言うことで仲良くお喋りするようになっていた。
「ゆみちゃん、その書き方は良くないよ」
シャランは、今井ゆみの書いている返事の文章を確認し、私は車のことはよくわからないって書いちゃうと車の素人に見られちゃうから、そこはあくまで車のプロって自信を持って書くようにしなさいとアドバイスした。