中古車輸出・第56話

「じゃ、私は自分の仕事に戻ってもいい?」
ゆみは、シャランに聞いた。
「だめよ、まだ、車を港に移動するように手続きできて、船のブッキング予約ができただけなんだから。これから輸出の手続きをしなくちゃ」
シャランは、ゆみに言った。
「行政書士さんに依頼して、ポルシェの車検証を輸出抹消手続きしなくちゃいけないの。これって、ゆみちゃん担当なんだから、ゆみちゃんの仕事なのよ」
シャランは、ゆみに命じた。

中古車輸出・第55話

「陸送終わりました。船のブッキングもしますか?」
シャランは、経理担当に確認した。
「お願い、行き先はドイツのブレマハーベン港だからアマカップに頼むように」
シャランは、アマカップジャパン、ヨーロッパ航路の自動車専用船に連絡を入れて、ポルシェをドイツまで輸送する船のブッキング予約をした。
「これでドイツまで運んでもらえるのね」
ゆみは何もせずに、シャランに船の手配全部をやってもらってしまった。

中古車輸出・第54話

「落札したら、すぐにオークション会場に落札金額を振り込まないと車を仕入れられなくなってしまうのよ。次からは落札したらすぐに教えてちょうだい」
経理担当は、ゆみに説明した。
「シャラン、静岡会場だから、ゆみちゃんと一緒に車の陸送手続きを手配しておいてちょうだい」
「陸送先は横浜港で良いですか」
シャランは、ゆみを自分の席に呼ぶと、ゆみが落札したポルシェをオークション会場から横浜港へ運ぶ陸送の手続きをした。
ゆみは、シャランが陸送してくれるのをただ眺めていた。

中古車輸出・第53話

ゆみは、一仕事を終えたような顔で、中古車オークション会場のアカウント情報が入っているパソコンから自分の席に戻って来た。
「落札できたの?」
戻ってくる途中、経理担当に聞かれて、ゆみはうんと頷いた。
「落札できたのだったら、ちゃんと落札したことを報告してくれないと」
経理担当は、ゆみの頭をポンと撫でながら言った。そのままファックス機を確認しに行って、オークション会場から届いていた落札通知を持って戻って来た。

中古車輸出・第52話

「このポルシェが落札できたら良いのにな」
ゆみは、最初に入札してみたポルシェの入札状況を確認しながら考えていた。このポルシェが、ドイツの海外バイヤーが1番気に入ってくれていた車だった。
「あー、入札されてしまった」
中古車オークション会場のサイトは、リアルタイムで入札状況を確認できる。ゆみの入札金額より多い入札があったので、ゆみも少しだけ自分の入札金額を上げてみた。
「これで落札できるかな」
ゆみは、状況を確認していた。

中古車輸出・第51話

「ドイツの海外バイヤーは、ゆみの仕事だろう」
社長は、ゆみに言った。
「ゆみが、ポルシェの仕入れからドイツまでの船積み、最後まで自分でやりなさい」
ゆみは、社長に命じられて、自分で中古車オークション会場のサイトにログインして、ポルシェを探すのだった。探したポルシェをドイツの海外バイヤーに確認してもらい、OKの出たポルシェに入札し、落札を試みる。
「このポルシェから入札してみるか」
ゆみは、まず1台目に入札してみた。

中古車輸出・第50話

「私も、また新しいバイヤーから注文取るのね」
ゆみは、部長とシャランに答えた。
「でも、その前にまずドイツのポルシェを仕入れて、輸出してちょうだい」
ゆみは、経理担当の社長の奥さんから指示された。
「ね、シャラン。ポルシェ仕入れるのお願い」
シャランは、ゆみに言われてオークション会場のサイトを覗きこむ。
「シャランは、ポルシェの仕入れはやらなくて良いぞ」
部長と社長が、シャランに命じた。

中古車輸出・第49話

「それじゃ、シャランは85万でいきなさい」
社長は、シャランに言った。全営業担当者の来月の目標金額が決まった。この目標金額を目指して、各自で来月からの仕事を頑張っていくことになる。
「私、オファーメルーの海外バイヤーがちゃんとしたバイヤーだってことがわかれば、もう中古車輸出はしなくても良いんだけど」
「そうだよね」
シャランは、ゆみに頷いた。
「いや、ちゃんとしたバイヤーかはまだわからないだろう」

中古車輸出・第48話

「次はシャラン」
社長がシャランのことを指した。
「そうね。今、スリランカの近くのモルジブ島のバイヤーを進めているんだけど、何人かのバイヤーとは、話が進み始めたので、それを達成しようかなと」
「わかった。それで来月の目標値は?」
「そうね、70万ぐらいで」
「お前、ゆみより車の輸出は先輩だろう。ゆみが80万なのに、ゆみより下なのか」
「うーん、90で。いや80万にしたい」

中古車輸出・第47話

「1台だけで55万」
「1台で55万っていうのはけっこう良かったな」
社長も褒めてくれた。
「今月からは、月の売上げを報告した後で、その総括と来月の目標を言うようにしよう」
社長は、皆に提案した。
「まず、今井から来月の目標は?」
ゆみが返事に困っていると、社長が目標を決めてくれた。
「今月55万だったから倍、流石に倍は難しいか、それじゃ80万にしよう」

中古車輸出・第46話

「え、何をどう報告したらいいの?」
ゆみは、報告する内容がよくわからずにいた。
「ポルシェだろう?ポルシェとドイツまでの船賃でいくらもらったんだ?」
「え、180万」
「うん。それで粗利はどのぐらいだ?」
「粗利?よくわからない」
ゆみが言うと、会社の経理担当が代わりに計算し報告してくれた。
「55万ですかね」

中古車輸出・第45話

「次、今井も報告あるだろう」
営業担当者全員の報告が終わった後で、社長がゆみに声をかけた。。
「私?」
「あるだろう?」
「ドイツの海外バイヤーさんのこと?1台しか売れてないよ」
社長が、ゆみに頷いた。
「その売上げと粗利を皆の前で報告しろよ」
社長が命じた。

中古車輸出・第44話

「さあ、売上げ報告会議を始めるぞ」
部長が、会社の皆に声をかけた。今日は月末、月の最後の日なので、毎月、各自の売上げを報告する報告会議がある日だった。
「よし、シャランから発表するか」
「今月は170万で、粗利が40万ぐらいでした」
部長に言われて、シャランがまず最初に、自分の今月の売上げ金額とおおよその粗利を報告した。シャランに続いて、営業担当者たちが順番に自分の売上げを報告していく。

ヨット教室物語・第18話

佐藤麻美子のフォローもあり、今井隆の起業した会社は毎年、順調に売上げを伸ばしていき、今では従業員を5、60人ぐらい抱えるまでの中規模の会社にまで成長していた。
「温かい」
佐藤麻美子は、ヨットのキャビンでお湯を沸かして、コーヒーを飲んでいた。
「本当、温かいな。外が寒すぎるよな」
「そうでしょう!」
佐藤麻美子は、今井隆に同調した。
今井隆は、念願のマイボートでお茶をすすっていた。

ヨット教室物語・第17話

「もお!隆、本当に不器用よね」
佐藤麻美子は、書類作りに苦労している今井隆をみて言った。
今井隆は、いろいろ面白いアイデアは出すアイデアマンではあったが、役所に提出する際の会社の書面作りとかは不器用そのもので、大の苦手だった。そんな隆がパソコンで何度も書類を作り直している姿を見ていられなくなった佐藤麻美子も、就職した会社を退職して、隆の起業したIT会社に経理担当として転職したのだった。
「麻美子、本当に助かるよ」

ヨット教室物語・第16話

「隆の会社の起業は手伝ってあげたけど、その後は自分でやってね」
佐藤麻美子は、今井隆に伝えた。
佐藤麻美子自身は、特に自分が就職したその会社を辞める気は全くなく、最初の会社の起ち上げ時だけ今井隆の会社を手伝ってあげたつもりでいた。起業した後の会社経営については、
「隆1人で頑張ってね」
と、今井隆にも伝えていた。
「なんだよ、役所に提出する書面作りって難しいな」

ヨット教室物語・第15話

人気サイトのおかげで、今井隆は、せっかく就職できたその会社を辞めて、自分のIT会社を起ちあげた。
プログラミングなんて全くわからず、サイトの作り方も何もわからなかった今井隆だったが、会社の起業の仕方も何もわからなかった。
佐藤麻美子の父親は、東京の中目黒で輸入雑貨の会社を起業した自営業者で、アメリカのサンフランシスコに支店まで作り、単身赴任でアメリカへ移住していた。
その父親の姿を幼い頃からみてきた佐藤麻美子は、今井隆がIT会社を起ちあげる際、会社の起業を色々手伝ってあげた。

ヨット教室物語・第14話

佐藤麻美子の所属は総務部で、営業部に配属となった隆とは別の部署になった。
「インターネット上に、こんなサイトがあったら便利だろうな」
今井隆は、その会社で働いているときに思いついたサイトを具現化してみた。サイトなんて一度も作ったことがない、プログラミングのやり方なんて全くわからなかったが、わからないことはGoogleで検索しながら見よう見まねで作り上げた。出来上がったサイトは、ほかの人たちにも使っていて便利と思ってもらえる人気サイトになってしまったのだった。

ヨット教室物語・第13話

今井隆は、佐藤麻美子に薦められたその会社を受けてみた。すると、その会社に受かって、内定をもらうことができた。
「麻美子も、この会社に就職するんだろう」
「え、そうね・・」
佐藤麻美子は、実はその会社には行くつもりはなくて、別の内定をもらった会社へ行くつもりでいたのだが、今井隆にそう聞かれて、思わず頷いてしまい、結局その会社へ隆と一緒に入社することになってしまった。

ヨット教室物語・第12話

今井隆は、大学の就職活動中のとき、なかなか内定を取れず、就職先が見つからないでいた。
もうほとんどの同級生たちは、会社から内定の通知をもらっていた時期だった。もちろん、佐藤麻美子も、就職試験を受けた会社から既にいくつか内定をもらっていた。
そんな中の1社に、まだ新卒の求人を募集している会社があった。
「ね、この会社を受けてみたら」
佐藤麻美子は、今井隆にその会社を薦めてみた。

ヨット教室物語・第11話

佐藤麻美子は、特にヨットに興味があるわけではなかった。
大学時代からの同級生であった今井隆に、自分のヨットがやっと横浜のマリーナに輸入されてきたから一緒に見に行こうと誘われてついてきたのだった。
「このヨットの中で暮らせるんじゃないの」
「うん、暮らそうと思えば暮らせるよ、世界中どこでも行けるし」
今井隆は、佐藤麻美子に答えた。

中古車輸出・第43話

「もしかして、私が車の注文を取ってしまったの?」
「そうよ!ゆみちゃんの売上げよ」
シャランは少し興奮しながら、ゆみに言った。
「え、そうなの?どうしよう?どうしたら良いの?」
ゆみの方は、少し困惑していた。
「ゆみ!初注文じゃないか!」
それを聞いて、社長も興奮したような大きな声で、ゆみのことを褒めた。

中古車輸出・第42話

「ゆみちゃんじゃないの!」
シャランは、ゆみに大声で伝えた。
「え、私じゃないよ」
「ほら、プロフォーマインボイスの金額見てごらん」
シャランは、ゆみに見せた。
「これは、計算したら大体160万かなって計算してあげただけよ」
「だから今朝、会社の口座に160万が入金されたのよ!」
シャランに言われて、ゆみは啞然としていた。

中古車輸出・第41話

「どなたかしら?大きな金額の入金があったんだけど」
会社の経理から会社の口座に入金があったことを営業担当者たちに告げられた。
「そんな金額は覚えがない」
どの営業担当者たちも、金額に心当たりがなかった。
「ね、ゆみちゃんじゃないの?」
シャランが、ゆみに聞いた。
「知らない」
ゆみは、シャランに答えた。シャランは、ゆみがドイツの海外バイヤー宛に作ったプロフォーマインボイスを確認した。

ヨット教室物語・第10話

「私は、今日はたまたま隆のヨットがどんなヨットかなと思って、見に来ただけのことで、普段は別にヨットなんて乗りに来ないけど」
佐藤麻美子は、今井隆にそう返事した。
そう答えていた佐藤麻美子だったが、まさか、これから先ずっと毎週末のように、今井隆の趣味のヨットに付き合わされることになろうとは思ってもいなかった。

ヨット教室物語・第9話

普段から全くおしゃれなどしていない無頓着な今井隆が、これを機会に、鏡台でメイクとかして、少しは、おしゃれに目覚めてくれるのかなと佐藤麻美子は思っていた。
「え、俺は別におしゃれなんかしないけど、麻美子はメイクできる鏡台とか必要だろう?」
今井隆は、佐藤麻美子に聞いた。

ヨット教室物語・第8話

「トイレは、後ろ側のこっちにも付いているんだよ」
今井隆は、船の後ろの方の部屋に入って、そっちの部屋にあるトイレも佐藤麻美子に見せた。
「鏡台まで付いているじゃないの」
佐藤麻美子は、後部キャビンに入ると、ベッドの横に付いている鏡台に気づいた。
「隆が、メイクとかおしゃれするの?」
佐藤麻美子は、今井隆に聞いた。

ヨット教室物語・第7話

「ほら、ギャレーっていうんだけど、台所もちゃんと付いているから、麻美子が得意の料理を何でもここで作ることができるよ」
「私、別に料理は得意じゃないけど」
今井隆は、パイロットハウスの一段下に下がったところにある台所を佐藤麻美子に見せていた。
「こっちにはトイレも付いているから、海でトイレへ行きたくなっても大丈夫」
今井隆は、船の前方に付いているトイレルームを佐藤麻美子に見せた。

ヨット教室物語・第6話

ナウティキャット33には、デッキ中央部にパイロットハウスと呼ばれる四方を窓で囲まれている部屋があって、船内に操船用のステアリングがついていて、中でも操船できるようになっていた。
その四方についている窓の両サイドの一部が扉になっていて、その扉をガラガラと開くと、船内に入室できるように構成されていた。その船内へ入ってみると、

ヨット教室物語・第5話

今井隆は、ヨットのデッキ上、中央付近に付いているパイロットハウスの両サイドにある扉を開くと、そこから船内に入った。一方、今井隆の新しいヨットの周りに保管されているヨットのほとんどは、デッキ上の床に扉をスライドさせて開く入り口が付いていて、そこから船内に入れるようになっていた。
今井隆のヨットは、フィンランド製のナウティキャット造船所で建造されたヨットで、艇種を「ナウティキャット33」という33フィートのヨットモデルだった。

中古車輸出・第40話

「なんか面倒くさいな」
ゆみは、プロフォーマインボイスに車の金額とドイツまでの船賃、輸送料を記載してから、送金先である会社の銀行口座をスイフトコード付きで記載した。
「もう少し簡単に作成できたら良いのにな」
ゆみは、この時のプロフォーマインボイスが、クラウド上で金額とかを記載するだけで作成できたら便利なのにと思っていたので、CheapVehicleLandでは、クラウド上で作成できるプロフォーマインボイスを開発、導入したのでした。

中古車輸出・第39話

「見積書?」
シャランは、スリランカ人なので時々わからない日本語もあった。何か物を買う時に、いくらかわからないから営業の人に金額を教えてと聞くと、作ってもらえる書類とゆみが説明した。
「うーん、見積書で良いのかな?」
「正確には、プロフォーマインボイスと見積書は違うものだけど、まあ、そんなようなものだ」
シャランが返事に困っていると、奥の席から部長が教えてくれた。
ゆみは、シャランからプロフォーマインボイスのテンプレートファイルをもらって、ドイツの海外バイヤー用のものを作成した。

中古車輸出・第38話

「シャラン、プロフォーマインボイスってなに?」
ゆみは、シャランに質問した。ドイツの海外バイヤーが車を教えてくれてありがとう、良い車が日本市場にもあるので発注したいから、プロフォーマインボイスを送ってくれと返事して来たのだった。
「正式なインボイスの前に送る予備のインボイスのことよ」
「予備のインボイス?」
「それの価格とかを確認して注文しようか決めるの」
「見積書みたいなものね」
「見積書?」
今度は、シャランがゆみに質問した。

中古車輸出・第37話

「ゆみ、お返事ありがとう」
ゆみは、ドイツの海外バイヤーさんからのメール内容を確認した。80年代ぐらいの古いベンツやポルシェの車がほしいのだけど、そちらの市場にあるだろうか。もしあるのならば、まずはポルシェで取引を始めたいという内容だった。
ゆみは、早速中古車オークション会場のサイトにログインすると、ポルシェの車を検索してみた。それなりに、けっこう日本の市場にもポルシェの車ってたくさんあるじゃないの。見つけた車を何台かドイツの海外バイヤーさん宛にメールで教えてあげた。

中古車輸出・第36話

「ドイツからポルシェ欲しいって日本に言わないよ」
シャランは、ゆみに言った。
「そうなのかな?」
でも、いつもお返事はアフリカとかの人ばかりだったから、ゆみとしては、なんかヨーロッパの人と話してみたくなった。そして、ドイツの海外バイヤーさんにお返事を書いてみたのだった。
「ゆみ、お返事ありがとう」
次の日、ドイツの海外バイヤーさんからゆみ宛にお返事が返ってきていた。

中古車輸出・第35話

そして、社長の予想通り、ゆみの初注文が取れる日は近かった。
「え、ポルシェが欲しいってヨーロッパの海外バイヤーさん」
ゆみは、その日のオファーメールの内容を確認していて思った。いつも、オファーメールはアフリカや中東アジア、カリブ諸島など南米から来るものが多かった。
「ドイツ、ヨーロッパから来るオファーメールなんて初めて見た」
「そんなの無視しておきなよ」
シャランは、ゆみにアドバイスした。
「どうして?」
「だってポルシェってドイツ製の車だよ」

中古車輸出・第34話

「でも、換金できるかもしれないし手続きしてみるか」
社長は、ゆみに聞いた。
「え、やっぱ辞めておく」
「換金できるかの手続きぐらいしてみても良いぞ」
社長に言ってもらえたが、ゆみは断った。
「頑張ってもっとちゃんとした海外バイヤーから注文もらう」
「そうか、それならばそうしてみなさい」
社長は、ゆみに言った。
「今井なら、後もう少しできっと車の注文取れるさ」

ヨット教室物語・第4話

佐藤麻美子は、今井隆が立てかけた脚立を普通に登ると、デッキに付いているライフラインを飛び越えて今井隆のヨットの上に上がった。
「普通に上がれるじゃん」
「上がれるわよ。スカートなんて、小さい時以外、私一度もはいたことないし」
「そういえばそうだよな。麻美子は色気ないものな、俺も麻美子がスカートはいてるの見たことないわ」
「早く中に入ろう」
佐藤麻美子は、寒さで今井隆の言葉など聞いていなかった。

ヨット教室物語・第3話

「中に入ってみるか?」
「ええ、寒いから中に入ろう」
佐藤麻美子は、今井隆の言葉に嬉しそうに頷いていた。
佐藤麻美子は、今井隆の言う中とは、マリーナの建物の中のことだと思っていた。が、今井隆は、自分のフィンランドで出来上がったばかりのヨットの船体に、脚立を立てかけると脚立を登り始めた。
「麻美子、上に上がれる?スカートだし上に上がれないか」
「大丈夫よ。スカートなんてはいてないから」
ロングコートの下の足を開いてパンツを見せた。

中古車輸出・第33話

「詐欺だとは思うけどな」
社長は、ゆみに言った。
「この書き留めも?」
「ああ、偽物の書き留めだろう、恐らく換金もできない」
そうなのね、ゆみは手紙を自分のデスクのゴミ箱に捨てた。
「万が一、換金できるかもしれないから換金手続きしてみるか」
「換金できたらトラック200台仕入れて輸出するの?」
「うまく200台仕入れられたとしても、犯罪に使われる車に貢献することになるかもしれない」
社長は、ゆみに警告した。

中古車輸出・第32話

今井ゆみは、社長から会社に届いた手紙を手渡された。
「え、何これ」
ゆみは、社長から手渡された手紙の封筒を開けると、中身を確認した。丁寧なメールをありがとうと書かれていて、日野レンジャーのトラックを200台順番に送ってほしいと記載されており、手紙と一緒に途轍もない金額が記載された書き留めが同封されていた。
「確かに、私がイランからのオファーメールに返信したけど、全く何も返事をもらえなかったから駄目だったんだなと思って忘れていたんだけど」

中古車輸出・第31話

「なかなか車の注文取れないな」
月末の売上げ報告会議の時、今井ゆみは社長に言われてしまった。このままでは、本当にうちの会社のサイトから来るオファーメールはいたずらやスパムメールばかりってことになってしまうなと冗談交じりに社長はゆみに言った。
「来月こそ絶対1台は車の注文取ります!」
「よし、頑張れ」
ゆみは、悔しくて思わず報告会議で社長に宣言してしまっていた。

中古車輸出・第30話

今井ゆみは、イランの海外バイヤーにはけっこう丁寧に自己紹介も入れて返信してあげていたつもりだったのだが、なぜか何も返事をもらえなかった。
「トラックの大量注文だものね」
さすがに大型注文だったし、中古車輸出業の素人営業担当じゃ相手にもされなかったか。その後も毎日のように、営業担当者たちに振り分けるだけでなく、自分でも届いたオファーメール宛に返信し続けて、お返事が返ってくると、その海外バイヤーにはさらに返信を書いて、メールのやり取りを続けてはいたのだが、いずれも車の受注までには届かなかった。

中古車輸出・第29話

今井ゆみは、中古車オークション会場にログインすると今度は「日野レンジャー」で検索してみる。中古車オークション会場の使い方にもだいぶ慣れてきていた。日野レンジャーの落札相場も確認し、古いものから新しいものまで豊富に揃っていることも確認できた。
「うん、いいトラックいっぱいある」
今井ゆみは、イランの海外バイヤーにそのことを伝えてあげた。2015年ぐらいのものからいくらでも揃っているから送ってあげられるよ。

中古車輸出・第28話

アフリカの海外バイヤーで、ハイルーフのハイエースコミューターがほしいと望んでくるバイヤーは、大概そのバスを使ってタクシー、乗り合いバスを始めたいという人が多いようだ。
今井ゆみは、タンザニアの海外バイヤーとはそんな会話を長々といろいろお喋りを続けて、けっこう感触は良い感じだったのだが、車の受注に至るまでにはいかずメールは途切れてしまった。
「残り1件はイランの人か」
今井ゆみは、イランから届いたオファーメールの内容を確認した。建設会社と取引している人なのだろうjか、日野自動車の日野レンジャーというトラックを現場で大量に必要としているという依頼だった。

中古車輸出・第27話

ハイエースには何種類か種類があって、普通に後部座席があるもの、後部が全て荷物入れになっているもの、車椅子などが乗れるようになっているもの、座席数が18人分あるバスタイプのものがある。
特にアフリカでは、この18人分の座席があるハイエースコミューターというものが人気がある。よく田舎で見かける路線バスより車体の小さいコミュニティーバスのことだ。特に天井が高く盛り上がっているハイルーフというタイプのものが好まれる。海外バイヤーからハイエースと言われたら、ハイルーフのハイエースコミューターで探すと話が早い。

中古車輸出・第26話

「このハイエースは18人乗れるのか」
今井ゆみが返答すると、タンザニアの海外バイヤーからさらに質問がきた。確かに後部は広い荷物入れになっているけど18人も乗れるのかな、乗れても椅子がないから乗るの大変じゃないかな。
「シャラン、ここに18人も乗れる?」
今井ゆみは、シャランに自分が海外バイヤーに送った写真を見せながら聞いた。そんなところに人が乗れるわけないじゃないの、18人乗れるハイエースはハイエースコミューターっていうハイエースよ。

第10話・快適なコクピット

キャビンの中に入っていた荷物を整理して、クッションを整えてみると、クッションの数がソファの数に対してなんだか多い。それぞれのソファに当てはめていってみると、ビニール製のクッションで防水加工のクッションっぽい。キャビンから出して、コクピットのベンチにも当てはめて並べていってみると、ソファの数とクッションの数がぴったり当てはまりました。
コクピットには、大きなビミニトップの屋根がついているし、コクピットのベンチに全てのクッションを並べてみると、チークデッキを付けようと考えていたけど、そんなのいらないぐらいにめちゃ快適なコクピットに変身しました。

第9話・ベッドメイキング

さっそく来る前に立ち寄ってきたニトリで購入したベッドパッドとベッドシーツを、プリンセスベッドのマットレスに取り付けます。毛布はまだ暑くていらないけど、タオルケットぐらいは1枚一緒に買ってこようかどうしようか迷ったけど、サイズが合わないかもしれないし、前のヨットで使っていたピンクのマイメロ毛布もあるし、今回は小さな枕1つだけ一緒に購入してきました。
小さなヨットのキャビンに、大きなプリンセスベッドが1つデンと鎮座してしまっているので、キャビンの中はもうそれだけでほとんどいっぱいです。

第8話・プリンセスベッド

今夜は初めてのマリーナステイ、新しいヨットでのお泊まりです。
ヨットは小さいんだけど、大きなヨットにも負けないぐらい大きなプリンセスベッドがキャビン入って正面に鎮座しています。
大きなヨットでは、よく見かけるプリンセスベッドだけど、こんな小さなヨットのキャビンに付いているのはとても珍しいです。
このプリンセスベッドこそ、このヨットのゆみのお気に入りの一つでした。

第7話・深浦ボートパーク

プリンセストレーディングで自動車の輸出をしているゆみは、追浜工場も潰れなくて済むかもなんて考えながら、深浦ボートパークの港内に入港しました。
前のヨットはロングキールで後進がうまく進まないヨットで、処女航海のときもバースに入港するのとても苦労しました。その記憶が残っていて、うまく入港できるかなと不安だったのですが、さんざん前のヨットで出入港の練習をしていたおかげか、ヨットも小さいし、すんなりと入ってしまいました。
バースがでかくて、このヨットにはぶかぶか、もやいロープの長さを調整して、なんとか収まりましたが、それでもぶかぶかです。

第6話・処女航海の終盤

「はいはい、すぐに移動しますよ」
再び、エンジンをカメさんモードからウサギさんモードに変えて、一直線で深浦ボートパークを目指します。入港してきた自動車専用船は、ヨーロッパとかオセアニアによく輸出している濃紺の船体のNYKでした。船体の中身は、まだ空っぽのようで海面から大きく浮き上がっています。
「これから、ここで積んで輸出するのね」
追浜工場は潰れちゃうかもしれないから、いっぱい自動車を積んで出航したら、行った先の外国でいっぱい車が売れるといいなと考えながら操船していました。

第5話・自動車専用船

「ここまで来たら、もう安心」
1回エンジンの速度をカメさんモードに変更すると、船尾に付いていたビミニトップのカバーを外して、縛ってあったロープを解いて広げます。
ヨットのコクピットに日陰ができてめちゃ快適です。
もっと早くに、出航する前に広げておけばよかった。横浜ベイサイドマリーナからここまで来るまでの間で、私の肌もうすっかりまっ黒くろすけじゃん。ビミニトップでできた日陰で寛いでいると、追浜工場に入港してくる大きな自動車専用船の姿。
「ブオオオオオー!」

第4話・日産追浜工場

「このエンジン、このヨットには少し大きすぎるんじゃないかな」
船の後ろを振り向くと、そう思えてしまうぐらいに速いスピードで引き波がたっています。住友重工のクレーンの前に停まっていた大型タンカーの真横をすり抜けると、もう深浦ボートパークは目の前です。もうじき無くなってしまうかもしれない日産の追浜工場や小泉孝太郎がパパと住んでいた大きなゴミのお屋敷も見えてきます。猿島へ向かう観光船が横須賀の観光案内をしながら走っています。

第3話・横須賀の住友クレーン

「レバーを回して、スピードを上げましょう」
そう教わって、仕方なくカメさんモードからウサギさんモードにレバーを変えます。おっかなびっくりのウサギさんモードで横浜ベイサイドマリーナの港内を出港します。
あんなにおっかなびっくりだったウサギさんモードも、八景島のタワーの先に見えている住友重工の造船所クレーンが近寄ってくると、あともう少しあともう少し、あのクレーンを越えれば目的地の深浦ボートパークに到着できると、ガンガンとエンジンを飛ばします。

第2話・小さいエンジン大きいエンジン

エンジンは使い終わったら、ガソリンタンク上部のキャップを必ず閉めて保管してくださいと教えてもらいました。そうしないと、キャップから雨水とかが入ってしまって、ガソリンに混じってしまい、エンジンが掛からなくなってしまうそうです。
お姉ちゃんのヨットとかに付いている船内機のエンジンに比べると、小さなエンジンのくせに音がうるさいです。音がうるさくて恐いので、エンジンレバーに付いているカメさんモードで走ります。

中古車輸出・第25話

「タンザニアさんは車の注文ちょうだいね」
今井ゆみは、前にパキスタンからのオファーメールの時に、シャランに聞いた返信の書き方を思い出しながら、自分のこと、会社の自己紹介から順番に返信文を書いていた。
「今度の車はハイエースか」
今井ゆみは、また中古車オークション会場のサイトにログインすると、ハイエースの落札相場を確認した。ハイエースってすごく高い車からけっこう安い車までいろいろあるのね。前回は、パキスタンの人に安く安く言われて、お返事ももらえなくなってしまったし、高くない方のハイエースで話を進めた方がいいわよね。

中古車輸出・第24話

今井ゆみに返事をくれた残りの2人、1人はタンザニアの海外バイヤーだった。タンザニアは、アフリカ大陸の右下辺りにある国だ。アフリカの国は、日本から世界へ輸出されている中古車の国の中で最もポピュラーな国の一つだった。
「この国ならば、楽勝で受注できるわよね」
タンザニアやケニアなどアフリカの国々は、月末にいつも開催されている売上げ報告会議でも、シャランを始め、どの営業担当者も必ずといって良いぐらい輸出先として報告されている国だった。この国ならば、さすがにウェブデザイナーの仕事しかしていない今井ゆみでも車1台ぐらいの注文ならば取れるだろう。

中古車輸出・第23話

「少し高くないか」
今井ゆみが見積もった金額をパキスタンの海外バイヤーに提出すると、パキスタンの海外バイヤーからは返答がきた。そうね、それじゃと今井ゆみは7500円だけ提示した金額より引いて再提出してあげた。うちの会社だっていろいろ経費も掛かっているのだし、これ以上はさすがに無理よと一言つけ加えて返答すると、その先は何も返答が無くなってしまった。
社長は、今井ゆみの方針に納得してくれた。

中古車輸出・第22話

「利益ってどのぐらいなの」
今井ゆみは、シャランたち営業担当者に聞いてみた。利益の出し方は担当者それぞれで全然違っていて、2万か3万ぐらいで安く見積もって数を売って利益を得ていこうというタイプ、営業経費などを考慮して5万ぐらい、10万ぐらいと強気で見積もるタイプとそれぞれ別れていた。
「でも経費とかも掛かるし、8万ぐらいは足しておこうかな」
今井ゆみは、営業担当者皆の意見を参考に考えていた。最初から安く見積もらなくても、商談の中でもう少し安くしてあげないとだめそうな方には多少低く見積もり直してあげるようにしよう。